東京はまだ雪が残っています。

 

みなさんのところはどうですか?

 

仕事柄だと思いますが、雪を見ていて、「今日は交通事故が多そうだな」と思いました。

 

私の事務所では交通事故の依頼が結構多く、年間軽く150くらいは受けているかなという印象です。

 

交通事故にあってしまったとき、どこまで損害賠償が認められるか、というのは皆さん気になるところではないでしょうか?

 

交通事故の損害賠償請求の中身としては大きく分けると二つに分かれます。

 

・症状固定前の損害

 

・症状固定後の損害

 

です。

 

ちなみに、症状固定という言葉はあまり聞き覚えがないかもしれません。

 

症状固定とは、簡単に言うと、もうこれ以上治療しても回復しない状態、のことを言います。

 

交通事故に限らず怪我をした場合、いつまでも痛みが亡くならない場合が一定数あります。

 

ですので、どんなに治療を続けてもこれ以上はよくならないなと判断された時点で区切り、その前と後で分けて考えるのです。

 

症状固定後に傷や痛みが残った場合、その傷や痛みの部分を後遺障害と呼びます。

 

話を戻しますと、

 

①症状固定前の損害としては

・治療費

・入通院慰謝料

 

②症状固定後の損害としては

・後遺障害慰謝料

・逸失利益

 

があります。

 

他にも入院雑費とか家の改築費とかいろいろあるところですが、ここでは細かいので割愛します。

 

察しのいい方はここで気が付くかもしれませんが、①は必ず発生しますが、②は発生しないこともよくあります。

 

怪我をしたからと言って必ず後遺症が残るものではなく、3ヶ月~6か月ほどの治療で完治することも有ります。

 

そうなると、後遺障害の②の損害は発生しないので請求できないんですね。

 

ただ、事故にあって後遺症が残らないほうがいいのは間違いないありません。

 

事故に合わないのが一番ですがもしあってしまった場合、保険会社と交渉しなければいけません。その際に急にこのような言葉をきくよりも事前にしっておいたほうが、適正な金額を確保できる可能性が高いと思います。

 

なお、万が一交通事故にあった場合、すぐに弁護士に相談して今後の保険会社との対応の仕方を聞くようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

知人の先生のブログに同タイトルのお話があったので、少しだけ考えてみました。

 

みなさんは、どういう場合に社労士あるいは弁護士に相談するのか、使い分けの基準を決めてますか?

 

大体は、トラブルになったら弁護士、それ以外は社労士と決めておられるのではないかと思います。

 

 

弁護士は普段、トラブルになった案件について、交渉、調停、訴訟などの現場に携わります。

そういう現場での対応なので、必然的に、訴訟になった場合勝てる要素はそろっているか?という視点で相談事を聞くこととなります。

 

社労士さんは、この場合はこうすべきと法律に決まっているからこうしましょう、ああしましょう、と法律を念頭に置いて細かい手続を考えていくようです。

 

ですので、相談事をする場合は、●●という対応をしたらもしトラブルになっても勝てるか?もしくは勝つためにどうしておいたらいいか?という悩みであれば弁護士に相談するとよいと思います。

 

他方、こうしたいのだが、手続きはどうしたらいいの?あるいは、こうしたいがそういう制度や手続きはあるのか?という悩みなら社労士さんに相談するとよいと思います。

 

企業経営において相談窓口を多く作っておくことは必須ですが、使い分けの基準を一つ作っておけば、より効率的に使いこなせることができますよ。

 

経営者の皆さん、営業秘密の保護対策は十分ですか?

 

一つ扱いを間違えると会社の売上を大きく左右しかねないもの、そういった情報を営業秘密指定として管理されている会社は多いと思います。

今回は営業秘密について説明していきたいと思います。

 

1 営業秘密とはどのような情報を指すのか?

