引き続き、治安維持法の予防拘禁のことを調べています。
新日本出版社 荻野富士夫編 治安維持法関係資料集第4巻に載っていた統計資料によれば、昭和16年5月15日から昭和20年5月末までの統計によれば、
・一審で予防拘禁の決定が出たのが60件
・即時抗告で認められたのが2件
・合計62件!
でした。
2019年10月1日、法務省が発表した資料によると、2019年6月末現在の送還忌避被収容者のうち、366人(約4割)が有罪判決を受けた人とのことです。
同じ資料には、「我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消歴を有する者を仮放免することは,我が国の安全・安心を確保する観点から認めるべきではな」い、としています。
つまり、
366人
を予防拘禁していることを認めているのです。治安維持法による予防拘禁は4年間で62件、入管収容は2019年6月末の1日だけをとっても、その6倍もの人数を予防拘禁しているのです。
また、前にも書いたとおり、予防拘禁の期間は2年で更新するためには裁判所の決定が必要なのですが、更新が認められたのは
・4件!
でした。つまり、2年以上の長期拘禁がされたのが、4年の間に4人しかいなかったということです。
2019年5月、共産党の藤野保史議員の質問に対して出入国在留管理庁の佐々木聖子長官がした答弁によると、2018年12月末現在で、収容6カ月以上が681人(54.7%)、1年以上が491人(39.4%)、1年半以上が313人(25.1%)とのことです。2年以上の収容がこの313人のうちどれくらいかはわかりませんが、4人ということはないでしょうね。
つまり治安維持法の予防拘禁は
・再犯のおそれが顕著な場合
・裁判所の決定必要
・法律で決められている
・上限2年。更新も裁判所の決定が必要
・予防拘禁をしたのは62件、2年以上は4件
でした。
入管収容は
・前科があるだけで、再犯のおそれが「顕著」かどうか関係ない
・入管だけの判断
・入管局長の内部指示による
・上限なし
・1日切り取るだけでも予防拘禁の6倍の人数、2年以上の収容も遙かに多い
ということで、どちらが酷い制度なのかは火を見るよりも明らかですね。