西和賀日記444回「見出し9文字のワケ」 | 西和賀日記 山・雪・味・人 楽しき農山村 

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奥羽山脈「真昼山地」に魅せられて65歳で岩手県和賀郡西和賀町に移住したおじさんの暮らしぶり

当ブログの見出しがいつも9文字になっていること、お気づきでしょうか。

僕はモノや姿勢にこだわりというものがほとんどないのですけど、”なくて七癖”のひとつが9文字見出しです。

どんな話も9文字で表すのです。

これは、新聞社時代に身にしみついた本能のようなものです。

新聞記事には必ず見出しがつきます。

主見出しは8文字か9文字が基本なんです。

 

 

🐾 何ぶつぶつ言ってるのかにゃ。

 「こらっ!カラ坊、どけっ!」

 

 

きょう付の読売新聞を例にすると…

「内閣支持急落24%」

「ガザ北部攻撃再強化」

「天然ガス戦火で急騰」

新聞見出しは8文字か9文字が今も主流です。

 

 

昔の新聞は鉛活字を組んでつくっていました。

僕は若いころ関東の地方紙で紙面編成を担当していました。

デスクから回ってくる記事を読んで見出しをつけ、扱い(大小)を判断し、紙面に割り付ける仕事です。

鉛活字は組める本数が決まっていて、2段の主見出しは3倍活字で8本、3段は4倍活字で8~9本、4段は6倍活字で8~9本といった具合です

その大きさが一番見やすいのです。

だから、倍数尺を手にした編成記者(当時は整理記者と呼んでいました)は原稿とにらめっこしながら指を折って8文字、9文字の見出しをひねり出すというわけです。

記事はどんどん入ってくるし、割付は何度も作り直すし、時間はないし…、そこに事件事故が発生したりして「差し替えだ」「それ二社(第二社会面)に回して、こっちはボツ!」…

締め切り時間が迫った編集局内は嵐のような騒ぎです。

 

 

僕の考えでは、新聞見出しは「記事内容を正確・簡潔に表現したもの」です。

そして、不思議なもので日本語は8~9文字で何でも表現できてしまうのです(記事によっては生みの苦しみですが)

音で言えば俳句17音、短歌31音という世界でもまれな短い表現芸術がありますね。

新聞見出しは芸術ではありませんけど、表現活動のひとつではあります。

 

 

見出しの話は尽きなくなりますから、最後にもっと短い表現手法を…

俳句の中でも自由律俳句は面白いですね。

尾崎放哉(おざき・ほうさい)の代表作のひとつ「咳をしても一人」は、たった7文字で境遇や悲哀や人生といったものを表現しています。

というわけで、当ブログの見出しはこれからも9文字で行きたいと思っています。 (11月20日)

 

 ◎倍数:新聞紙面制作で使う最小単位。昔の新聞は全15段あり、1段1行に鉛活字15本が入りました。その1本の大きさが1倍で、1倍活字は文章に使い、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍…8倍といった大きさの活字を見出しに使いました。1面トップの主見出しは8倍活字が基本でした。写真の大きさも30倍(2段)×40倍といったふうに割り付けます。今の新聞はほとんどが全12段になっていますが、単位としての「倍」を使っている新聞社はまだあると思います。