新月パーキング軽トラ市のおかあさんたちは、僕にとっては野菜や料理や方言の先生なんです。
気仙沼に住んでまもなく「うるがす」を知ったのは、この軽トラ市です。
水にひたして「ふやかす」ことですね。
今月、軽トラ市で青い豆を目にしました。
「この豆、何?」
「あおばた」
「何? 何だって?」
「あおばただよ、あ・お・ば・た」
僕は、あおばたなんていう豆を知りませんでした。
隣の軽トラも、その隣も、この豆を売っているのです。
秋に収穫して、干して、今ごろ売るのだそうです。
試しに一袋買いました。
青というか、薄緑色の小さな豆です。
「うるがして、塩入れて煮るんだよ」
水で一晩うるがしたら大きくふくらみました。
こんなにふくらむんですね。
豆料理をあまりやってこなかったので、びっくりです。
うるがした豆を、塩を加えて煮ました。
「酢としょうゆで食べるとおいしいよ」
たしかに、素朴な食べ方で、うまい。
別のおかあさんが「砂糖としょうゆで煮てみな」と言うのです。
煮方がへたなのか、しわが寄ってしまいましたが、けっこううまかった。
「あおばた豆って、珍しい豆ですかね?」
僕の問いに、おかあさんたちは、あきれ顔で「ふつう、ふつう」と言いました。
きのう行きつけのスーパーで目にしたんです。
「山形産 青ばた豆」
これだ!
喜んだと同時に、知らないのは僕くらいで、誰もが知っている、普通の豆なのではないかと気付いて愕然としました。
僕は、還暦を過ぎるまで「青ばた豆」を知らなかった自分を哀れに感じたほどです。
世の中のことを知らずに、いったい何をして歳を取ってきたのでありましょうか。
青ばた豆は、ゆでたのをタッパンに入れておいて、煮物や汁物やサラダにパラッと加えると便利ですね。 (12月15日)