気仙沼日記790回「防潮堤をめぐる矛盾」 | 西和賀日記 山・雪・味・人 楽しき農山村 

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奥羽山脈「真昼山地」に魅せられて65歳で岩手県和賀郡西和賀町に移住したおじさんの暮らしぶり


購読している読売新聞によると、岩手・宮城・福島の防潮堤建設工事は総延長333・8キロメートルで、その6割が完成したとのことです(9月11日付)




当ブログでは、防潮堤建設に関して何度も批判的に言っております。

紙面でも、工事の実態を伝えながらも、「住民は複雑」「議論尽くせぬまま建設」など、工事を疑問視する声を指摘しております。




海のリゾート地・小泉海岸はコンクリートにおおわれました。


防潮堤をめぐる矛盾をいろいろ感じています。


まず、東日本大震災の時に防潮堤は住民の命も財産も守れなかったのに、国・県は「住民の命と財産を守るために防潮堤を建設する」と言っています。


僕は宮城県認定の防災指導員でもあるのですが、県主催の防災講習会の時に、講師の言葉にがく然としたことがあります。

岩手県の田老(たろう)にあった防潮堤は「万里の長城」と言われた巨大・堅牢なものでしたが、津波で破壊されました。

講師は、もし防潮堤がなかったらさらに何割かの住民の命が失われた、といった意味のことを口にしたのです。

田老の犠牲者の多くは、防潮堤があるから大丈夫と思って避難しなかった人だったと、各種調査で明らかになっているはずです。

防潮堤があったから犠牲になってしまったのです。




上の写真はお伊勢浜の防潮堤工事です。


次に、もし住民の命と財産を守るために防潮堤を建設するというのなら、近い将来必ず発生する南海トラフ地震に対応した防潮堤を優先して建設すべきです。

東日本大震災は数百年に一度と言っているのだから、建設を急ぐ必要性は薄いのではないでしょうか。


南海トラフ地震・津波の死者・不明者想定は最大23万1000人(内閣府の最新試算)というではありませんか。

なぜ西日本太平洋沿岸に国費を投入しないのでしょう。

ぼう大な犠牲者が出てから、「命と財産を守るために」と防潮堤を建設するということなのでしょうか。

その時には、三保の松原にもコンクリートの壁をつくるのでしょうか。




この写真は岩井崎近くの防潮堤工事です。


矛盾はまだありますが、長くなったので…。


記事の中で、東北大災害科学国際研究所の今村所長が、「負の遺産」という言葉を使っています。そうなってはならない、と言っています。


僕は素人ですけど、ばく大な予算を費やして「負の遺産」づくりをせっせとやっているように思えてなりません。 (9月12日)