四色の稲光 ~ 一族併セノ章 ~  [上ノ色] | 秘録 森羅家軍記 ~俺の屍を越えてゆけforPSP プレイ記録~

秘録 森羅家軍記 ~俺の屍を越えてゆけforPSP プレイ記録~

俺の屍を越えてゆけ for PSPのプレイ日記・情報など自由気ままに書き連ね中。
※全般的にネタバレ注意!情報系特に要注意!
※未来記事設定がある場合は、お手数ですが日を跨いでからリロードしてください。

この話は、とある平安時代、1049年のお話。


京の都に、言わずと知れた有名な一族・・・その中でも、最強の四女衆が世に羽ばたいたという噂が流れた。



この一族の、この衆なら―――京を脅かす朱点童子を討ち取ることが出来る―――



朱点童子に悪鬼悪霊をばら撒かれ、混乱の渦に陥っている京の人々は、彼女たちを希望の光として見た。


かの、屋敷に住まう、四色(ししょく)の稲光を――――




「お前たち、緊張感を持て!仮にもここは鬼が蔓延る巣窟と化しているんだぞ!」

後ろの三人にそう言い放った、桃色の細い帯を髪結いに使っている緑色で短髪の女性。


「いーじゃねーかよぉー。別に五万とした鬼が一斉に飛び掛ってくるわけでもなしー」

それを聞いて表情を軽く変えたのは、青色の帯の端を覗かせる赤色で微長髪の女性。

今の状況を軽く解説すると、どうやら京の都に現れた不気味な印の滞在する迷宮、その深部らしい。


「しかし、気味の悪いところですわね・・・」

髪の両端を結わえている青髪で短髪?の女性が、周囲を見回して感想を洩らす。


「・・・あの砂漠を抜けた先の扉は、こうなっているのね」

それを聞いて言葉を切り返した、綺麗な土色を靡かせる短髪の女性。



「そんなのうのうとした感想を言ってる場合じゃ・・・」

「倫様、そのように気を張り詰められては行く先で恐ろしい事態を招きかねません」

「気を張り詰めさせてるのは誰ですか!」


倫と呼ばれた緑髪の女性は、冷静ながら声をわずかに張らせた。

「まーまー。あんましイライラしててもしゃーねーじゃん?道具も結構残したまま来れてるんだし」

「映、それは油断って言うんだぞ・・・」

映と呼ばれた赤髪の女性は肩を竦める。


「栞ちゃんも大した怪我を負わなかったんだし、伊吹ちゃんだってその身一つでよく持ちこたえてたじゃん」

「お前なー・・・いくら矢の命中率がほぼ完璧だからって、後方で油断してちゃキリがないだろ?」

「油断じゃないぜあれは。道具もしっかりすぐ使えるように脇に準備してたから攻撃に専念できたんだよ」

「映・・・それは油断と同義よ」

「出ましたわよ、栞様の屁理屈」


暢気なものだ。



倫は討伐隊長ながら薙刀使いとして、吉焼ノ長刀を手に前線で奮起し、同時に討伐隊を護っている。

特徴は、前世が大僧正であること。たまに背後に前世の大僧正がツッコミを入れる場面がある。一才七ヶ月。

外見は、短髪で綺麗な緑色の髪。その髪に、細い桃色の帯を結んで、髪を整えている。白色肌。


伊吹は不撓不屈を信条としており、その名の通りどんな困難が立ちはだかろうと挫折することはない。

剣士でありながら、討伐隊全体への傷の回復また補助を事欠かない癒し系少女。一才四ヶ月。

外見は、微長髪を頭の両端で結わえた爽やかな青色。褐色肌。


栞は真面目な考えを基本とした行動を取る。が、外見に似つかわしくない寡黙さを漂わせる。伊吹と同じ剣士。

彼女は屁理屈を得意とし、気になった意見はそれが正統であろうと鋭い屁理屈を飛ばす。一才三ヶ月。

外見は、短髪で鮮やかな土色の髪。風に吹かれると、綺麗に足並み揃えて靡く。白色肌。


映はやんちゃ・破天荒・お転婆の三拍子揃った、一族内のムードメーカー。基本的に自由奔放な性格。

弓使いという命中率に不安のある職業に就きながら、矢の命中率はほぼ100%に近い精度を誇る。一才五ヶ月。

外見は、細い帯を脇から覗かせる微長髪で印象強い赤色の髪。褐色肌。



それぞれの髪の色が違うことで、外見的なバランスは非常に整っている。

性格も十人十色であり、さらにバランスは良く取れている。



「とにかく!屁理屈もへったくれもないぞ!ここをどこだと思ってる!」

「映様の態度は確かに油断とも取れなくはありませんが、それでも・・・」

「駄・目・で・す!地獄巡りまで来てそんな甘い事言ってると、死んでしまいますよ!」


地獄巡り―――


「お堅ぇなあ倫先生ー。あたしは地獄巡りに遊びに来てるわけでも、油断しに来てる訳でもねーのよ?」

「じゃあその態度は何なんだ・・・」

「隊長、元気出して・・・」



地獄巡り――――。

それはまさに、聞くも恐怖語るも恐怖、人外の居場所。


