「マネー・ボール」by マイケル・ルイス | 「得手に帆を上げて」 

「マネー・ボール」by マイケル・ルイス

ブラッド・ピットが主演している映画「マネー・ボール」の原書を読んだ。
現在のメジャーリーグはヤンキースを筆頭に金持ちチームが大金をはたいてスター選手を
買い漁る、そしてそういうチームは優勝する、というトレンドが顕著だが、この本の主人公が
GMを務めるオークランド・アスレチィックスは真逆のチーム。つまりほとんどお金を使わない。

ちなみにアスレチックスが属するアメリカンリーグ西地区の順位表は次の通り:

         勝  負 総年俸
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 アスレチックス 103 59 $41,942,665
 エンゼルス    99 63 $62,757,041
 マリナーズ    93 69 $86,084,710
 レンジャーズ   72 90 $106,915,180
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つまりつぎ込んだお金と勝ち星が反比例している。
この圧倒的なコストパフォーマンスの原因を突き詰めていくとアスレチックスの旧来と
全く異なる選手の評価法と野球理論に辿りつく。
例えば、こんな具合だ:

★足の速さ、守備のうまさ、身体能力の高さは特に過大評価されがちだ。しかし野球選手として
 大事な要素の中には非常に注目すべきものとそうでないものがある。
★ストライクゾーンをコントロールできる能力こそが実は将来成功する可能性と最も繋がりが
 深い。一番分かり易い指標が四球数なのだ。
★アウト数を増やす可能性がある攻撃はどれも賢明ではない。逆にその可能性が低い攻撃ほど
 良い。
★打率よりも長打率よりも、出塁率を重視する。
★打点などの「偶然性」に左右される指標を軽視しする。

こうしたデータは他の球団スカウト達はあまり重視しない。だからこそ、アスレチックスは
そうした埋もれた人材を安く集めることが出来、結果としてチームの勝ち星が増えていく。
つまり昔堅気の「スカウトの眼」に頼るのではなく、データ重視のチーム運営をしている。
ここら辺が非常にテンポよく描かれており、普段見慣れている「ベースボール」という
スポーツが全く違ったスポーツに見えてくること請け合いだ。

マネーボールで描かれていることはビジネスにも示唆があると思う。
スカウト業界についてこんな下りがある:

① 野球経験があるスカウトは必要以上に自己経験と照らし合わせて考えようとする。
  自分の経験こそが典型的な体験だと思いがちだが実際にはそうでもない。
② スカウトは選手の最近の成績ばかりを重視する傾向がある。最後にやったことが
  次にやることだとは限らない。
③ 目で見た内容、見たと信じ込んでいる内容には実は偏見が含まれている。眼だけに
  頼っていると錯覚に陥りやすい。

つまり「通説を疑え」という事だと思う。実際に本書でも「誰かが錯覚に惑わされている時、
現実を見据えられる別の人間にとっては金儲けのチャンスだ。野球の試合には、目に見えない
要素がたくさんある」と言っている。

僕にとって、この本が興味深かったのは、「あまり注目されていなかった領域
(錯覚されていた領域)を統計的に解明する」というプロセスで、これはビジネスにおいても
重要な示唆があると思う。特に人間が介在する領域はこの「錯覚」が起こりやすいので、
ビジネスチャンスがありそうかも、と思わず夜の読書中にニヤニヤしてしまった。


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