地理院地図を引用

 今回のテーマは三之公川の明神谷の西方にある谷の名前である。私は未訪であるが、この谷には最初に鉱泉が出ている滝、上流には大きい滝が2本あるとのことだ。

 問題はこの谷の名前が「ノエ谷」、「ソエノ谷」と文献によって異なることである。まずは手元にある資料がどうなっているかを以下に示す。

(1)台高山脈の谷(上)1976/01・・・流域図:「ソエ谷」、本文:「ソエノ谷」

(2)日本滝名鑑4000 2005/08・・・「ノエ谷」

(3)秘瀑 2011/08・・・「ソエノ谷」

(4)日本登山体系10 2016/01・・・「ソエ谷」 

(5)山と高原地図 1981(仲西)・・・「ソエ谷」

    山と高原地図 1997,2011,2018,2023(吉岡)・・・「ノエ谷」

 これらから、谷名は「ソエ谷」「ソエノ谷」「ノエ谷」の三つ存在することになる。注目するのは、誰にでも容易に入手できるメジャーな山と高原地図に変化が生じた点だ。仲西氏の山と高原地図を見ると、ソエ谷のソの点が等高線とかぶり、ぱっと見るとノエ谷に見えてしまう。これは地図の改訂時に、DTP担当者が転記ミスしたのではないかと推察する。奥香肌峡にはノエ股谷もあり、名前の響きに違和感はない。

ソエ谷とソエノ谷は不動滝と不動の滝の関係と同じで、言いやすさから後者に変化したのだろう。なお、ノエ谷という名が誤りであったとしても、四半世紀もこの名が地図に書かれ、多くの方に認識されているなら、21世紀の名として今後も使われてもよいと思う。