 

営業秘密とひとえに言っても一体どのようなものが営業秘密に該当するのかわかりにくいと思います。

 

そこで不正競争防止法は営業秘密の定義を規定しております。

 

不正競争防止法第26

「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

 

分解しますと、

  1. 秘密として管理されていること

  2. 事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること

  3. 公然と知られていないものであること

 

という要件を満たしたものが法律上の営業秘密として保護を受けることとなります。

 

一般的には、商品情報、製造方法、研究データ、ノウハウ、営業戦略、顧客リスト、価格リスト、取引先リストといた情報が含まれると言われています。

 

2 営業秘密はどう保護すべきか?

(1)契約によって保護する

たとえば雇用していた従業員が退職する場合,その退職する社員に当社の営業秘密を外部に開示しないこと、当社の営業秘密に該当する情報を利用して事業活動をしないことを約束する旨の秘密保持の合意書を作成し、判を押させるという方法があります。

 この合意書の中で営業秘密を侵害する行為が発覚した場合は、〇〇円の損害賠償金を支払う、得た利益の総額を支払う、等の取り決めをしておくとなおよいでしょう。

 

(a)メリット

 こういった合意書にサインさせることのメリットとしては、不正競争防止法の営業秘密に該当しない情報でも、広く営業秘密と指定して開示をしないようにできることですね。

(b)デメリット

デメリットとしては、合意書を交わした相手方にはこの合意書違反により損害賠償請求をすることができますが、その他の第三者には損害賠償請求をすることができないという点ですね。

もちろん、第三者が利用した情報が不正競争防止法上の営業秘密に該当する場合は、同法違反に基づき損害賠償請求をすることができますが、合意書で定めた損害額を請求することはできないので、損害の立証をしていかなければならない点がネックです。

 

(2)不正競争防止法による保護

 こちらの方法によると(1)のメリット・デメリットがそのまま逆になります。

 合意書を交わしていない者にも損害賠償請求をすることができます。

 

 損害賠償請求をするためには、営業秘密侵害行為と損害の発生、因果関係をこちらで立証できるだけの証拠を集めないといけません。これが営業秘密侵害のケースだとかなり困難になるのですが、こういった事態に備え同法は、侵害された会社の立証責任を軽減する規定を置いております。

 

(3)立証の負担の軽減

 (a)営業秘密の利用により利益を得たことの立証について

 同法5条の2は、

営業秘密侵害をされたと主張する会社が

  1. 相手方が、自社の営業秘密を不正に取得したこと

  2. その情報が生産方法等にかかる技術情報であること

  3. 相手方がその営業秘密を使用する行為により生産することのできる物の生産等をしたこと

を立証すれば、「相手方がその営業秘密を使用して物の生産等をした」事実を推定することとしています。

 相手方は逆に、営業秘密をしていない、という事実を立証しなければいけなくなります。たとえば、独自の技術を開発したのでそれを利用して作ったのであって、営業秘密は利用していない!という立証ですね。

 

(b)損害の立証

 また損害額についても、営業秘密侵害行為によって一体いくら損害が生じたのかについても立証が難しいため、個々の部分についても負担が軽減されています。

同法51項によれば、

 営業秘密の侵害者がその営業秘密を利用して作成した商品を譲渡したときは、

商品の単位数量当たりの利益の額×侵害者が譲渡した数(侵害された会社が侵害行為がなくとも販売できなかったおいえる数量は除く。)

 が損害として認定できる、と定めております。

 

3 まとめ

上記のように不正競争防止法により一定の営業秘密は保護されているとはいえ、会社からすると、法律上保護の対象に入らない情報の中でも保護したい情報は存在すると思います。

したがって、少なくとも営業秘密に触れる役職に就く重要人物を採用したり、退社したりす場合は、できるだけ合意書を作成し、営業秘密の侵害を防止するようにしましょう。

 

 

 

 

なんの話かというタイトルですが、まじめな事件のお話です。

 

私もよくゲームをしますが、技術が発達していくにつれ昔に比べてゲームの改編も容易にできるようになっているんですね。

 

しかもそれで金儲けをするという、なかなか肝が据わった方がいるようで。

 

