ベル・アンド・セバスチャン『Days of The Bagnold Summer』感想&レビュー | とかげ日記

とかげ日記

【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
X(旧ツイッター)ID : @yoyo0616



●「Sister Buddha」をまずは聴いてほしい

スコットランドのグラスゴー出身の7人編成バンド、ベル・アンド・セバスチャン(略称:ベルセバ)による映画『Days Of The Bagnold Summer(原題)』のオリジナル・サウンドトラック。

ベルセバの曲にはインディーロックの美意識が詰め込まれている。ベルセバの曲を少しでも好きになれるか否かは、インディーロック好きになるか否かの分水嶺であると言っても良いと思う。ベルセバの類の繊細さはメインストリームのロックとは対照的だ。スピッツの草野さんがベルセバを好きな訳も、スピッツの音楽とベルセバの音楽を照らし合わせばすぐに分かる。

ベルセバの曲では、「I Fought in a War」や「Waiting for The Moon to Rise」のようなドラマチックな曲が好きだ。この二曲が収録されたアルバム『Fold Your Hands Child, You Walk Like A Peasant』では、お気に入りの曲はこの二曲だけだった。その他の曲も繊細な作りが良いのだが、この二曲には劣る。





ついでに言えば、「Another Sunny Day」や「The Fox in the Snow」、「This is Just A Modern Rock Song」など、僕が好きなベルセバの曲は静かながらもムード豊かでドラマチックな曲ばかりだ(「This is Just A Modern Rock Song」の中盤で管楽器が情緒豊かに鳴るところとか最高じゃないですか!)。







今回の新譜にも上述したようなドラマチックな名曲があるのかが、僕にとっての焦点だった。

結論から言うと、リード曲の#11「Sister Buddha」が素晴らしい。この曲には、華々しい盛り上がりのようなものはない。淡々としたメロディを歌いながら、サビに向けて熱量をわずかずつ上げていくボーカル。この演出過多にならないでドラマチックな感じがとても好きだ。



他にも情景豊かなインスト曲も良いし、#9「Get Me Away From Here I'm Dying」のような旧譜からのナンバーも改めて良さを気付かされた。#12「This Letter」の多くを語るようなアコギの音色も良い。

一筋縄ではいかないストーリーを歌詞で語るところや、ギターサウンドはザ・スミスからの影響を色濃く受けているベルセバ。近年のザ・スミスの神格化と並ぶように、ベルセバもカルト的に人気を博している。この新譜はその人気に泥を塗らないものであることは確かだ。ベルセバを一度でも好きだったことのある方にはオススメできます。本作は映画のサウンドトラックなので、ベルセバを初めて聴く方は、他のアルバムをオススメします(特に初期には傑作が多いです!)。

しかし、アマゾンの既出レビューにもあるとおり、カジュアルなファンにとっては「Sister Buddha」の一曲だけ聴ければ、このサントラを聴く意味はないのかもしれない。僕自身もカジュアルなファンだが、昔の曲の良さを再発見するきっかけになったり、短めの曲にベルセバのベルセバらしい音楽的な良心を感じ取れたりするアルバムだった。

Score 7.6/10.0