この違和感満載の迷宮が、今まさに地獄巡りの深部というわけだ。

栞の言っていた「砂漠」が、現在地である「修羅の塔」への関門・・・ということである。





亡者砂漠――――。

厄介なことに、強大な鬼の瘴気が延々と吹き付けるため、人間に害を及ぼし、身体の運動能力を低下させる。

倫たちはその砂漠に滞在する鬼全てを無視して、駆け抜けようと走ったのだ。


口論となっている原因は、駆け抜け切る直前。

一度鬼に前を阻まれ、仕方なく戦うこととなったのだ。

四人は栞が前もって手渡していた力士水を即座に三杯分、一気に飲み干して全力で斬り付けた。

それもそのはず・・・相手は忌まわしき茨城大将。


第一陣を切ったのは伊吹だった。

持ち前の素早さで一気に大将の手前まで走り寄り、疾風剣伊吹を叩き付けた。


が、その一撃では物怖じもしない大将。


傍にいたバサラという鬼が栞を攻撃するも、その軌道は空を切ったため、万一を免れる。

問題はその後。

茨城大将が栞に襲い掛かった。


伊吹が急いで剣を盾に攻撃を受けようと前に躍り出るが、背後から覇気のない矢が飛んでくる。

映の矢だった。 その矢は茨城大将の目に深々と突き刺さり、怯んだ隙に栞が流れる攻撃を栞燕返しで流す。

すかさず倫が大倫旋風で茨城大将・バサラを一斉に打倒した。





この経緯があって、今の口論があるというわけだった。


「わかったよぉ・・・悪かったっすー、次からは気を緩まないようにするっすー」

「映様もこう言っているわけですし、ここは一つ先を急ぎましょう」

「まったく・・・時間も大分消費したから、笛使いますよ」

「了解。私は春菜を詠唱します」


時が四刻戻り、討伐隊全員の傷は元々浅かったため完治した。

春菜は、味方一人ひとりが癒しの光によって身体の自然治癒能力が五倍程度跳ね上がり、

 身体の傷をある程度までなら完治できる、全体回復術である。

さて、ここから仕切り直し。


「一界はスルッと鬼を回避できたからいいけど、二界から先は私でも構造はわからないぞ」

「その時は私が野分を三詠唱して存在を次元の狭間に送っておきますわ」

「伊吹さん、技力は大丈夫ですよね?」

「もちろん。仮に切れたとしても、先祖様が命を賭してかき集めた、この神明丹で何とかなりますわ」

「まぁ、安心とは言えませんけど、一先ずは何とかなりますか」


討伐隊は二界へと歩を進める。



「やっ!やっ!やっ!」

野分三連詠唱。


「あいつらホント面倒臭いなぁ・・・」

「変身なんてされたら、身が持たないもの」

そう言いつつ、討伐隊は一気呵成に走り抜ける。


三界。

「やっ!やっ!やっ!」

ここでも野分三連詠唱。



「変にちょっかい出すんじゃないぞ」

「誰にそれを言ったんです・・・?」


倫の視線は映を指していた。

「んあ?あたし?」

「お前は目を離すと何をするかわからないからな」

「信用ねーなぁ。おっと、赤の火刻だ」


そういうと映は、界にただ一組佇む茨城大将に矢を放った。



「馬鹿!映お前!」

「信用ねーんだったら逆にそれを利用するだけだよ当主ちゃん」

倫は堪らず頭を抱えた。


「映様・・・さすがに軽率ですわよ?」

「あー、ごめんよ、当主ちゃん」


ふと映が口走った台詞を聞いて、

「映!!お前そこまで悪覚えしたか!!」

と倫が怒号を上げた。


「いやー・・・だってさ、雰囲気が柔らかい伊吹ちゃんが当主だったらよかったなぁって思っただけだよ」

しょんぼりとした表情でよくそんな酷な事を言ったものだ。

「いやですわ映様、倫様が当主として行動している以上、それは不可能ですわよ」

「もー・・・頭が痛い・・・」


そんな倫を気遣うように、栞が手ぬぐいを差し出した。

「映のあの態度はいつものこと。少しは許容しないと、身が持ちません」

「・・・・・・そうだな。悪かった」


「とりあえずさ、茨城大将は一撃で仕留めた。理由は何かって、これが欲しかったんだ」

「それは・・・大甘露?」


そう。茨城大将を一撃で仕留めたのは、その大将が持っていた大甘露を入手するための策だった。

策というか何というか、一つ間違えばほぼ間違いなく誰かが深手を負ったであろう、あの一矢で、映は実行した。

結果的に大甘露三個を、味方の損傷一つなしに手に入れたのだ。


―ほぼ100%という、半ば保障された矢の命中率にほんのわずかの疑いも持たずに―



「・・・なんにせよ、お前が欲しかったそれのために、一族を危険に侵すかもしれない行動を取ったのか」

「悪かったってばー当主ちゃん。でもさ、この先は誰も到達したことのない場所だろ?

