リーガルリリー1st EP『the World』感想&レビュー●天国と地獄の間にある虹色の世界 | とかげ日記

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●天国と地獄の間にある虹色の世界

ニルヴァーナに影響を受けたと思われる轟音でオルタナティブなギターサウンド。その上に乗る、少女のような可愛らしい声で少し不思議な歌詞を歌うボーカル。もうそれだけで唯一無二のオリジナリティがあるリーガルリリーは、たたずまいからして素敵で、僕が今まで追いかけてきたし、これからも追いかけていきたいアーティストだ。

ただし、僕がリーガルリリーに一番に求めるのは、彼女たちの初期曲である「リッケンバッカー」級の名曲だ。Apple Musicでも(たぶん他のサブスクでも)、聴かれている曲のトップは「リッケンバッカー」になっていて、リスナーは欲望に素直なんだなと思う。



結論を最初に言うと、このEP『the World』に「リッケンバッカー」に並ぶオリジナル曲は無かった。

「リッケンバッカー」のようにキャッチーなメロディの収録曲は、セカオワをカバーした#4「天使と悪魔」くらい。この「天使と悪魔」の説得力ある轟音ギターカバーはこれからも聴き続けることになりそう。やはり、曲の骨格であるソングライティングが良いと、カバー曲でも良い曲に聴こえる。

しかし、フロントウーマンの"たかはしほのか"がメロディメイカーとして作るメロディは僕の感受性の鍵穴にハマらなくても、歌詞とサウンドは素晴らしい。

自分の解釈では、「地獄」を"呼吸することがすでにキツいこと"だと表現する曲である#2「地獄」と"キツくても右左を見れば天国へ行けるの?"と問う曲である#3「天国」。この2曲に救われるような思いがした。「ファンタジーは素面です」と歌われる#1「東京」から地獄と天国へは同じ水平線上にあるのだ。東京、地獄、天国から成る"the World"をナイジェリアの風が吹き抜け、たかはしほのかさんは光も闇もある東京のことをただそのままにフラットに見つめ、照明弾で照らしている。

SEKAI NO OWARIの"世界(SEKAI)"とアルバムタイトルである"the World"はリンクしている。 #4「天使と悪魔」で歌っている善悪二元論へのセカオワ的な懐疑は、リーガルリリーにも通じるものだと思う。正義と悪、天使と悪魔、それら二つの軸芯の間には、虹色を超えるグラデーションがあり、そこにも豊かな世界は広がっているのだ。そして、「天使と悪魔」のヴォーカルの最終部でフェイクを交えながら歌う"たかはしほのか"さんのヴォーカルは、虹色のように表現が豊かで成熟している。

いつか、リーガルリリーには「リッケンバッカー」を超える切実でキャッチーな歌を作ってほしい。ポップすぎる曲は避けて聴くリスナーもいるけど、自分のリスニング姿勢は"ポップであればポップであるほど良い"というものだから。「リッケンバッカー」級の名曲だらけが収録されたアルバムが出たら、そのアルバムは2020年代を代表するアルバムになるだろう。

Score 7.2/10.0





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