「ゆきりんにそんな事が…」
僕は全てを話した。
前田も驚いているのが
少しわかった。
「それで…魔物って何ですか?」
僕は尋ねた。
「魔物というのは人
それぞれが持つ
オーラのようなものよ」
前田は続ける。
「あなたAKBランドに
来るとき誰にも
気付かれなかったんじゃない?」
確かに誰にも
気付かれなかった。
「そうですけど
顔を隠してましたし」
「もし本当のゆきりんだったら
マスクをしてても
サングラスをしてても
すぐ騒ぎになるわ
顔は隠せても魔物は隠せない」
「魔物…」
そこで気付いた
ゆきりんと美穂が
似ていると感じた理由
きっと似た魔物だったんだ。
「ゆきりんも幸せよね」
「え?」
「ここまで
一生懸命のファンがいて…
アンチが全然いなくて…」
表情は変わらなかったが
悲しんでいると
すぐにわかった。
「確かに
あなたにはアンチがいますよ
ちょっとじゃないたくさん。
けど…
それよりも熱いファンがいます
それに…世界一素晴らしい
女性があなたを推しています
あなたも十分幸せですよ」
それは美穂のことだった。
「…ありがとう」
相変わらずリアクションは
薄かったが
少し照れていることが
わかった。
僕は前田を助けようと
思ったわけじゃない。
アンチなんかに
美穂の想いが消されるのが
嫌だっただけだ。
「明日公演なんで
僕はもう寝ますね」
「あっそういえば
私、あなたを
明日ステージに
立たせないから」
「な!?どうしてですか?
話聞いてました?
ゆきりんを助けられるかは
明日のステージに
かかってるんですよ!?」
前田は冷静だった。
「わかってる
けど今のレベルじゃ
楽しいなんて思えないわ
恥をかいて悔しい思いを
するだけよ」
どうして僕のレベルを
知っているのか疑問に
思ったが
重要なのはそこではなかった。
「じゃあ
どうしたら良いんですか!?
ゆきりんは諦めろ
って言うんですか?」
「そんなことは言わないわ」
「じゃあ、どうしたら…」
「私とルームメートになれて
良かったわね」
「え?」
「今から私が
レッスンしてあげるわ」
結局、レッスンは朝まで続いた。
前田は一睡もせず
「恥をかかないように」と一言
遠回しに頑張れと言うと
1人仕事へと向かった。
僕も一睡もすることもなく
公演を迎える。
僕がAKBとなって4日目。
続