東京高裁平成16年 3月31日
事件番号 平14(ネ)4763号

より引用。

 

「本件は、プレイステーション2(以下「PS2」という。)用ゲームソフト「DEAD OR ALAIVE 2」(以下「本件ゲームソフト」という。)の著作者としての同一性保持権(以下「本件同一性保持権」という。)を有する被控訴人が、本件ゲームソフトに「かすみ」という名で登場するキャラクター(以下「かすみ」という。)のコスチュームについて、裸体を選択できるようにメモリーカード上のパラメータデータを編集できるプログラム(以下「本件編集ツール」という。)をCD-ROMに収録して販売した。」

こ「の行為は、被控訴人の意に反する本件ゲームソフトの改変を惹起するものであり、本件同一性保持権を侵害すると主張して、控訴人に対し、損害賠償として慰謝料の支払を請求」

 

という事案。

 

こういた事案で難しいのは、<著作権侵害があるとして、じゃあ損害額はいくらだ>という点。

 

これについて東京高裁は、

 

「3 損害について
 本件ゲームソフトの改変は、上記のとおり、本件CD-ROMに収録した本件編集ツールを使用して、「かすみ」が本件裸体影像で対戦相手と戦闘することができるようにするものである。本件CD-ROMを収めたCD-ROMマガジン「お楽しみCD」30号(平成13年2月9日発売)及び同31号(同年4月13日発売)の各販売総数は証拠上明らかではないが、」「控訴人は、上記「お楽しみCD」30号及び同31号(定価各2980円)を、それぞれ、全国490店舗のソフト販売店等に対し、各数十枚程度を販売し、インターネットショップ上でも販売したことが認められる。」

 

「控訴人は、本件CD-ROMには、本件編集ツール以外にも多数のソフトやデータ集などが収録されていたこと等を考慮するならば、本件CD-ROMを入手したユーザーが、本件編集ツールを使用して、メモリーカードに記録されたパラメータデータを編集し、本件裸体影像を表示させたものと断定することはできないと主張する。確かに、本件CD-ROMには、本件編集ツール以外の多数のソフトやデータ集なども収録され、その購入者全員が本件編集ツールを使用して本件ゲームソフトの改変を行ったものとまでは認められないが、これらの点を考慮しても、改変の内容及び上記販売数等の本件に現れた諸般の事情に照らすと、本件同一性保持権の侵害に基づく損害賠償としての慰謝料の額は、原判決の認定した200万円を下らないものと認めるのが相当である。」

 

と認定。

 

注目するのは、「本件CD-ROMを入手したユーザーが、本件編集ツールを使用して、メモリーカードに記録されたパラメータデータを編集し、本件裸体影像を表示させたものと断定することはできない」という点。

 

確かに、そのCD-ROMにはほかにもいろんな編集ツールが入っているのだから、みんながそのツールを使ったとは限らないよね。他のツールを使ったことも考えられるよね。

 

でも裁判所は、「これらの点を考慮しても、改変の内容及び上記販売数等の本件に現れた諸般の事情に照らすと、本件同一性保持権の侵害に基づく損害賠償としての慰謝料の額は、原判決の認定した200万円を下らないものと認めるのが相当である。」

 

とぶった切っています。。

 

まあこれは、それを言い出すと立証がかなり難しくなりすぎ、あまりに原告の著作権が保護されなさすぎるだろう、という配慮でしょうかね。

 

なんにせよ、改変した方は、今回はデッドの方でしたね。

 

 

ITベンダーあるいは、ITベンダーに対してシステム開発を委託したことのある企業の方はなじみが深いのではないかと思われます。このシステム開発契約書。

 

私も近頃よく契約書のチェックをお願いされますが、実は結構誤解や問題が多い分野になります。システム開発は特にトラブルに発展することが多い契約であることがしられています。

 

一部では、システム開発の7割はトラブルになるとのことも言われています。

 

こういったトラブルを防ぐために契約書にあらかじめトラブルになった場合の対処法やリスク管理をしておくのですが、その場面で様々な誤解が生じていることがあります。

 

その一つがITベンダーのシステム開発契約は準委任契約だから、仕事の完成義務は負わないし、善管注意義務を果たせば決まった報酬はもらえるという誤解ですね。

 

では、この準委任契約とは何なのか?

