ウィーザー『Van Weezer』感想&レビュー【ハードなギターに活かされる】 | とかげ日記

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●ハードなギターに活かされる

Weezer(ウィーザー) の通算15作目となる最新スタジオアルバム。ソリッドなギターサウンドが炸裂し、ダイナミックなアレンジの"The End of the Game"で本作は幕を開ける。アルバム全体に渡ってハードロック・メタル的な意匠が貫かれている。

ハードロック&メタルといえば、Weezerのメンバーの若い頃、リヴァース・クオモ(Gt.Vo.)はKISSの大ファンだったらしい。ブライアン・ベル(Gt.)はブラック・サバスの大ファン、パトリック・ウィルソン(Dr.)はヴァン・ヘイレンとラッシュの大ファン、スコット・シュライナー(Ba.)はスレイヤーとメタリカの大ファン。

Van Weezerというアルバム名は、ドラムのパトリックが好きなヴァン・ヘイレンから取っているのだろうか。チープなデザインのジャケットもいかにもハードロックでヴァン・ヘイレンだし。


👆ヴァン・ヘイレンのベスト盤のジャケ

"The End of the Game"では、自身の人気曲"Island in the Sun"にかけて、"I'm on an island with no sun"と歌うリヴァース。アルバム一枚を通して軽快なハードロック曲が続くが、「太陽のない島にいる」というこの歌詞のような重みもちゃんとある。そして、この軽さと重みこそ、僕が音楽に求めるものだ。

YouTubeにアップされている#3"Hero"のオフィシャルMVの概要欄には、"for the stay at home dreamers,the zoom graduators,the sourdough bakers,and the essential workers"(家にいながら夢見るおれたち、Zoomで卒業式をした人々、サワードウでパンを焼く人々、そしてエッセンシャルワーカーのための曲だよ)と書かれていて、熱いメッセージに胸が熱くなる。また、このメッセージが思想の核心にある本作『Van Weezer』一枚を通して、僕はコロナ禍を生きる者として勇気づけられる気がしてくる。エレキギターのダイナミクスが生きる力を運んでくる。

曲ごとに様々な表情を持っている彼らの楽曲。#2"All The Good Ones"は、彼らの人気曲"Beverly Hills"のような開放感のあるギターフレーズを聴かせてくれる。#4"I Need Some of That"はキラーフレーズのサビメロが光るキャッチーなオススメ曲だ。最後の曲#10"Precious Metal Girl"は彼らの曲"Butterfly"のようなアコギ弾き語りの素敵な小品で癒される。

英語のリスニング能力がないため、歌詞の英語は聴き取れないのに、ナイーブな声質のボーカルやキャッチーな歌メロに愛嬌を感じる。「泣き虫ロック」と過去に評された弱気な歌詞("女々しい"という言葉はジェンダー平等の時代にそぐわないので"弱気"と表現しているのだけど、伝わるかな?)や、フロントマンのリバース・クオモのキャラクターも愛嬌を感じるポイントだ。

愛嬌やチャーミングの要素は、僕にとって音楽で大切な要素だ。amazarashiのように終始シリアスな音楽もたまには聴きたくなるけれども、愛嬌のある音楽は僕の日常の生活に溶け込んでいく。

そして、Weezerは愛嬌とシリアスのバランスが素晴らしいと思うのだ。僕の好きな神聖かまってちゃん、うみのて、ビートルズも、愛嬌もシリアスもあるバンドだ。

また、今作"Van Weezer"には愛嬌だけではなく、頼もしさも感じる。コロナ禍の現在において、この頼もしさはリスナーに安心感を与えるだろう。20年代もこの調子で駆け抜けていってほしい。

Score 8.3

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