刈り取った稲を田んぼで乾燥する方法には「はさがけ」と「棒がけ」がありますね。
以前から気になっていたのですが、気仙沼と一関を結ぶ国道284号を走ると、両方を見ることができます。
細い丸太を組んだ「はさがけ」です。
漢字では「稲架掛け」と書きます。
気仙沼あたりでは「はせがけ」と言う人もいます。
布団を干すように掛けていきます。
気仙沼から西進し岩手県一関市に入った室根町の風景です。
段々になったあたりに見事な「はさがけ」が並んでいます。
千厩(せんまや)を過ぎて川崎町薄衣(うすぎぬ)では両方が混在しています。
上の写真は、車の窓に最初に見える棒がけです。遠方に北上川に架かる北上大橋が見えます。このあたりが両方の境界のようです。
橋を越えれば、すっかり棒がけ風景となります。
さらに先の弥栄(やさかえ)の田んぼです。
この農家では、「コンバインで刈り取って機械乾燥するのが主流になっているけど、天日で時間をかけて干した米にはかなわないね」と自信をのぞかせておりました。
別の田んぼでは棒がけ作業真っ最中でした。
4~5メートルの長さの棒は先が鉛筆のように削られており、人力で泥に刺していきます。
重い鉄棒で細めの穴をあけてから棒を刺し込みます。
棒を若干傾けながら穴を広げて、最後に一気に突き刺します。
かなり高度なテクニックに見えます。
同じ地区の別の農家です。
棒の下部に筋交いに棒で支えます。
これに引っ掛けるようにして稲束を交互に重ねていきます。
棒は稲の重みでがっしりと地中に食い込んでいるようです。
なんだか、田んぼのモンスターみたいですね。
「コンバインは600万も700万もするから…。ウチらは昔ながらの方法でやるしかないのさ」と農家の人は語っておりました。
でも、風景として見ている僕のようなのんきな人間は、自然乾燥の稲刈りに目を引かれるのであります。
思わず車をとめて見とれてしまう田舎の絶景ではありませんか。
はさがけと棒がけの地域があるのは、旧南部藩と伊達藩が関係しているとの説があるようです。
ところで「はせがけ」「はさがけ」は、「斜(はす)に架ける」の「はすがけ」が語源ではないかと思ったりしています。
棒がけのことを「ほにょ」と言うのだとも弥栄で聞きました。
僕が育った関東平野の秋の田園風景には、モンゴルのパオを小さくしたような稲積みが点在していました。
乗って遊んで、怒られた思い出があります。
あれは何と呼んでいたのだろう?
宇都宮の実家の母に電話して聞いてみると「のう」と呼んでいたとのこと。
コンバイン時代の今ではまったく見られなくなったそうです。 (10月4日)