 

民法では準委任に関する規定はなく、委任に関する規定を準用するとされています(民法656条)。

では委任と準委任の違いは何かと言われると、ざっくりと言いますと、委任は法律行為を委託するもの、準委任は法律行為ではないものを委託するもの、と分けられます。

 

準委任の例として挙げられるのが、医師の診療や手術、あるいは塾の講師などですね。

医師は、治療や手術は行いますが、病気を完治させる責任は負いません。医療過誤だといわれるようなひどいケースでなければ、基本的に債務不履行に基づく損害賠償責任などは負いません。

塾の講師もそうですね。子供の学習指導には携わりますが、大学の合格までは保証せず、志望校に合格できなかったとしても債務不履行責任は負いません。

 

 

このように、準委任契約においては、受任者は青果物の完成責任を負わない、と言われていることから、ITベンダーはプロジェクトが途中で頓挫して成果物が完成しなくても、ITベンダーは損害賠償責任を負わずに済み、かつ報酬も請求できると言われています。

 

しかし、これは認識に誤りがあります。

 

そもそも準委任契約には、履行割合型(事務処理の労務に対して報酬が支払われるもの)と成果完成型(事務処理の結果、生じた成果に対して報酬が支払われるもの)に分かれます。

 

システム開発契約は成果完成型に分類されるものであって、実態は請負契約とさほど変わりません。

したがって、システム開発をしていて途中でプロジェクトが頓挫してしまった場合でも、それがITベンダーのスキル不足であったり、ITベンダーに責任がある場合は、報酬も請求できないし損害賠償責任も負うことになります。

 

 

 

次によく耳にするのは準委任契約は善管注意義務を負っているにすぎないので、これを果たしていれば損害賠償責任は負わないという点です。

では、善管注意義務の中身は何か?精一杯やったんだから、それで良し、とはならないところがポイントです。

 

想像してみるとわかるのですが、医療行為でも、確かに治療方針を選択するのは患者ですから、最終決定権は患者にあります。しかしだからと言って医師は、治療方法の選択肢を与えてあげるだけでいいかというとそうではありません。

 

医師は、どの方法を取ったらどんなメリット、デメリット、リスクがあり、そのリスクはどの程度か、という点を詳細に説明する義務があります。医療の専門家ですからこれは当然ですね。私を含む弁護士もそうです。

事件の見通しと解決策とメリット、デメリット、リスクを適切に説明しないといけません。そういった説明をせず依頼者が損害を被った場合は、弁護士も責任を負うことになります。

 

ではITベンダーはどうかというと、ユーザーのシステム部門と比較して、ITベンダーはシステム開発の経験が豊富です。様々なプロジェクトも経験しているので、大事な勘所も分かっているし従業員もITに精通しているでしょう。

対してユーザーは、ITベンダーに比べればシステム開発に関する知識や経験は少ないでしょう。だからこそITベンダーに依頼して知見や技術を得ようとし、そこに対価を支払うのです。

 

この場合のITベンダーの立場は先に挙げた医師や塾の講師、弁護士と同じような立場だと言えるでしょう。したがって責任の重さも同じということになってきます。

 

したがって、ITベンダーとしてはユーザー希望を聞いたうえで、予算の算定、追加費用見積もり額の提示、機能追加の適正不適正等、代替策等を説明しながらプロジェクトを円滑に進められるようにマネジメントする義務を負います。このような行動や助言をしていなかったとしたら債務不履行責任を負うこととなります。

 

こういった点を念頭に置きつつプロジェクトの進行を管理する必要があることを頭に入れながら日々の業務を遂行していっていただければと思います。

最近、不当労働行為について調べる機会があったので、ここにも書き込んでおこうと思います。

 

