「確率思考の戦略論:USJでも実証された数学マーケティングの力」by 森岡毅 | 「得手に帆を上げて」 

「確率思考の戦略論:USJでも実証された数学マーケティングの力」by 森岡毅

USJのマーケティング担当役員である森岡毅氏の著作。
実はこの方はP&Gでサマーインターンをした時にちょっとお世話になった。

僕はHerbal Essenceというブランドでインターンしたんだけど、森岡さんはブランドマネージャーの上のヘアケア担当アソシエイト・ディレクターというポジションにいた。

 

ブランドマネージャーの上司の人だったので、直接の接触はそれほどある訳ではなかったが、それでも何回か話をさせて頂いた。実は森岡さんは当時から最年少のディレクターに昇進して、社内ではシャイニング・スターと呼ばれていた。そんな彼がUSJで大活躍していることを知った時、驚くと同時に何故か納得した。そのくらい、当時からそしてごく僅かの接触からでも印象を与える人だった。

 

さて、そんな森岡さんの著作の主題はタイトルからもわかる通り、「ビジネス戦略の成否は「確率」で決まっている。そしてその確率はある程度までは操作することができる」だ。マーケティングはどれだけ成功確率を高められるかを模索する化学であり、科学である以上「再現性」が求められる。そしてこの科学的な根拠に数字や数式から導かれる示唆を使っていく、というのが本書の一貫したメッセージだ。


彼の理論では売上を伸ばすためには、「1)自社ブランドへのプレファレンスを高める、2)認知を高める、3)配荷を高める、の3つしかない(no.537)」。プレファレンスを上げることで成長させる前者を「ブランドの質的な成長」と呼び、認知や配荷を上げることで成長させる後者を「ブランドの量的な成長」と呼ぶ(no.557)。このうち、プレファレンスは主に「ブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定される(No.545)」と唱えている。


そして本書はこれらの要素をどうやって高めていくか、及び高めていく際にいかに定量化な証拠に基づいて確立を上げるかという事に関する実務的なノウハウを取り扱っている。
例えば売上を規定する7つの基本的要素がある。

①認知率

②配荷率

③過去購入率

④エボークト・セットに入る率

⑤1年間に購入する率

⑥年間購入回数

⑦平均購入金額

これらを組み合わせて年間売上の予測を立てるのだが、これらの式は逆算に使う事が多いとの事。例えば必要な「年間売上」や「年間購入者の割合」などの目的となる必要数値を入れてみて、それらを実現するために必要な認知率や配荷率を、どの程度目指さなくてはならないのか逆算するわけだ(no.1149)。

 

本書が扱うのは実務担当者が使う知識がメインなので、かなり細かいが、読みやすく工夫されているし、また色々なシチュエーション・用途に使えそうな内容だと思う。例えば著者のバックグラウンドはB2Cの日用品だったが、本書の考え方はある程度テクノロジーのマーケティングにも通用する考え方だと思う。

僕はテクノロジー業界にいるが、そこではどうしてもエンジニアの意向(技術的な思考)が強くなる。勿論それは重要だと思うのだが、日用品マーケティングのような畑違いのエッセンスをうまく活用することで、普段意識していなかった考え方(例えば配荷率や認知率)などが吸収できるので非常に勉強になる本だった。