太平洋不知火楽団・祝結成20周年記念ワンマン@下北沢ろくでもない夜(旧下北沢屋根裏) | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。


前身バンド「SAYONARA 宇宙時代」の結成から約20周年とのことで、太平洋不知火楽団の久しぶりワンマンライブ。
(貼り付けている動画は過去のMVやライブのものです)

※2/29の笹口さんお誕生日イベントのライブレポは👇のリンクからどうぞ。
【面白ライブレポ】笹口騒音10才記念「笹10祭」(うみのて,笹オケ,リトビ@西永福JAM)

フロア後方に椅子があり(ありがたい!)座っていたが、寄りかかるとPA卓の壁だった。ベースの重低音とドラムのバスドラがズシズシと振動して僕の身体を揺らす。コントローラーの左右の持ち手が振動する、プレステのデュアルショックみたいだと思った。

不知火ズの衝撃はデュアルショックのさらに上を行くショックだった。笹口騒音さんのギターボーカル、大内ライダーさんのベース、ツガネリョータさんのドラム、3人のかもしだすロックミュージックはトリプルA級のショックだ。

流行りのシティ・ポップの方向性とは真逆といってもよいノイジー&ラウドな音楽。同世代のシティ・ポップバンドが調和された美しさを得る代償に失ってしまった、ロック由来の混沌としたエネルギーを不知火ズは鳴らしているのだ。しかし、書道有段者の一筆書きのように高度に設計&構築されている。大胆不敵なダイナミズムを感じさせるそのサウンドにひたるだけで活力がわいてくる。

新しく発売された不知火ズベスト版のリード曲となる曲(めちゃイケてる曲!)の曲名もだが、イベント名の「ロ(ッ)クでな(お)しナイト」は漫画『ろくでなしBLUES』(森田まさのり)とライブ会場の名前「下北沢ろくでもない夜」に掛けているのだろう。



僕が少年ジャンプを読み始めた頃の森田さんの連載漫画は『ROOKIES』だったので、『ろくでなしBLUES』世代ではないのだが(だけど笹口さんと僕は同学年)、力強い絵と物語の筆致が印象的な不良漫画の良作というイメージを持っている。そして、この不良漫画で主人公が義を通すように、不知火ズも世直しロックを演奏しているように思うのだ。説教臭くならない、燃えるような燃やすような熱意を世界(太平洋)に向けて鳴らしている。

不知火ズの前身である「SAYONARA 宇宙時代」からも3曲演奏。ナンバーガール「透明少女」そのまんまの「kokoseiくらい」、ブルースの名曲「アンカー」(これは2ndアルバムでも収録されていたね)、硬派なロックで歌メロに求心力のある「KARAOKE SONG」(3rdアルバムに収録希望)。今の笹口さんの根っこが伝わってくる演奏だった。

休憩前の数曲における笹口さんのパフォーマンスは生きているのか死んでいるのか分からない狂気はゾンビ映画のそれだった(「Wake up Dead Boy!」)。あんなに感情と脂(旨みと辛み倍増し)の乗ったギターソロは初めて聴いた。まさに、エネルギーとカオスのかたまり!

そして、ライブ前半に演奏した「Dancing Hell」、後半に演奏した「サテライトからずっと」。この二曲は不知火ズの代表曲にして、超がつく名曲。「夏町」も良かったなー。自分的には笹口騒音オーケストラの演奏するカラフルな「夏町」の印象が強いけれども(たくさん聴いたから)、不知火ズ版「夏町」も素敵だった。



しかし、一番楽しかったのは、終盤の2ndアルバム『THE ROCK』からの三曲。初めて聴いたときには、ギターのフィードバックノイズがロックの新次元へリスナーを連れていく気がした「売春歌」は生で聴いても感激。「うるう年に生まれて」の繰り返されるベースリフ(諸行無常)はストイックなカッコ良さがあった。そして、「ADHD」は僕の中にあるズルさを鋭く気持ちよく討ってくれた。はっきり言って、1stアルバムよりも2ndアルバムの方が好きだし、ロックの過去現在未来を感じられる。また節目にアルバム出してほしいな。




開演前のSEでは、もう解散したバンドたちの音源がかかっていた。そう、今夜のライブ会場は下北沢屋根裏があった場所。屋根裏や2010年代の数々のライブハウスのシーンが見せた夢。夢に破れたその残骸は次々と積み重なっていく。不知火ズの音楽はロックバンドの生き証人が吹き込むロックの歴史であり、魂なのだ。不知火ズと共に死ぬまでロックンロールしたい。

---ライブ詳細---
【🌊不知火ズ20周年🔥】

3/3日@下北沢ろくでもない夜(旧下北沢屋根裏)

太平洋不知火楽団㊗️結成20周年記念ワンマン

〝元祖〟ASO ROCK FESTIVAL🌋
〜ロ(ッ)クでな(お)しナイト〜

出演
太平洋不知火楽団

op19時st19時半

前売り 3300円+D
当日 6900+D