LIFE RECORDERS『東京の空』(99年)〜昔の音楽を今聴くということ〜 | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
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ライフレコーダーズとは、高岡慎太郎(Vo&E.Guitar)、米田典久(E.Guitar)、三輪善夫(Ba)からなるスリーピースバンド。デビュー時は原英寿(Dr)もメンバー(Wikiより)。1994年に活動開始。本作は1999年の作品で、その後の2001年に解散。

フォロワーの吉田やもり君(@2012spark0920)からオフ会の時に彼らの本作をいただいた。ありがとう吉田君!

こもり気味な音響のバンドサウンドを鳴らしながら、自意識の中でナイーブに逡巡する歌を歌う、その姿勢に僕の心は共鳴を起こす。

既に解散したバンドであることに、心の距離を感じなくもない。僕はとてもお気に入りのバンド以外、解散したら音源を聴くことは少ないのだ。

音楽を通じて「現在」と繋がりたい気持ちも強い。今の文化と繋がりたいという欲求がある。音楽を聴いた時に感じるリアルタイム感は、孤独を紛らわすことができる。昔の作品を聴いても「現在」とは繋がれないし、リアルタイム感も感じない。

だが、録音作品の良さは、演奏当時の熱気が詰め込まれた音源を聴き、昔の音楽を今に感じられることだ。特に、LIFE RECORDERSの音源には、クリアーではないモコモコした音響のためか、演奏の生々しい熱を感じる。今、彼らの音楽が鳴らされているみたいに。

#1「東京の空」で、歌い始めの「今日東京で君に似た人を見かけたよ」というラインがラストでも効果的に繰り返されることにしんみりする。

#2「TODAY」のシンプルな曲構成には、ソングライティングへの自信をそこに見た。

#3「青春II(Album Version)」はタイトルの通り、青春の疾走感にあふれたアップテンポナンバー。

#4「とうめいになりたい」は「僕のこのどっちつかずの気持ちを消してくれ」という歌詞の気持ちが心に触れるように伝わってくるミドルテンポの曲。

#5「11月」を聴いていると、このアルバムの曲の主人公たちに足りないのは、前に一歩踏み出してみる気持ちなのではないかという気がしてくる。激しいギターサウンドはミッシェル・ガン・エレファントと共通する側面もあるが、ミッシェルは一歩どころか、百歩、二百歩と走り出す思い切りの良さがあった。

そして、アルバムのラストを飾るイルカ「なごり雪」カバーの激しいギターサウンドの無敵感にすっかり魅了された。

自分のどうにもならなさをアグレッシブなギターロックで歌い上げる、その回路に共感した作品だった。こういう過去のバンドが無かったことにされるのはあまりにもったいない。リスト係さんや吉田君など、過去の名盤を掘り下げるリスナー達を応援します。

Score 7.6/10.0