気仙沼日記313回「はさがけと棒がけ」 | 西和賀日記 山・雪・味・人 楽しき農山村 

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奥羽山脈「真昼山地」に魅せられて65歳で岩手県和賀郡西和賀町に移住したおじさんの暮らしぶり

刈り取った稲を田んぼで乾燥する方法には「はさがけ」と「棒がけ」がありますね。

以前から気になっていたのですが、気仙沼と一関を結ぶ国道284号を走ると、両方を見ることができます。




細い丸太を組んだ「はさがけ」です。

漢字では「稲架掛け」と書きます。

気仙沼あたりでは「はせがけ」と言う人もいます。

布団を干すように掛けていきます。


気仙沼から西進し岩手県一関市に入った室根町の風景です。





段々になったあたりに見事な「はさがけ」が並んでいます。







千厩(せんまや)を過ぎて川崎町薄衣(うすぎぬ)では両方が混在しています。

上の写真は、車の窓に最初に見える棒がけです。遠方に北上川に架かる北上大橋が見えます。このあたりが両方の境界のようです。

橋を越えれば、すっかり棒がけ風景となります。





さらに先の弥栄(やさかえ)の田んぼです。

この農家では、「コンバインで刈り取って機械乾燥するのが主流になっているけど、天日で時間をかけて干した米にはかなわないね」と自信をのぞかせておりました。

別の田んぼでは棒がけ作業真っ最中でした。





4~5メートルの長さの棒は先が鉛筆のように削られており、人力で泥に刺していきます。




重い鉄棒で細めの穴をあけてから棒を刺し込みます。

棒を若干傾けながら穴を広げて、最後に一気に突き刺します。

かなり高度なテクニックに見えます。





同じ地区の別の農家です。

棒の下部に筋交いに棒で支えます。

これに引っ掛けるようにして稲束を交互に重ねていきます。






棒は稲の重みでがっしりと地中に食い込んでいるようです。

なんだか、田んぼのモンスターみたいですね。


「コンバインは600万も700万もするから…。ウチらは昔ながらの方法でやるしかないのさ」と農家の人は語っておりました。

でも、風景として見ている僕のようなのんきな人間は、自然乾燥の稲刈りに目を引かれるのであります。






思わず車をとめて見とれてしまう田舎の絶景ではありませんか。

はさがけと棒がけの地域があるのは、旧南部藩と伊達藩が関係しているとの説があるようです。


ところで「はせがけ」「はさがけ」は、「斜(はす)に架ける」の「はすがけ」が語源ではないかと思ったりしています。

棒がけのことを「ほにょ」と言うのだとも弥栄で聞きました。


僕が育った関東平野の秋の田園風景には、モンゴルのパオを小さくしたような稲積みが点在していました。

乗って遊んで、怒られた思い出があります。

あれは何と呼んでいたのだろう?

宇都宮の実家の母に電話して聞いてみると「のう」と呼んでいたとのこと。


コンバイン時代の今ではまったく見られなくなったそうです。 (10月4日)