かそけくもまなこ差し向く紙雛   フーザンボー


 

 三月三日は、女児の息災を祈って行われる桃の節句ですね。

 雛祭といえば内裏雛を飾ることが中心ですが、内裏雛や段飾りが定着したのは江戸時代ごろからで、それまでは穢れを祓うために雛が作られていたようです。

 人形(ひとがた)の紙の雛を、穢れを祓うために川に流していたようです。

 

 写真の折り紙の雛は、句友の女性からいただいたものです。句会の前に作ってきたとのこと、器用なものです。折り紙ですので、横5センチ、高さ3センチほどと小さなものです。

 目が描かれていないのですが、毎日眺めているうちに視線を感じるようになりました。目がなくとも、眼のあるような紙雛です。

 一句できてしまいました。

 

          目のなくて眼のあるやうな紙雛   フーザンボー

 

 掲出句の「かそけし」(幽けし)は、音、色、光などがかすかなさまのことです。「差し向く」は「差し向ける」(その方へ向ける)です。


 

         折りあげて一つは淋し紙雛   三橋鷹女