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●2021年洋楽ベストアルバム候補
MANIC STREET PREACHERS(マニック・ストリート・プリーチャーズ≪愛称:マニックス》)が9月にリリースした通算14作目、前作から3年ぶりとなるスタジオ・アルバム『The Ultra Vivid Lament』の感想&レビュー。
ギターの残響の繊細さがモダンだと思う。メロディも強いし、僕好みの音楽だ。とにかく音が良い。そして洗練されており、確固たる世界観を持った音楽だと思う。
だが、僕にとってリアルを感じる歌詞は日本語だ。以前に僕が高く評価したDYGL(日本出身だが、こちらは歌詞が英語のロックバンド)もそうだが、僕は英語を解さないので英詞ではリアリティを感じられない。(ただ、いつかは英語が耳で分かるように目下、訓練中だ。)
しかし、ダイナミックな熱は英語でも伝わる。アルバム全体を通して何度かリピートしたが、1曲目の「Still Snowing In Sapporo」の良さが際立っている。
ここには、僕の求めるロックのダイナミズムとポップの軽やかさがあり、端正で心を打つ歌ものロックが展開されている。壮観な雪景色が広がる冷たさの中にある熱のフィーリングが、厳冬の中のストーブのように心を暖めてくれる。この一曲だけで今年の洋楽ベストアルバム候補だ。札幌の光景をこんなにも美しく描いてくれたことに日本人として感謝したい。
最近の洋楽の新譜は一曲もハマれない作品が大半なので、その反面、「Still Snowing In Sapporo」は邦楽も含めて2021年のベストソングトップ10に入るクオリティの曲だし、この曲が収録されている本アルバムは一曲で洋楽ベストアルバム候補になるくらいのポテンシャルがある。岩波書店の出版物のように正しさに満ちているが感情的な訴求力がないインディーミュージック(その道も尊いけど)や、なんの毒も匂いもフックもないポップス(それでポップスと呼べるのか?)より遥かに良い曲だと思う。
この曲ほどではないが、他の曲も良曲ぞろい。#4「Quest For Ancient Colour」は歌い出しがクイーンを彷彿とさせる。場を支配する歌唱力にシビれる。#9「Blank Diary Entry」はゲストのボーカルも含めていくらか不穏な響きがあるけど、緊張感をはらんだギターサウンドがかっこいい。
ソングライティング、ボーカル、楽器隊の実力がそれぞれ飛び抜けている。1986年にデビューした時から総合力のあるバンドであり、今も少しも衰えていない。しなびずに、しなやかな演奏をこれからも聴かせてほしい。
8.1/10.0
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