今まさにどのように社会を作り出していくかが重要なのかもしれません。そこでP.クルーグマン著の「自己組織化の経済学」にもしかしたらヒントがあるかもしれません。要点を言うと均一な分布をしている状態から出発するといずれは、ここでは商業地の分布を取り上げていましたが集約化が進み数個の集まりになっていくということのようです。もしこれが本当なら日本の現実を考えるならばできるだけ集まりを多い条件を満たすようなシステムにすれば地方の過疎化を抑制することができるかもしれません。

 私の想像ですが、この本で提示している基準として次のようなものになっています。

  基準1 求心力と遠心力のどちらか一方が強すぎるということがなく、両者のあ

      いだに緊張がある。

  基準2 企業は、他の企業が近隣に立地することは好むが、少し離れて立地する

      することは好まないため、求心力が効く距離は遠心力が効く距離より短

      い(専門店は、他の店が同じ商店街(ショッピング・モール)に移動し

      てくると、新たな顧客が呼び寄せられる可能性があるのでこれを歓迎す

      る。しかし、10マイル離れて競合している商店街に移動してくること

      は嫌うのである。

となっています。これから私のあくまでも想像ですが、求心力及び遠心力があまりお互いに強くない方が多くの集約点が生じやすくなるような気がします。そのためにはどうすべきかですが、最終的にあまり大きな商店街でない方がいいかもしれないということです。現在の日本においてどのような方法がいいかですが、ある程度の集約化は必要かと思います。そのバランスを考えて進めていくと全国各地で住みやすい街が作れるかもしれません。それぞれ各地に合った住みやすさを考えていくことが重要かと思います。そうすれば場合によってはその地に住みたがる人も出てくるかと思われます。

 現代の場合は前世紀のような地理的なもののみでなく、DX化におけるデジタル空間的な集約化が必要かと思います。人々がそのような視点で考えられるようになることが重要かと思います。

 著者が具体的にどのようなモデルを考えて社会が作られていくかを考えたかを言うとパラメータとしてある場所にある企業にゆらぎとして円周上を何回か上下するようなものを想定しています。そのゆらぎの回数を変化させることによってどのような集約化が生ずるかを見ています。回数が多ければ平均的にみるとゆらぎが小さくなって見えるわけです。そうすればあまり遠方に伝播しないように思われるわけです。いい例かどうか分かりませんが、東日本大震災の時低周波地震動が大阪の方のビルで大きな影響が生じたことがありますが、低周波の場合つまり回転数が少ない方が遠方に伝わりやすいということです。逆に言えば回転数が多ければ遠方に伝わりにくい傾向にあるわけです。そういうことから回転数が多ければ多くの場所で集約点が生ずることになるようです。ここで取り上げているのは空間的ゆらぎであることに注意しておきます。つまり、何らかの空間的な変化を与える結果として生ずるものです。結局一般の社会的変化としてどういう現象がこれに当たるかを考えてみると企業の新陳代謝、つまり、一例として企業が生まれたり廃業したりすることです。それが活発になればなるほど拠点、集約点が多く出てくることになるはずです。ある意味当然のことですが規模が小さくてもこの状況が生まれることが重要かと思います。

 更に秩序の形成としてある意味次のような傾向があることを導いています。

  ひとつは、無秩序な初期条件からはじめても、高度に秩序ある振る舞いをするよ

  うになること

  もうひとつは、少なくとも統計的な意味において、この振る舞いは驚くほど単純

  な規則性をもつということ

であるというものです。一見わかりにくいかもしれませんが、まず出発点としてほとんど無秩序な均一な分布から出発したとしても結果的に経済が自己組織化して真正面に向き合った二つの都市のみが生み出されるというものです。都市の作られ方もある二種類の要素がある場合には、例えばゴルフボールとピンポン玉が混ざった状態と似て衝撃で徐々に二つに分かれていくことがわかると思います。それと似たような感じで分かれていくようです。経済においては景気循環論者は、似たような論理から考えているようです。それが正しいかどうかは別です。もしこの理論ができればかなり投資に役立つかもしれません。地理的には都市計画に役立つかもしれないということのようです。

 一般の人々には景気循環論に興味があるかもしれませんが、現在の日本政府が景気循環について発表しています。具体的には拡張期と収縮期について表しているようです。上で示した二つの状態に集約することからこれに使える可能性があるように考えられたのかと思われます。日々の変化をとらえるものではないことに注意しておきます。もし理想を強いて述べるなら条件は難しいかもしれませんがバブルをしめすような指標が作れるといいかもしれません。たまにしか起きませんが価値があるかもしれません。