ゲスの極み乙女。『達磨林檎』感想&レビュー(アルバム) | とかげ日記

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2016年12月7日リリース予定だったが発売延期されたアルバムを2017年5月10日にリリース。

歌詞カードの見開きで笑っているメンバー達に癒されるのは僕だけではないだろう。昨年の12月の時点でもスキャンダルのニュースが彼らを苦しめていたはずだが、笑顔のモードで行くという姿勢が表れた写真だと思う。

さて、肝心の音楽だが、前作のダイナミズムを増した演奏はそのままに、より深みのある内容になっている。キャッチーさは前作に軍配が上がるが、内面の描写の深度では本作に軍配が上がる。前作『両成敗』の「id1」に続く本作の#5「id2」や#11「id3」は内面をえぐるように掘り下げてできた血の塊のような佳曲だ。

心の内を深く探っていくような本作の音楽を象徴するのがリード曲#6「心地艶やかに」だろう。疾走する演奏とファルセットのボーカルのサビは聴いていると、心地よくもリスナーの僕の心に傷をつけられる。

複雑な内面を描写するのにあわせ、音楽の構成もプログレのように凝っている。#8「いけないダンスダンスダンス」なんて、凝りすぎてゲスの新境地だ。しかし、どの曲も一つの曲としてのまとまりがあり、曲の構成力が素晴らしいのだ。

内面のやり切れなさや暗さを描きつつも、最後の曲#13「ゲスストーリー」で少し晴れたような気持ちになるアルバム構成も秀逸だ。

本作『達磨林檎』は流行として消費されまいという意思とメンバーの悲痛な思いから内面を深く描写した秀作だ。だが、ひょうひょうとその悲痛な思いをかわしていくタフネスも感じられて、彼らの今後がますます頼もしくなるのだ。


ゲスの極み乙女。「心地艶やかに」