オバマが米国大統領に | 「得手に帆を上げて」 

オバマが米国大統領に

60%超という歴史的な投票率を記録した今回の大統領選挙の末、

アメリカ国民はオバマを大統領に選出しました。

永らく人種差別に苦しんできたアメリカが建国以来初の黒人大統領を

自らの意思で選出したこと、素直に祝福したいと思います。


でも前途は多難です。先ずは経済政策。直近の不況を打破しなければ、

国民の熱狂はすぐに去ってしまいます。アメリカ人てのは熱しやすく、

冷め易いので。舵取り役の財務長官の人選が鍵となると思います。


オバマが選ばれた理由の1つは共和党政権下の『市場の失敗』に対する

国民の『NO』なので、オバマは民主党伝統の『大きな政府』政策を

取りやすいと思います。確かにオバマの前にはブッシュ政権の負の遺産が

山積みですが、ここまでブッシュ大統領の支持が低いと、ドラスティックな

政策転換も国民の支持を得やすく、オバマにとっては『難しくはあるが、

Yes We Can!』な状況だと思います。


経済政策がメディア上ではクローズアップされていますが、

僕は本当のオバマの試練というか、歴史が彼に与えた役割というのは、

むしろ外交だと思ってます。


先ず、今回のアメリカ発の世界不況、そしてそれに伴うアメリカの威信の低下です。

ドルの信認が大きく揺らぎ、基軸通貨の座が危うくなってます。

一部メディアではアングロ・サクソン・モデルの終焉とまで言ってます。

もしアメリカの超大国の地位から滑り落ちた場合、すなわちヘゲモニーが

存在しなくなった時、世界が不安定になり紛争が起こり易くなる事は、

歴史が証明しています(ここら辺は正にキッシンジャーが『外交』で述べている事です)。


オバマは先ず経済のみならず、外交面においてもブッシュ時代に傷ついた

アメリカの超大国としての威信を取り戻さなければいけません。

仮に超大国から滑り落ちてしまったとしても、台頭してくる勢力(恐らくロシア、中国あたり)と

うまく『力の均衡』を取らなければいけません。

この事こそ、オバマが偉大な大統領に成り得るかどうかの、試金石だと思ってます。

不況からの脱出は別に偉大な大統領でなくても出来ます。

でも、世界平和に貢献する施策を取る事は、偉大な大統領でなければ出来ません。


翻って、外交面でロシア、中国が台頭勢力になるとして、最も緊密な協力体制を

取る必要がある勢力はEUでしょう。僕はここにオバマの一番の不安要素があると

思ってます。ありていに言うと、彼の人種的、文明的なバックグラウンドが

あまりに非西欧的であり、それが故に西欧諸国の指導層と『文明の衝突』を

起こす可能性を持っている、ということです。


かのサミュエル・ハンチントンは著書『文明の衝突』の中で、世界の紛争は今後、

異なる文明間で起こるだろうと予見してます。その中で、

アメリカは建国のバックグラウンド、つまり西欧文明の回帰を強く呼びかけています。


アメリカは確かに西欧の伝統を強く持つ国です。ただ昨今の移民人口の

拡大により、この西欧的文明の特色が薄まっているのも事実です。

特にオバマは父親がケニア人、自身もハワイという特殊な環境で育ち、

所謂西欧的文明をバックグラウンドが歴代の大統領よりも薄いと思います。

勿論、外交が1人の人間に左右される事はありませんが、指導者同士の親密さの重要性は

レーガンとサッチャーを見るまでもなく、事実だと思います。


オバマは最も重要な外交問題、特に世界がアメリカの威信を懐疑的に

見ている現在の状況下で、この西欧指導者達との『文明の衝突』を回避し、

世界の平和に貢献できるのか?オバマ自身のみの問題ではなく、

西欧諸国の指導層の人間的キャパも影響してくる問題なので非常に

難しい問題だと思います。


現在は単なる不況のみならず、国際関係において超大国の威信がかつて無いほどに

揺らいでいるという点で、本当に歴史的な変換点にあると思います。

歴史的な局面で、アメリカ国民は正しい判断をしたのでしょうか?

4年後に分かる答えだと思いますが、僕は『正しい判断をした』と思いたいです。