参照 : 経産ニュースアリさん引越社、懲戒解雇は「不当労働行為」都労働委認定

上記の事件は、関西では赤井英和さんで、特に有名な引っ越し会社が引き起こした事件ですね。

事案の概要としては、同社の従業員の男性が平成27年1月、営業車を運転中に事故を起こしたことをきっかけとして、会社から弁償金を求められました。
これに違和感を感じた男性は、社外の労働組合に加入し、団体交渉を開始しました。
内容について詳細は不明ですが、おそらく「弁償金を従業員に請求する権利は法律上認められない。」と主張したものと思われます。

これに対して同社がとった行動としては、男性を同年8月に懲戒解雇処分にするとともに、顔写真入りで「罪状」と題した解雇文を全店に貼り出したというものでした。
その後、2カ月後に解雇を撤回し、一日中書類を廃棄するシュレッダー係に配転(配置転換)するという措置をとりました。しかも、目立つオレンジ色のベストを着せられて。明らかな嫌がらせと思われる行為ですね。

企業のこれらの対応は、弁護士の視点からすれば、到底信じられない行動であり、顧問先の企業さんがこのような行動をとっていたら、相当頭を抱えると思います(笑)。 東京都労働委員会が、当該配転等を不当労働行為と判断し救済命令を出すのも当然と思われます。

 

おそらく企業にもそれなりの言い分があるのでしょうが、こういう対応をしてしまうと、この対応自体がクローズアップされて、企業の言い分を聞いてみようという方は少ないのが世間の目なので、こういう対応は絶対しないようにすべきですね。

 

対応が分からない場合は弁護士に相談しながら、対応を決めていきましょう。それが一番安全だと思います。
 

東京地判平成20年1月28日(日本マクドナルド事件)

 

事案の概要

被告は,全国に展開する直1営店等で自社ブランドのハンバーガー等の飲食物を販売することなどを目的とする株式会社(日本マクドナルド社),原告は当該会社の元従業員である。

被告の営業ラインのランク付けは,概要,①マネージャートレーニー(入社時からセカンドアシスタントマネージャーに昇格するまでの身分),②セカンドアシスタントマネージャー,③ファーストアシスタントマネージャー,④店長,⑤オペレーションコンサルタント(以下「OC」という。OCは,10店舗程度を担当し,その担当区域をOCエリアという),⑥オペレーションマネージャー(以下「OM」という。OMは,6か所程度のOCエリアを統括し,その担当区域をOMエリアという),⑦営業部長,⑧営業推進本部長(代表取締役の兼務)からなる。

 

原告は平成11年10月から店長として業務に携わっていたが店長として業務に携わっていた期間の割増賃金の額に未払い分が存在するとして提訴した。

これに対して被告は,管理監督者については,労働基準法の労働時間等に関する規定は適用されない(労働基準法412号)として,割増賃金の支払い額を争った。

 

判旨

「原告が管理監督者に当たるといえるためには,店長の名称だけでなく,実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められるものでなければならず,具体的には,職務内容,権限及び責任に照らし,労務管理を含め,企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか,その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか否か,給与(基本給,役付手当等)及び一時金において,管理監督者にふさわしい待遇がされているか否かなどの諸点から判断すべきであるといえる。」

