マイクロソフトはVoIP市場を支配するのか?

文:Deb Shinder
翻訳校正:吉井美有
2007/01/30 08:00

 Microsoftが市場に参入すると、他の企業は心配しはじめる--そしてそれには十分な理由がある。過去を振り返ってみても、Microsoftがいったんあるテクノロジに狙いを定めると、たとえ既存企業が揺るぎない地位を築いていてもその市場を支配するようになる場合が多いのである。

 一時は市場でトップの座にあったのにMicrosoft製品にその座を追われた例として、ワープロソフトでは「Microsoft Word」に取って代わられた「WordPerfect」、ウェブブラウザでは「Internet Explorer」に取って代わられた「Netscape」、サーバソフトウェアでは「Windows Server」に取って代わられた「NetWare」を挙げることができる。そして最近、ウイルス対策ソフトウェアやマルウェア対策ソフトウェアのベンダーは、Microsoftが消費者向けウイルス対策ソリューション「Windows Live OneCare」や、スパイウェア対策ソフトウェア「Windows Defender」、さらにはSybari Antigenの買収成果である企業向け製品として「Forefront」の開発に取り組む様子を、不安を抱きながら見守っている。

 そしてMicrosoftがNortelとの提携を発表し、今年に入って両社のテクノロジを統合した製品ロードマップを発表したときも、VoIPベンダーは、緊張しながら様子を見守るしかなかった(両社が発表した製品ロードマップについてはこちら を参照されたい)。Microsoftはこの提携に先立ち、CiscoやAlcatel、Avaya、Mitelなどの複数のVoIP企業と提携関係を結んでいる。こういった提携は、VoIP企業のIP PBX機器と、Microsoftの「Live Communications Server(LCS)」や「Office Communicator」ソフトウェアをうまく連携させることを目的としたものである。

 LCSとCommunicatorはエンタープライズレベルのサーバアプリケーションであるが、Microsoftは2005年8月に、PC用VoIPアプリケーションの開発企業Teleoを買収している。この買収に注目すれば、VoIPに対するMicrosoftの長期的な計画についてあれこれ思いを巡らす出発点になるかもしれない。また、ソフトフォンの提供社として人気の高いSkypeだけではなく、VonageやLingo、Packet8、SunRocketといった消費者向けVoIPベンダーが、Microsoftによって市場から追い出されるのではないかと心配する必要があるかどうかもいろいろと考えたくなるかもしれない。

エンタープライズ市場

 ここではMicrosoftが既に投入している企業向けのVoIP製品を紹介しよう。音声は、同社のユニファイドコミュニケーションに対する今後の取り組みにおいて重要な要素のようである。「Office Communications Server 2007(OCS)」と呼ばれる次世代の「Live Communications Server」は、中央サーバとして機能し、VoIPを利用した音声会議やビデオ会議、SIPベースのインスタントメッセージング、アプリケーション共有、電話を掛けて電子メールを読み上げさせることなどを可能にする音声と電子メールの統合などを実現する。

 OCSを利用すれば、Office Communicatorクライアントが電話を掛けたり受けたりできるようになる。また、WordやExcelといったMicrosoft Officeプログラムとの統合が図られている。また、Office Communicator 2007クライアントはOCSサーバを通じて既存のIP PBXに接続することもできる。さらに、「Exchange 2007」とともに利用すれば、ボイスメール(通常のPBXからのものと、IP PBXからのものの双方)をOutlookの受信トレイで参照できる。Office CommunicatorとOffice Communications Serverの詳細については、Microsoftのウェブサイトを参照されたい。

Messenger対Skype

 Microsoftは「MSN Messenger IM」のバージョン7.0において、VoIPテクノロジを取り入れた。これは現在「Windows Live Messenger(WLM)」と呼ばれるものであり、このIMプログラムを利用すれば、PC間で音声通話を行うだけではなく、固定電話や携帯電話に電話を掛けることもできる。なお、「Windows Live Call」はLive MessengerのVoIP機能のことである。

 Messengerは、VonageといったVoIPプロバイダーよりも、Skypeを始めとするPtoP接続されたコンピュータで稼働するプログラムと真っ向から競合する。WLMではSkypeと同様、電話としての音声通話だけではなく、テキストメッセージングやビデオ通話も行えるようになっている。さらに、他のコンピュータには無料で電話を掛けることができるものの、固定電話や携帯電話に電話を掛ける場合には有料となるという点もSkypeと同じである。なお、WLM 8.1は現在、ベータテスト版が利用可能となっている。

 Verizonは、固定電話や携帯電話にWLMを介してVoIP電話を掛けるサービスを分単位の課金モデルで提供している。Microsoftはまた、WLMを利用する電話機の製造でUniden AmericaやPhilipsといった企業と提携している。同社はこれにより、USBや無線を利用するSkype電話機が既に市場で提供しているのと同様の「電話のような」ユーザーエクスペリエンスをもたらそうとしている。

