【小学校での流行】

東京都保健医療局は、4月24日(金)、麻疹(はしか)の患者が増え、5年生の3クラスが学年閉鎖になっていた新宿区内の公立小学校で、患者数が計47人になったと発表しました。今後、感染拡大の可能性は低いことから、学年閉鎖は24日で終了したとのことです。都内の学校での麻疹による学級・学年閉鎖は2014年以来です。感染者全員に海外渡航歴はありませんでした。また、感染者のうちワクチンを2回接種していた28人は全員軽症でした。

 

同小学校では、10代の児童と40代の教職員らに発熱などの症状がみられ、4月9日から学年閉鎖となっていましたが、24日の時点で児童41人、教職員6人の感染が確認されました。入院された患者さんも複数いましたが、現在は児童・教職員いずれも快方に向かっているとのことです。

 

【麻疹の疫学】

2015年に、日本は土着の麻疹が発生しない「麻疹排除国」として世界保健機構(WHO)から認定を受けています。しかしその後も、海外から持ち込まれた麻疹の流行が報告されています。特に今年は、4月12日までに国内で299人(24日時点で都内203人)が感染し、昨年の年間感染報告者数265人をすでに上回っています。

 

特に欧州での流行が毎年のように報告されており、2025年には英国を含む複数の欧州諸国が「麻疹排除国」の認定を取り消されていますが、今年は米国や東南アジアからウイルスが持ち込まれる機会も増えているとのことです。

 

【感染様式】

インフルエンザウイルスは飛沫感染(感染者の咳やくしゃみで飛び散るウイルスを含むしぶきを、近くの人が口や鼻から吸い込むことで感染)や接触感染でうつるため、マスクや手洗いで予防が可能です。一方、麻疹は空気感染(咳やくしゃみのしぶきが乾燥して飛沫核となり、空気中に漂ったものを吸い込むことで感染)を起こすため、インフルエンザウイルスより感染力が非常に強く、同じ室内・同じ空間にいるだけで感染する可能性があります。

 

【症状と経過】

麻疹ウイルスに暴露されてから約10日(潜伏期間)で、発熱、咳、鼻汁、結膜充血などの症状が数日続き、口腔の頬粘膜に特徴的なコプリック斑がみられます。いったん解熱した後に再び発熱し、顔面から発疹が出現し、その後全身に広がります。経過が良ければ1週間程度で回復します。

 

感染者1000人に1人程度の割合で脳炎を合併し、30%に後遺症を残す場合があります。また、致死率は先進国でも0.1~0.2%とされています。さらに、2歳以下で麻疹に罹患した場合、7~10年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することがあり、進行性の知能障害や運動障害をきたし、発症後数年で死亡に至ることがあります。

(東京小児科医会HPから)

 

【ワクチンと治療】

麻疹にはインフルエンザのような特効薬はなく、予防には麻疹ワクチン(MRワクチン)の接種が最も重要です。麻疹ワクチンは1回接種で約95%、2回接種で98~99%の有効率(抗体陽転率)があり、高い免疫獲得効果が期待できます。今回の小学校での流行では、ワクチンを2回接種している人にも感染していますが、特徴的な症状が認められないほど症状は軽く、全員軽症でした。

 

麻疹の流行を防ぐには、集団として95%以上の接種率を維持することが必要ですが、2022年度95.4%、2023年度94.9%、2024年度92.7%と低下傾向にあり、これも感染拡大の一因と考えられます。また、2回接種が制度化される前の世代(現在36歳前後以上)では1回接種のみの方も多く、十分な免疫がない可能性があります。必要に応じて麻疹抗体価の検査(自費)をご検討ください。

 

【1歳未満の児】

MRワクチンは定期接種として1歳過ぎてからになりますが、生後6カ月から任意接種(自費)として接種が可能です。ただし、1歳未満での接種では母親由来の移行抗体の影響により、十分な免疫が得られない可能性があります。1歳未満で任意接種(自費)を行った場合でも、1歳での1回目の定期接種と小学校入学前の2回目の定期接種は通常通り行うことになります。

流行状況や生活環境等を踏まえ、接種をご希望される場合はご相談ください。