鈴木実貴子ズ『外がうるさい』感想&レビュー【声にも演奏にも力がある】 | とかげ日記

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●声にも演奏にも力があり、歌われている内容も問いかけとして真に迫るものだ

1作目の『現実みてうたえよばか』でも、問いかけはあったが、鈴木実貴子ズは2作目の本作においても様々な問題提起を行っている。1曲目の「問題外」からして、宗教も金銭も価値観も法律も神さまも生まれた土地も性別も感性も関係ないと歌うが、何と関係ないのかについては議論のあるところだろう。助けての声も愛しての声も届かないことに曲の主人公は怒り、悲しんでいるのだ。何に対して? それは、何も悪くないのに、誰かが捕まり、裁かれることに対して。鈴木実貴子ズは正義漢なのだ。

#2「口内炎が治らない」の「勘違い男はバンドを辞めろ お前が好きなのは音楽じゃなくて女だろ」という歌詞は数多いるバンドマンに向けた歌詞だろうか。その後に「MC もバンド名も聞き取れない ボソボソボソボソ腹から声出せよ」と歌っているが、鈴木実貴子ズほど腹から声が出ているバンドはいないと思う。腹から声が出ているだけあって、声に非常に迫力がある。大森靖子やきのこ帝国初期のように、声自体に主張がある。ガーリーではない、女性だけど漢気を感じるボーカルには、強固な意思が込められている。そこに、他の凡百のバンドにはない魅力を感じる。

#3「限りない闇に声を」も#4「夏祭り」も3分強の曲だが、5分の曲と変わらない存在感を発揮している。これらの曲に限らず、鈴木実貴子ズの曲はエレキギターの醸す存在感が良い。

#5「バッティングセンター」では、「今夜はバッティングセンターに行きたい/やるべき事も見逃して 面倒臭い事見逃して」と虚飾のない本音が歌われる。

虚飾のない本音。それこそが、鈴木実貴子ズの音楽のアイデンティティでもあるのだろう。アルバムタイトルからして、「外がうるさい」というのは本音以外の何物でもないだろう。虚飾のない本音を腹から出す声とエレキギター・ドラムの凄烈な響きで表現するのが鈴木実貴子ズの音楽だろう。

オルタナティブでフォークな音楽性は完成されていてバリエーションも限られているため、メロディ・歌詞・演奏にどこまで力があるかが勝負になる。そして、彼女らには力がある。それは剥き出し(むきだし)の本音を歌える強さが彼女たちの音楽にはあるからだ。

Live-Style Recordingと題された3曲も、宝石のように光り輝いている。ライブ演奏をそのままパッケージしたようなこれら3曲は、迫力があり、真に迫っている。ライブに行ってみたら自分も楽しそうだと思えるような録音だ。

声に力があり、演奏も迫力あるものであり、歌われている内容も問いかけとして真に迫るものであるという、三拍子そろった内容にリスナーの僕も感激した。願わくは、売れてほしい。だけど、売れるタイプの音楽ではないから無理かなぁ…。

Score 8.1/10.0