メジャー11年目、初のタイアップ作品。ドラムの山口智史が持病の悪化により活動休止してからの初めての作品でもある。
今週の金曜日には地上波初登場となるMステに出演することも予定されている。最近になって地上波に初出演したBUMP OF CHICKENのような心境の変化があったのかもしれない(ラッドはバンプへのリスペクトを公言しているので影響もあったのかも?)。
タイアップするアニメ映画『君の名は。』(新海誠監督)と深く関わり合い、劇伴となる歌もの4曲と多数のインスト曲が制作され、本アルバムに収録されている。
このタイアップは、新海監督がRADWIMPSのファンであることがきっかけで実現したものだ。最初は主題歌のみを作る予定だったRADWIMPS。話が進むうちに劇伴曲全てを作ることになった。
劇伴曲について新海監督から何度もボツにされたり、「ちょうどこのタイミング(シーン)にくるように、この曲のこの音を持ってきてくれ」とリクエストされたりと、映画『君の名は。』を観ないのでは語れないアルバムではあるのだが、映画を未見で音楽だけを聴いてレビューすることも意味があるだろうと思い、レビューを『とかげ日記』に書く。
本作も歌もの、インスト含めて良い曲がそろっている。特にメロディの良さを感じる。
メロディの良さはフロントマンの野田洋次郎のソロプロジェクトであるillionでも感じた。illionでは歌謡曲的な要素をあまり加えず、趣向を凝らしたリズムと洋楽的な要素で曲を構成。しかし、メロディがJ-POPのように強く、それでいて洋楽的趣味にも添っていて、野田さんのメロディメイカーとしての抜きん出た才能を感じたのだ。
本作では、インスト曲の作曲にギターの桑原彰とベースの武田祐介も加わっている。メロディを作るのが上手いのは野田さんだけではないのだ。グッドメロディのギター、ピアノ、ストリングスが叙情的に響く。
インスト曲はどの曲もRADWIMPSのメンバーの音楽的構成力の高さを感じさせるものだ。実験的ではないが、ど真ん中のロマンチックを貫く。ファンタジーの世界を舞台にしたゲーム音楽との親和性も感じる。#10「デート」や#11「秋祭り」がこのタイトルなのに楽しく浮ついた空気がないなど、映画本編のストーリーへ想像をかき立てられずにはいられない。
歌ものの4曲は、どの曲も諧謔や皮肉もなくまっすぐだ。監督からは「とにかく真正面でド勝負してほしい」と要求されたという。#8「前前前世」の高揚感、#24「スパークル」 の美しさ、#26と#27「なんでもないや」の純粋性、どれも貴いものだ。
このアルバムを聴き終えると、一つの映画を観終わった心地になる。一つの骨太なストーリーに貫かれている。今から映画本編を観るのが楽しみでならない。
参考文献(インタビュー)『オーサム!』vol17, 2016.
前前前世