心肺蘇生法について | 新米救急隊員ぱおーん!

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現在は主に救急車の運転と救命士の補助                                             救命の最前線で活躍できるよう頑張るぞう!



今日は普通救命講習という、心肺蘇生法を一般の方に覚えてもらうための講習をしに行きました。

今回はいわゆる宿泊型の老人福祉施設で、介護士の方を対象に行いましたが、

こういった施設の方でなくても、10人前後のグループであれば講習を受けることが出来ます。

自分の中でまとめる意味でも、少し心肺蘇生法、その原理について書いてみようと思います。





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まず心肺蘇生法!なんていわれると、ドラマであるような、

死の淵に立っている人の心拍が戻る奇跡のようなモノ

を想像する方も多いんじゃないかと思います。

なんだかよくわからないけどスゴイ。自分には理解できそうにないと思いがちなんですが

実はその原理は至極単純な物なんです。




人間は、呼吸をして血液の中に酸素を取り込み、

その血液を心臓のポンプで体全体、特に脳に送り、生きています。

心肺停止状態になると、この生きるためのシステムが失われます。

自分で呼吸ができなくなり、心臓も止まり血液の流れが止まるのです。

酸素が行かなくなった脳は、壊死し、徐々に破壊され死に至ります。

この停止してしまったシステムを、周りからなんとか補助してやろうというのが心肺蘇生法です。


人工呼吸で酸素を取り込ませてやり、

心臓を揉んで脳に血液を送る。


このことで正常に呼吸をし、心臓が動いている状態に近づけてやる

これが心肺蘇生法の目的です。



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(肺から取り込まれた酸素が心臓のポンプ機能で全身に至る)



なんとなく、イメージできたでしょうか。



もちろん、これだけで心臓や呼吸が止まってしまった人が生き返る訳ではありません。

病院に搬送され、高度な医療によってその心肺停止の原因を除去してやる必要があるのです。

例えば、心筋梗塞が原因であれば心筋を栄養する冠状動脈の塞栓が原因である可能性があり、

冠状動脈内にカテーテルを挿入し、血栓を除去し、心臓の機能を復活させます。

頭部を打撲したことによる硬膜外出血が原因であれば、頭蓋内に溜まった血液のために

呼吸中枢が圧迫され呼吸困難に陥ることもあります。

この場合頭蓋にドリルで穴を開け、血液を除去し圧迫を解除すれば呼吸は戻ります。


こうした医師による高度な治療が行わなければ心拍は再開しません。

一般人による心肺蘇生法の目的は、

高度な治療に至るまで、脳を死なせないように酸素を送り続けてやる

このことにあります。


どんなに優秀な医師が的確な治療をし、心肺停止の原因を除去したとしても

それまでに脳が酸欠で壊死してしまっていては、手の施しようがないのです。

脳は酸欠の時間が長ければ長いほどダメージを受け、

心拍が再開したとしても、後遺症が残ります。

手が動かない、上手く喋れない、意識が戻らない、そして最悪では死に至ります。

酸欠の時間をできるだけ無くし、ダメージを最小限に留めてやるのが一般の方による心肺蘇生法なのです。






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119番をすれば平均5~6分で救急車が来ます。

救急隊員は質の高い心肺蘇生法を習得していますから、

医師に引き継ぐまでの間しっかりと脳に酸素を送り続けてあげることが出来ます。

また一般の方にはできない、口から肺まで管を通し確実に酸素を送り込む気管挿管、

手足の指の先など優先されない部分への血流を止め、

心臓と脳にその分を回し心肺蘇生の効果をより高めるアドレナリンの投与などを実施できます。


しかしその救急車が来るまでの5~6分で、すでに脳の壊死は進んでしまいます。

救急隊員に引き継ぐまでの間に、そばに居合わせた人が心肺蘇生を行えるかどうかが、

倒れた人の予後に直結してしまうのです。





僕が普段家族や知人なんかにこういう話をするときに言うのが、

自分の大切な人を守るため、それから自分も守ってもらうために、

心肺蘇生を覚えるといいよという事です。

家族の人が倒れたとき、そばにいる可能性が高いのは自分自身なのです。

自分の大切な人が倒れたのに、助けてあげられないなんて悲しいですよね。

自分自身が倒れたとき、助けてくれるのは家族しかいません。

誰も助けてくれないなんて、悲しいですよね。

ですから、一番いいのは家族揃って救命講習を受けることです。

職場で、地域で、救命講習を受けることです。

心肺蘇生法はお互いの命を支えあえる力だと、僕は思います。





※AEDの話はまたします