   だったら、大甘露三個を『たったこれのために』とは言えないはずだぜ?」

「まぁ・・・確かに、お前の言う通りだ。だけどな」

「わかってるよ、今後は控える。信用ねーのを利用するってのも、言葉のアヤだし」


どこまで頭脳的な行動を取っているのかまでは理解に足らない。



ここで新たに記載しておこう。


父・綴譲りの勝気な性格は、映にとってはそれが策略を打つための頭脳的な理由の一つにもなる。

映は案外、破天荒・お転婆でありながら、実は相当に聡い。

当主への進言も、当主が望むであろう戦法また内容を先取って、逆に当主に採用されかねないものを出す。


実は映だけではなく、ここにいる倫・伊吹・栞も同様に聡い。

案外採用されかねないものでも、倫は当主として映の奇抜な進言を採用してきた。

奇想天外を真似できない伊吹は、堅実の定義の内でも派手なタイプの進言をしてきた。

静寂を司っているような栞でも、肝心要の進言を幾度と無く提出してきた。


先代・十八代目当主の尽の遺志を継ぐ形で倫が十九代目として動いている。

その倫が、一族の屋敷内であろうと、討伐先であろうと、何度も何度も逆境を潜り抜けてきたのだ。

映の進言・・・それが奇抜でも、異形でも、過負荷でも、何でも信じてきたのだ。


ただ、映の当主間違い発言に怒号を上げた理由については、残念だが記述すること適わない。

その理由は、彼女たちしか知らないのだ。




「・・・とりあえず、落ち着いたところで上を目指しませんか」

「だな。映、今後は頼むぞ」

「ハイよ。可愛い当主ちゃんの頼みならあたし何でも聞いちゃうもんね」


その言葉を聞いて、無表情を装って映に言い放つ。

「・・・馬鹿にしてるのか」

「そんなバカなー。あたしが可愛いって言ったらみんな可愛いんだよ。裏なんてないの」

「そ、そうか・・・お前は本当に理解し難い家族だな、全く」


満更でも無さそうな倫だったが、

「照れてもいいんだぜ?」

との言葉には

「討伐中だッ!」

と顔を少し赤くして返した。


「ほらお二方、御馬鹿やってないで参りましょう」

伊吹の言葉に前を向き直り、討伐隊は四界へ上がった。



「はっ、はっ、はっ」

伊吹の技力を懸念してか、四界では栞が野分を連続詠唱する。


「ごめんなさい、栞様」

「別に・・・気にしないで下さい、伊吹さん」


そして一気に走破する。



「・・・」

その途中で、今度は伊吹が茨城大将に、何故か疾風剣伊吹を繰り放った。


「なっ!?」

と倫が驚愕の表情を見せた刹那、後ろから栞が真空栞斬を繰り放った。

真空栞斬―――本来の名称は“真空源太斬”だが、栞がこの奥義を独自に改良した末、名前も変更している。


茨城大将は堪らず前のめりに倒れ、大将に引っ付いて来ていた鬼たちはそそくさと逃げ去った。



「ひゅーぅ。伊吹ちゃんも栞ちゃんもやるぅ~」

「伊吹さん!何故唐突に!栞も迂闊に手を出すなと・・・」


「いえ・・・映様の目的と違いませんが、敢えて言うなら」

「映と同じ理由です」


二人の手には、大甘露が合った。

それぞれの手にある大甘露は二つ・・・という事は、あの大将は他にも・・・。


「映様、これを」

「・・・何だ、これ?」



伊吹から手渡されたのは、その神々しさを全面的に押し出しているかのように輝いて見える衣服のようだ。

「聖霊の・・・衣!」


伊吹はそこに目をつけて、わざわざ背後から奥義を繰り放ったのだ。

「私と栞様は剣士、倫様は薙刀士。そして、映様は弓使い。どういうことかは、おわかりですよね」

「あ、ああ。伊吹さんと栞は剣士だ、前衛職には相応の防具が約束されている」

「ついでに言うと、倫さんの防具も剣士ほどではないにしろ、それでもある程度強固な防具を着用できる」


つまりはそういうことなのだ。


聖霊の衣―――おそらくは、他の迷宮のどこにも存在しない、存在できない、最大の防御衣服。


鎧や腹巻など、大方それを着用するためには、それなりの職業についていなければならない。

究極なところ、軽さを信条とする拳法家や、銃器の重さも考慮しなければならない大筒士には、着用できない。

鎧や腹巻などと言った相応に重力を持つ防具は、前衛を主とする職でしか、基本的に着用できないという事だ。


