てのひらに落花とまらぬ月夜かな  渡辺水巴

 

 

 落花とか残花といったとき、俳句では桜のことで、春の季語になっています。

 他方、月夜は本来秋の季語です。月は一年中存在しているのですが、その美しさは秋にきわまるので、単に月と言ったときは秋の季語です。しかし、掲出句では主たる季語は落花であり、月夜は季語として扱っていないのです。しいて言えば、春月夜の春を省略しているということです。