【そもそも金融検査マニュアルとは】

 バブル直後、銀行のバランスシートにはどれだけの不良債権が潜んでいるかわからない状況だった。A銀行とB銀行の間で不良債権として計上する基準も違っていたし隠そうと思えばそれも可能だった。それが隠し切れない状況となり破たんしたのが山一證券であり北海道拓殖銀行だったともいえる(いずれも1997年に破たん)。
 そんな状況にあった金融機関に対し、全国一律の検査基準として策定されたのが「金融検査マニュアル」だった。これにより金融機関の財務体質、とくに自己資本比率が比較しやすくなり、早期是正措置などその後の金融行政に大きく貢献した。

 

【しかし金融検査マニュアルが隠れ蓑に…】

 しかし、次第に金融機関は金融検査マニュアルを盾に融資を絞り始めた。曰く、「金融庁のマニュアルに触れるのでこの融資は引き上げないといけない」曰く、「金融検査マニュアルに引っかかるのでこれ以上は貸せないんですよ」と。
 苦労して難しい条件の融資を実行しても、金融検査マニュアルを当てはめた瞬間「不良債権扱い」「貸倒引当金積増」になるのなら、「最初から何もしない」のが銀行員にとっての正解になってしまう。
 つまり、金融検査マニュアルが浸透したために、却って金融機関の自由な融資に縛りをかける副作用が起き始めたのだ。

 

【金融検査マニュアル廃止の理由とは】

 金融庁は、

 

 「昨年(2019年)金融検査マニュアルが廃止になったのは、金融機関が自分たちの判断で債権をどうランク付けするのか決めてくださいということです。貸出先企業のことを一番よく把握している金融機関が『今は苦しいけれども将来的に必ず復活するはずだ』というならばその債権は正常債権ですよね。」(週刊ダイヤモンド、2020.3.28号「金融庁遠藤長官インタビュー」)

 

 としている。

 

 金融検査マニュアルが一定の役割を果たしたのは事実だが、すでに金融検査マニュアルによる画一的な規制の時代は終わり、個々の銀行の判断が求められる時代に突入している、ということだ。

 

 2020.7.8

 

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