わが行けばうしろ閉ぢゆく薄原    正木ゆう子

 

 

 薄(芒)・・・尾花とも。薄は茅葺の屋根の材料になりますし、お月見では欠かせないもので、秋の野を代表する草の一つです。

 薄が風になびいている様など、深まりゆく秋の寂しさを全身で体現しているので、詩歌ではよく詠まれています。薄すなわち秋と言ってもよいくらいなのかも知れません。

 正木さんの句の「うしろ閉ぢゆく」に惹かれました。ローカル線が薄原の中を行けば、「うしろ閉ぢゆく」の景が見えますが、作者が行くことで「うしろ閉ぢゆく」と詠むことで、心象的な感じが強まりまりました。