泣くことも下手なり亀は鳴けるなり

 

 亀鳴くは、春の季語です。実際のところ亀は鳴きません。裏返って足をばたばたさせても、鳴きません。想像上の季語です。

 辛いとき、かなしいとき、或いはうれしいとき、人は泣きますが、私はたぶん上手に泣けません。泣くことだけでなく、笑うことも、下手だと思います。泣くことに上手下手はないと思いますし、泣けばよいのに、我慢してしまったこともありました。泣きたいときは泣きなさい。亀でさえ鳴くことができるというのに、という句意です。