ふくろうず『びゅーてぃふる』感想&レビュー(2017年) | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。

びゅーてぃふるびゅーてぃふる
2,800円
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去年の9月に出たCDだが、入院中で聴けていなかった。今月初め、自分から自分への退院祝いとして、神聖かまってちゃん『幼さを入院させて』と共にamazonで購入した。クリスマス・イブにふくろうずは解散し、結果的にラストアルバムになった本作を寂しくも感激しながら聴いている。

全体に漂ういつもにも増して切なげなムードがいい。ピアノと歌声が感傷的に響く。だが、湿っぽくはない。潔さを感じるのだ。全10曲で約38分という短さにも潔さを感じるし、変化球ではなく直球のアルバムを作ったことにも潔さを感じる。また、カノンを取り入れた曲の曲名はそのものズバリ「カノン」であることも、潔さの表れだと思う。

晴れ晴れしくも感じるラストアルバムだ。そう感じる理由の一つがミキシングによるすっきりとした音像にある。この音像はかなり好み。音像を最も楽しめたのは、リード曲の「びゅーてぃふる」。サビで切り替わるリズムと景色に希望を感じる白眉の曲だ。リズムといえば、2011年に脱退した高城琢郎さんが全曲に渡ってドラムを叩いているのもポイント。

生きることと愛することをまっすぐに捉える歌詞がまぶしい。それはつまり、青春の煌めきだ。音楽的な方向性では外向的か内向的か揺れ動いたふくろうずだけど、いつものアルバムと同じように本作でも別れや青春をテーマにしていて、核になる想いは変わらなかったことを感じる。解散時に「ふくろうずは青春そのものでした」とメンバーの3人はコメントを残している。

「ただのJ-POPバンド」を標榜していたふくろうず。ふくろうずの本人達は自分達のバンドをただのJ-POPバンドだし、そうありたいと願っていたかもしれないけど、僕にとっては特別なバンドでした。忘れられないし、忘れたくない。