空と海線引きなくて夕霞    フーザンボー

 

 

 霞・・・ここでは気象用語ということではなく、詩歌でいう霞(春の季語)です。春の遠景や事物がぼんやりとする情景です。

 なお、夜は同じ現象でも霞とは言わず、「朧」(おぼろ)といいます。

 万葉集の「ひさかたの天の香具山この夕べ霞たなびく春立つらしも」に、既に「霞たなびく」とありますから、古い言葉ですね。

 拙句ですが、これでも苦労しているのです。中七を「分け目のなくて」、「境のなくて」などとした後、「線引きなくて」としてみました。

 次の芭蕉の句の「春なれや」は、「ああ、いよいよ春だなあ」ということです。

 

 

        春なれや名もなき山の薄霞    芭蕉