Bloc Party『Alpha Games』感想&レビュー【猥雑かつスタイリッシュ】 | とかげ日記

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●猥雑かつスタイリッシュ

ブロック・パーティ (Bloc Party) は、2003年結成のイギリスのロックバンド。本作『Alpha Games』は2022年4月29日にリリースされた6枚目のスタジオアルバムだ。

結成メンバーである4人が黒人、白人、アジア人にルーツを持っていることもあり、多様性を体現したバンドだと言われている。彼らBloc Partyの音楽の猥雑なカラフルさは、このバックボーンゆえのところもあるだろう。黒人のボーカル"ケリー・オケレケ"のいとこはレイシストに殺害されており、差別に強く反対する理由はこのエピソードからもうかがえる。

デビュー前からフランツ・フェルディナンドのライブの前座をやっているだけあって、過去にはもろにフランツっぽい曲(05年発売の2ndアルバムに収録された「Helicopter」など)もあるし、ロックンロール・リバイバル(a.k.a.ガレージロックリバイバル)の系譜で語れるバンドだと思う。音のモダンな質感にはストロークスっぽさも感じるしね。



または、ポストパンク・リバイバルの系譜でも語れるバンドだろう。本作収録曲だと、The 1975的な清らかなスネア音がまぶしい#7「Of Things Yet to Come」#11「If We Get Caught」。(The 1975はポストパンクの文脈で語られることは少ないバンドだけど)。暗いサイケデリア空間でポエトリーリーディングするボーカルの妖しさが光る#12「The Peace Offering」など、ロックンロールやガレージロックの音楽性だけでは語れない湿り気がサウンドにはある。



絵画の風景が目前に飛び出してくる感じで、様式美を飛び越えた生々しさだけど、スタイリッシュで洗練された美を感じさせる。そうでありつつ、粗さと妖しさを演出する音楽のデザインがかっこいい。スタイリッシュな猥雑さという点では、同時期に新譜がリリースされた!!!(チック・チック・チック)と共通するものがあるだろう。両バンド共に猥雑さゆえの生命力を感じる。

また、本作『Alpha Games』収録の#2「Trap」でのあけすけでぶっきらぼうなボーカルはセックス・ピストルズを僕に連想させた。この曲に限らず、奇妙でキッチュだったり、イケボ(イケメンボイス)だったり、ボーカルの表現力が多彩で素晴らしい。



このように、とてもクールでイカしたかっこいい音楽である。ただ、僕が求める音楽は単にかっこいいだけではだめで、自分にとっての意味性がなければいけない。小説や漫画に対して"これは僕の物語だ"と意味性を感じるように、音楽に対してもそう思える特別な何かが欲しい。

その点では、日本語話者である僕にとって日本語詞の曲は意味性を感じやすく有利である。聴こえてくる歌詞の言葉とメロディの輪郭が自分の心臓の形とカッチリ合えば、それだけで僕の求める音楽だ。英詞の曲は歌詞の言葉が聴き取れないので、こういうことは普通は起こらない。

(僕も英語の勉強は毎日している。ヒットした洋楽で英語を学ぶラジオ番組『ENGLISH JUKEBOX』は特にオススメだ。しかし、ネイティブの英語話者が英詞を聴いてすぐに情景が浮かぶレベルまでは到底ならない。歌詞カードを見ながらだと英詞も理解できるが、歌詞カードで理解するのは直接聴いてイメージがふくらむのとは違う。)

もちろん、英詞の曲でも特別な曲はたくさんある。ビートルズ、ウィーザー、レディオヘッドの曲など、挙げればキリがない。英語が聴き取れなくても、その歌が歌われるシチュエーションに共感したり、歌と楽器隊の演奏に酔いしれたりできる。

しかし、Bloc Partyの曲は何度聴いても自分にとって特別にならなかった。音とソングライティングのかっこよさは抜群だが、自分にとって言語の壁を飛び越えてくるまでの魅力には至らなかったのだ。

ただ、自分にとっての意味性は感じなかったが、何度も言っているように音楽としては素晴らしい。インディーロックの手つきの繊細さと、大文字のロックのダイナミズムが合わさった彼らの音楽は、ロックの歴史にとっての意味性はあるので、将来も生き残り続ける音楽だろう。

Score 8.0/10.0

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