いとけなく植田となりてなびきをり   橋本多佳子

 

 

 いとけなし・・・稚し・・幼けなし・・幼い・あどけない・こどもっぽい。(大辞林)

 整然と列をなし、水田に影を映している植田。そよ風になびいているさまが何とも言えません。

 俳句は17音しかない世界で一番短い詩ですので、省略できるものは省略するのです。その結果、何が省略されているかは、読者の解釈にゆだねることになるのです。掲出句の「なびきをり」は、植田にさざ波を立てるそよ吹く風が省略されています。