4月から勤務しています獣医師の岡部です。
どうぶつとそのご家族がより良い関係が築けるよう真摯にどうぶつに向き合い、日々努力してまいりますのでどうぞよろしくお願いします。病院にお越し頂いた際には何でも気軽に聞いてくださいね!
家では今年で9歳になるチワワを飼っているのですが、僧帽弁閉鎖不全症という心臓の病気(正確には病態)を抱えています。今回は小型犬で多く見られるこの僧帽弁閉鎖不全症について書かせて頂きます。
●僧帽弁閉鎖不全症ってどんな病気(病態)?
僧帽弁閉鎖不全症は老齢の小型犬やキャバリアに多く見られる病気で、犬の心疾患の中で最も多い病気です。
心臓は全身に血液を送るポンプの役割を担っています。そのポンプ機能を維持するために心臓は逆流を防ぐ弁を持っており、これがうまく機能しなくなるのが僧帽弁閉鎖不全症です。また、この病気が疑われる患者さんは無症状で身体検査の際に心雑音があることから発見されることが多いです。
●僧帽弁閉鎖不全症の症状は?
心臓のポンプ機能がうまく働かず、血液の循環が悪くなった結果、うっ血状態になっていきます。そのため、この病気が進行すると肺に水が溜まり肺水腫になってしまったり、心臓に負荷がかかり心臓が大きく拡大することで気管を圧迫し、様々な症状を引き起こします。
では、お家でどんな症状に気を付けたら良いのでしょうか?
こんな症状が出たら注意!
- 咳をするようになった
- 呼吸の回数が多い(安静時に1分間30回以上)
- 呼吸が苦しそう
- 疲れやすくなった・運動を嫌がる
- 失神した
これらの症状があったらぜひ病院で検査をしてもらいましょう。
当院では定期的にチェックをして心雑音が大きくなるなど、症状が出始めたらX線(レントゲン)検査やエコー検査をおすすめしています。
●僧帽弁閉鎖不全症の治療法は?
当院では内科治療を行っています。
現在提唱されている心不全における分類は6つのステージに分類されており、初期の段階では治療は推奨されていません。病気のステージが進行した場合には、お薬による治療を行います。基本的には血管拡張薬や強心薬、利尿薬を服用しますが、この内科治療は僧帽弁閉鎖不全症を治す治療ではなく症状に合わせて病気とうまく付き合っていくことを目標としています。
この病気の根本的な治療は外科手術しかありません。しかし、多くは高齢であったり、限られた病院でしか行う事ができず高額な治療費がかかるなど、まだ一般的な治療法ではありません。
参考文献
Atkins C, Bonagura J, Ettinger S, Fox P, Gordon S, Haggstrom J, Hamlin R, Keene B, Luis-Fuentes V, Stepien R. (2009) Guidelines for the diagnosis and treatment of canine chronic valvular heart disease. J Vet Intern Med. 23:1