1 店長の権限等について

(1)「店長は,アルバイト従業員であるクルーを採用して,その時給額を決定したり,スウィングマネージャーへの昇格を決定する権限や,クルーやスウィングマネージャーの人事考課を行い,その昇給を決定する権限を有しているが,将来,アシスタントマネージャーや店長に昇格していく社員を採用する権限はないし(クルーが被告に入社を申し込む場合に,店長が,当該クルーの履歴書にコメントを記載することはある)」,「アシスタントマネージャーに対する一次評価者として,その人事考課に関与するものの,その最終的な決定までには,OCによる二次評価のほか,上記の三者面談や評価会議が予定されているのであるから,店長は,被告における労務管理の一端を担っていることは否定できないものの,労務管理に関し,経営者と一体的立場にあったとはいい難い。」
(2)「次に,店長は,店舗の運営に関しては,被告を代表して,店舗従業員の代表者との間で時間外労働等に関する協定を締結するなどの権限を有するほか,店舗従業員の勤務シフトの決定や,努力目標として位置づけられる次年度の損益計画の作成,販売促進活動の実施等について一定の裁量を有し,また,店舗の支出についても一定の事項に関する決裁権限を有している。
 しかしながら,本社がブランドイメージを構築するために打ち出した店舗の営業時間の設定には,事実上,これに従うことが余儀なくされるし,全国展開する飲食店という性質上,店舗で独自のメニューを開発したり,原材料の仕入れ先を自由に選定したり,商品の価格を設定するということは予定されていない」。
 「また,店長は,店長会議や店長コンベンションなど被告で開催される各種会議に参加しているが,これらは,被告から企業全体の営業方針,営業戦略,人事等に関する情報提供が行われるほかは,店舗運営に関する意見交換が行われるというものであって,その場で被告の企業全体としての経営方針等の決定に店長が関与するというものではないし」,「他に店長が被告の企業全体の経営方針等の決定過程に関与していると評価できるような事実も認められない。」
 (3)以上によれば,被告における店長は,店舗の責任者として,アルバイト従業員の採用やその育成,従業員の勤務シフトの決定,販売促進活動の企画,実施等に関する権限を行使し,被告の営業方針や営業戦略に即した店舗運営を遂行すべき立場にあるから,店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかであるものの,店長の職務,権限は店舗内の事項に限られるのであって,企業経営上の必要から,経営者との一体的な立場において,労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえような重要な職務と権限を付与されているとは認められない。」
2 店長の勤務態様について
(1)「店長は,店舗従業員の勤務シフトを決定する際,自身の勤務スケジュールも決定することとなるが,各店舗では,各営業時間帯に必ずシフトマネージャーを置くこととされているので,シフトマネージャーが確保できない営業時間帯には,店長が自らシフトマネージャーを務めることが必要となる。
 原告の場合,自らシフトマネージャーとして勤務するため,同年7月ころには30日以上,同年11月から平成17年1月にかけては60日以上の連続勤務を余儀なくされ,また,同年2月から5月ころにも早朝や深夜の営業時間帯のシフトマネージャーを多数回務めなければならなかった」。その結果,「時間外労働が月100時間を超える場合もあるなど,その労働時間は相当長時間に及んでいる。」
 「店長は,自らのスケジュールを決定する権限を有し,早退や遅刻に関して,上司であるOCの許可を得る必要はないなど,形式的には労働時間に裁量があるといえるものの,実際には,店長として固有の業務を遂行するだけで相応の時間を要するうえ」,「店舗の各営業時間帯には必ずシフトマネージャーを置かなければならないという被告の勤務態勢上の必要性から,自らシフトマネージャーとして勤務することなどにより,法定労働時間を超える長時間の時間外労働を余儀なくされるのであるから,かかる勤務実態からすると,労働時間に関する自由裁量性があったとは認められない。」
(2)「この点,被告は,原告の労働時間が長時間に及んだのは,部下とのコミュニケーションが不足するなどして,シフトマネージャーを務めることができるスウィングマネージャーの育成ができなかったことが原因であるなどと主張する。
