試合開始数分前。
両チームがグラウンドに集まり、最後のミーティングを行う。
僕はとにかくじゃんけんのことで頭がいっぱいだった。
この日ほどじゃんけんに勝ちたいと思った日はない。
25年間生きてきて未だにナンバーワンだ。
なんともったいない。
そして試合開始直前。
ついにその時が訪れる。
両チームがにらみ合いグラウンドに整列する。
自軍の先頭になぜか素人の僕。
審判らしき人「では先攻・後攻を決めるためじゃんけんを行いますので代表者の方は前へ出てください。」
ついにきた。
ここが僕の球技大会の正念場だ。
絶対に負けられない。
僕は一歩前へ出、相手チームの代表者と対峙する。
そして相手から掛け声がかかる。
じゃーんけーん…
いけない。
ここまでは相手のペースだ。
とにかくまずはあいこで引き伸ばそう。
このまま相手のペースに飲まれていては絶対に勝てない。
いったんあいこにして仕切り直すんだ。
いきなり勝とうと思ってはいけない。
とにかくフラットな状況にするんだ。
このじゃんけんに全てかかっている。
焦って台無しにするわけにはいかない。
落ち着け。
平常心だ。
負けなければいいんだ。
大丈夫負ける確率は1/3しかないんだ。
3回に2回は負けないんだ。
とにかく相手に息を合わせてあいこで引っ張ろう。
という思いを掛け声から0.05秒ぐらいの間で自分の心に語りかけ、とにかく相手に合わせるように手を出す。
ほい!
僕が出したのはグーだった。
なんとなく相手が好きそうな手を瞬時に考えとっさにグーを出した。
大丈夫。
ある学者の統計では人間は最初にグーを出しやすいらしい。
まんまと出してしまった僕であるが、それは相手も同じこと。
きっと相手もグーでくる。
いったん仕切り直して次で勝とう!
そして目の前に差し出された相手の手を見る。
………
目の前には相手選手の綺麗な手のひらと、指が5本広げられているのが見えた。
そう…
パーである。
そして直後、相手選手から情け容赦のない一言。
「じゃあうちが後攻でお願いします!」
そのあと小走りでベンチに戻った僕が仲間から激しく罵倒されたのは言うまでもない…
しかし申し訳ないことに、僕はこの状況をとてもおいしいと思ってしまった。
普段からなぜか芸人思考の強いBキャプテンも
「お前わざとだろ!絶対狙っただろ!おいしすぎるんだよ!羨ましいなこら!」
と言い出す始末。
かくして先攻で始まるといういきなり予定外な状況から不利すぎる試合が始まるのであった。
まだまだ続く
ちなみに僕はこのあとほんとに試合には出場していません。あしからず。でも続く。