 こういった電話機は、Windowsのプラグアンドプレイ機能を利用するようになっており、何のインストールも必要としない。このような電話機としてPhilipsの製品がある。この電話機は100ドル前後で販売されており、Messengerのコンタクトリストをダウンロードする機能のほかに、スピーカー通話機能やカラー液晶画面を備えている。

Microsoftの今後のVoIP戦略

 Steve Ballmer氏は2006年11月に東京で行ったスピーチにおいて、オペレーティングシステムからデスクトップアプリケーションにいたるまで、同社の全製品にVoIPテクノロジを2007年から組み込むという計画を発表した。

 完全に統合されたVoIPによって、まったく新しい可能性がひらかれることになる。将来的には、「クリックして通話する」ウェブサイトが当たり前になるかもしれない。また、モバイル機器向けのVoIPソフトウェアの開発が進めば、携帯電話とハンドヘルドコンピュータとの境界線は今よりもさらに曖昧になるかもしれない。Xboxのチャット機能では既に、ゲームプレイヤー同士がLive Communicatorのヘッドセットを用いて会話を行えるようになっている。

 大半の人が従来の電話回線網を利用しなくなり、音声コミュニケーションの大部分がインターネットを介して行われるという未来像を想像することは難しくはない。このような状況が現実になった時には、Microsoftが市場の大きな一角を占めていることだろう。

 しかし、もしもオペレーティングシステムやオフィス用生産性向上アプリケーションにVoIPテクノロジが組み込まれるようになったら、他のVoIPサービスは廃れてしまうことになるのだろうか?おそらくそうはならないだろう。VonageやLingoといった消費者レベルの代替サービス事業者は、サービスの構成をPCに依存していない。そしてPCに依存していないというその点こそが、多くの消費者が望むことであり、それには複数の理由が存在しているのだ。理由としては例えば、PCは頻繁にクラッシュする、あるいはPCを利用していない時にはその電源をオフにしておきたいといったことがある。

 では、Skypeといった他のPCベースのサービスはどうだろうか。VoIPを組み込んだMicrosoft製品によって駆逐されてしまうのだろうか?これも、おそらくそうはならないだろう。WindowsにおいてIMソフトウェアが無償で提供されたあとも、その他のインスタントメッセージングサービスは市場シェアを落としたとはいえ、駆逐されることはなかった。他のベンダーがMicrosoft製品にはない機能を提供したり、より高いパフォーマンスやより安定した動作を実現したりすることができている限り、あるいは一部のユーザーにとっては「ABM:Anybody But Microsoft(Microsoft以外であれば何でも)」という魅力があるだけでも、VoIP市場においてMicrosoftの競合が存在し続けることだろう。


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ウインドウズ・ビスタの発売開始で盛り上がっているマイクロソフトだが、ひっそりとVoIP戦略に関する記事が出ていたので、ぼやきと少しコメント。

1999年だっただろうか、2000年だっただろうか、ADSLが立ち上がり始め、友人とMSNメッセンジャーをインストールしてビデオと音声通信が電話網を介さず、しかもタダでかけ放題。

これには驚いたし、ついにNTTの時代も終わると思った。NTTの友人もマイクロソフトを恐れ、全てはIP化し電話網はタダになると豪語したシスコのジョン・チェンバースを毛嫌いした。


あれから8-9年。


フュージョンによる長距離網オフロードが開始されて6-7年、050のIP電話が始まって4-5年が経った。

未だに自分以外で050だよっていってくる人はいない。自分の実家だけは050に強制的に加入させたが。。。


そしてNTT電話網をオフロードして中継部分をIP化する平成電電のチョッカ、KDDIのメタルプラス、ソフトバンクのおとくラインが始まって2-3年。


そしてSkypeが日本に来て1-2年。


エンタープライズでもIP-PBX、IPセントレックスといい始めて5-6年が経った。最近はシスコやノーテル、アバイア、NEC、沖等々、あちこちでユニファイドメッセージングと言い続けている。

でも、大企業以外VoIPを導入しているという話はまだ少ない。




MSN、Skypeが技術的にも、経済的にも優れているのは十分分かっている。


ブロードバンドのインフラも整い、品質制御も技術も確立されてきた。



それでも一般のアナログ電話が主流だ。



コンシューマーは電話をIP化する理由が分からない。NTT電話番号で十分なのだ。安くならない限り。。。


MSNメッセンジャー?相手はMACの場合は電話すんのか?Skypeとはタダでつながんのか?


なんて半分ぼやき状態。。。



マイクロソフトはネットワークに絡んだサービス・ソフトに基本的に弱い。MSNははっきり言って失敗だし、IPTVもアルカテルと組んだり、訴訟問題に発展したり、うまく言っていない。携帯に絡むことも特にしていない。
ワードやエクセルの場合は相手が中小企業だったり、OSとのバンドルで独占状態だから勝つには勝ったが。。。VoIPの場合はどうなんだろう、あまり彼らの技術力で支配は出来るとは思えない。



まぁ、マイクロソフトよ、がんばってくれ!幸運を祈る! eBay/Skypeもね。。。