その考え方で言うと、主な前衛職は「剣士」と「壊し屋」。

準・前衛職という定義があるとするなら「薙刀士」と「槍使い」。



どちらにも当てはまらない映は、どうやっても相当な重力を持つ防具の着用はできない。

その上、今映が着用しているのは「鎮西ノ法衣」なのだが、此れが弓使いである映にとっては動きづらい。


その点、聖霊の衣なら神秘的な加護もあってか、鎮西ノ法衣よりも耐久性に優れており、

さらに言えば動きやすさも鎮西ノ法衣より格段に優れている。

衣服とはいえ、機能をそのまま重点として作られた、貴重に貴重を重ねて貴重な一品である。



「映様には、これくらい可愛くて頑丈な着物を着ていただかないと、割に合いませんわ」

「そ、そうなのかな」

「それに、倫さんも映の耐久に不安を覚えてたんじゃないんですか?」

「い、言われてしまうと、確かに不安だったが・・・」


伊吹の狙いはまさにそれなのだ。

「じゃあ、早速着替えてみるよ」

「ここでか?さすがにまずいだろ・・・」

「この先、誰も到達したことの無い場所だって言っただろー、当主ちゃん。

   備えあれば憂いなし、ってヤツだよ。だったら今着替えた方がいいじゃん」

「とことん恥ずかしいヤツだなお前は・・・」


今に始まったことじゃない。



それに、この界では栞が野分を連続詠唱し、さらに伊吹のちょっかいで残っていた一組もバラけた。

着替え中に鬼が襲ってくる危険性はない、という映の確信によるものだ。

「だからってだな・・・」

おっと、その場以外のものに話しかけるのは無しね、倫先生。



「・・・」

「どしたんだよ、当主ちゃん?」

「何でもない・・・。そんな事はいい、着衣はまだか?」

「ちょい待ってくれよ、着にくいんだよ」


それを見かねたのか、倫が手を貸し始めた。

「ほら、袖を先に通せ。袖を通す前に帯を締めてどうするんだ、それでも大和撫子かお前は」

憎まれ口を叩くも、世話好きは変わらない大和撫子だ。


「ん、しょっと。ありがとな、当主ちゃん、愛してるぜー」

と着替えを終わって即倫にベッタリと体を寄せる。

「やーめーろー!討伐中だって何度言わせるんだ!」

「じゃ、帰ってからならいいんだな?」

「ふざけてる場合じゃないだろ!さっさと行くぞバカ!」


意外と甘えん坊さんだった。



が、そんな空気は五界に到達した直後、疑心暗鬼の色へと変わる。


「野分は・・・」

「待ってくれ、伊吹ちゃん・・・様子がおかしい」

映が第一に気付いた。有寿ノ宝鏡を手にしているのは他でもない映なのだ。


「どうした、映?」

「当主ちゃん、見てくれ。おかしいと思わないか?」

「・・・うむぅ、鬼の姿が一匹たりとも見当たらない。だが、それが何か関係あるのか?」

「気付かねーのかよ当主ちゃん・・・有りも有り、大有りだぜ」


確かに有寿ノ宝鏡を覗く限り、鬼の姿はない。

だが・・・


「な、なにこれ・・・」

「えっ・・・!?」


続いて、栞と伊吹が異変に気付いた。

「わかったか、伊吹ちゃん、栞ちゃん」

「・・・あからさま過ぎて、気味が悪い」

「な、何なんだ?どうしたんだお前たち?」

未だに倫が気付かない。


「よく気配を探ってみてください・・・いえ、探らなくても、探ろうとすればすぐに分かります」

伊吹がそう言い終わるのと同時に、

「うおお・・・っ!!」

感じ切った。


「映、お前最初から気付いて・・・」

「当たり前だろ当主ちゃん!しっかりしてくれ!」



この時、鬼の姿は五界どころか、五界よりも上の界にすら鬼は滞在していない。

なのだ。

それが意味するものとは――――。



「アハハハハハハハハハハハハ!!」


黄川人は、笑っている。




「怯むな!行くぞ!どうやら、ここを過ぎれば最終局面だ!」

「ここまで来たのなら、躊躇う事はない・・・!」

「ここからも油断はしねェ!みんな、気張って行こーぜ!」

「皆様のお命、何があっても私がお守りいたします!」



時は、最終局面へと、針を刻んでゆく―――――。






――――物語は下ノ色へ続く――――





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