 しかしながら,店舗運営に必要な数のシフトマネージャーが確保できていない場合に,店長が自らシフトマネージャーとして勤務することで労働時間が長期化することは,原告に限ったことではなく,他の店長についても生じている現象である」。「原告の勤務状態が,上記の状況にまで及んだことについては,被告が指摘するとおり,スウィングマネージャーの育成に失敗したという側面があることは否定できないものの」,「程度の差はあれ,これは,被告における店長が,他の従業員からシフトマネージャーを確保できなければ,自らシフトマネージャーとして勤務することでその不足を補うべき立場にいるという被告の勤務態勢上の事情から不可避的に生じるものであり,専ら原告個人の能力の不十分さに帰責するのは相当でない。」
 「なお,被告は,店長が特定の営業時間帯のシフトマネージャーを自店舗の従業員から確保できない場合には,自らシフトマネージャーを務めるという方法以外に,他店から一時的にスウィングマネージャーを借りるという方法もあると主張するが,原告の場合には,原告が要請しても,他店から円滑にスウィングマネージャーを借りることができていた状況にはなかったと認められるし」,「上記の原告の勤務状況からすると,原告が店長を務めていた店舗でのシフトマネージャーの不足の程度は,他店からスウィングマネージャーを一時的に借りることで改善される状況ではなかったといえる。」
(3)「また,被告は,店長が行う労務管理,店舗の衛生管理,商圏の分析,近隣の商店街との折衝,店長会議等への参加等の職務は,労働時間の規制になじまないものであると主張する。」
 しかしながら,「店長は,被告の事業全体を経営者と一体的な立場で遂行するような立場にはなく,各種会議で被告から情報提供された営業方針,営業戦略や,被告から配布されたマニュアルに基づき,店舗の責任者として,店舗従業員の労務管理や店舗運営を行う立場であるにとどまるから,かかる立場にある店長が行う上記職務は,特段,労働基準法が規定する労働時間等の規制になじまないような内容,性質であるとはいえない。」
3 店長に対する処遇について
(1)「平成17年において,年間を通じて店長であった者の平均年収は707万184円」で,「年間を通じてファーストアシスタントマネージャーであった者の平均年収は590万5057円」であったと認められ,「この金額からすると,管理監督者として扱われている店長と管理監督者として扱われていないファーストアシスタントマネージャーとの収入には,相応の差異が設けられているようにも見える。」
 しかしながら,「S評価の店長の年額賃金は779万2000円」,「A評価の店長の年額賃金は696万2000円,B評価の店長の年額賃金は635万2000円,C評価の店長の年額賃金は579万2000円であり,そのうち店長全体の10パーセントに当たるC評価の店長の年額賃金は,下位の職位であるファーストアシスタントマネージャーの平均年収より低額であるということになる。また,店長全体の40パーセントに当たるB評価の店長の年額賃金は,ファーストアシスタントマネージャーの平均年収を上回るものの,その差は年額で44万6943円にとどまっている」。
 また,「店長の週40時間を超える労働時間は,月平均39.28時間であり,ファーストアシスタントマネージャーの月平均38.65時間を超えていることが認められるところ,店長のかかる勤務実態を併せ考慮すると,上記検討した店長の賃金は,労働基準法の労働時間等の規定の適用を排除される管理監督者に対する待遇としては,十分であるといい難い。」

(2)また,被告では,「各種インセンティブプランが設けられているが,これは一定の業績を達成したことを条件として支給されるものであるし(したがって,全ての店長に支給されるものではない),インセンティブプランの多くは,店長だけでなく,店舗の他の従業員もインセンティブ支給の対象としているのであるから,これらのインセンティブプランが設けられていることは,店長を管理監督者として扱い,労働基準法の労働時間等の規定の適用を排除していることの代償措置として重視することはできない。」
(3)なお,仮に,店長の平均年収が,上記のインセンティブプランに基づき支給されたインセンティブを含むものであれば,被告における店長の賃金が管理監督者に対する待遇として不十分であることは,一層明らかであるといえる。
4「以上によれば,被告における店長は,その職務の内容,権限及び責任の観点からしても,その待遇の観点からしても,管理監督者に当たるとは認められない。」

 

氷上の方に行った帰りに峰山高原に行って来ました。



景色がとても綺麗でした!

兵庫県は大きいと同時に観光スポット、スポット候補がたくさんありますね!

冬は星空がきれいみたいです!

天体観測、次は体験したいですね!



露天風呂もありました!