皆さんは、ご存じでしょうか?
私には、頭痛研究をこれまでずっと行ってきたにも関わらず、解けない”謎”があります。それは、1980年代にトリプタン製剤が開発され、これが臨床治験を終えて、初めて販売されたのがイギリスで1991年のことでした。
当時は、このことは日本の頭痛研究者にも注目され、どのような薬剤なのかが、医学雑誌、神経学関係の雑誌の話題となっていました。当時は、画期的な、ドラマチックに効く薬剤として紹介されており、1日千秋の思いで日本での導入が待ち焦がれていました。
ところが、現実に日本で認可されたのは、その10年後の2,000年でした。初めは、イミグランの注射薬、そして間もなく錠剤が認可され、その後は、4種類のトリプタン製剤が次々に認可され、現在に至っています。
このように、なぜ、10年間も導入までに日日が係ったのでしょうか?
ところで、コロナ・ワクチンがファイザー製薬で開発され、これが日本へ導入されるまでには、1年も係っていません。何時日本で臨床治験が行われたのかも分からない位のスピードで導入されたのは、皆さんのご記憶に残っているものと思われます。さらに、治療薬であり、抗体カクテル注射薬も、1年未満で導入されてきました。さらに、飲み薬も年内には導入されるようにも伝えられています。
さらに、今回の片頭痛治療薬、エムガルティ、アイモビーグ、アジョビ等は、米国では2018年6月に承認され、日本では2021年1月に認可され、こちらは臨床治験を正規に行った上での導入ということで、この程度のタイムラグは仕方ないのかもしれません。2年半前後です。
いずれにしても、トリプタン製剤が10年もかかったのが、私には、どうしても理解できない点です。認可されるまで患者会の会長が厚労省へ頻繁に陳情に行っていた苦労話を聴かされるほどまでに有名な話でした。
この”謎”が解けるとは思いませんが、トリプタン製剤が日本に導入される前後の状況を明らかにすることで、謎解明の糸口としたいと思います。
併せて、どなたか、この謎を明らかにして頂ければと思っております。
エルゴタミン製剤が主流の時代は・・
トリプタン製剤が出る前は、片頭痛にはエルゴタミン製剤という平滑筋を収縮させる薬(血管収縮薬)が主に使われていました。片頭痛は脳血管が拡張して起きることから、血管の平滑筋を収縮させて血管の拡張を抑えようとしたものです。
実際、この種類の薬剤には、カフェルゴット、クリアミン、ジヒデルゴット等があり、片頭痛に効果を持ち、長い間使われてきました。トリプタンが発売されるまでは、エルゴタミンは片頭痛治療の中心的な薬剤でした。
エルゴタミンは麦角アルカロイドの一種です。血管を収縮させる作用があり、片頭痛には広く用いられていました。しかし少量では若干効果が弱いので、同じように血管を収縮させる作用のあるカフェインと合剤にして、製剤として発売されています。
1921年にサンド製薬から販売され、100年近く愛用されました。
片頭痛の治療を受けたことがある年配の人なら聞き覚えがあるでしょうが、エルゴタミン製剤は、以前は「カフェルゴット」という商品名で売られていました。この薬は外国ではもちろんいまでも販売されていますが、トリプタンの発売によって儲からなくなったということで、日本では2008年に発売中止になってしまいました。
現在は、クリアミンAとクリアミンSという商品名の薬があります。
古くから片頭痛の特異的治療薬として使用されてきましたが、トリプタン製剤の登場で特異的治療としての役割は限定的なものとなってきています。
現在はトリプタンで頻回に頭痛再燃がみられる場合に、使用されています。(トリプタン製剤による薬剤乱用性頭痛に対して用いられ、現在でもなくてはならない薬剤です)。
子宮収縮作用、血管収縮作用がありますので、妊娠中は使用してはいけません。
現在、使用可能なのは、クリアミンA(酒石酸エルゴタミン1 mg、無水カフェイン50mg、イソプロピルアンチピリン300 mg )、クリアミンS(A錠の半量)の2タイプです。
エルゴタミン製剤は前兆のある片頭痛の場合、制吐剤をうまく併用することによって抜群の効果を発揮していましたが、問題は前兆のない片頭痛の場合、服用のタイミングが極めて難しく、患者さんは、痛くなってから飲んだのでは効かないので、痛くなる前に飲まなければなりません。患者さんは痛くなると大変だからと、頻繁に飲むようになります。 また、ある程度痛くなってから飲むと、頭痛が治まらないばかりか悪心嘔吐を起こします。このために、つい”先手””先手”で服用せざるを得なくなって、知らぬ間に過剰服用となって薬剤乱用頭痛を引き起こしていました。
現在では、エルゴタミン製剤はクリアミンとして残っておりますが、クリアミンの効能書きには、”頭痛治療薬”と銘打たれ、緊張型頭痛にも片頭痛にも保険適応となっていることから、一般開業医は頭痛診断がどうであれ(頭痛があれば)、安易に処方され、極端な場合は1日3回毎食後、延々と処方され、薬剤乱用頭痛を量産させていることも忘れてはなりません。緊張型頭痛の場合、筋肉への血行を悪くさせ、頭痛を増悪させます。
トリプタン製剤の問題点
日本にトリプタン製剤を認可するに当たって、厚労省は実際のトリプタン製剤の問題点を明確にさせた上で、その認可を検討することになります。
1980年代はじめに、片頭痛の治療領域にトリプタン製剤が開発され、1990年に実際に販売されて間もなくの1990年代の半ばには、既に、頻回の服用によりトリプタンによる薬剤乱用頭痛に陥りやすく、その状態は頭痛の程度が一層強いこと、そして従来の予防薬では効果が得られないことが分かり、欧米では大問題となっていました。
このような事実は、2000年に、日本にトリプタン製剤が導入される以前から、欧米では既に明らかにされ、一大問題とされていました。
その理由は、トリプタン製剤は、大半は有効時間が短いため、片頭痛発作の持続時間が長いと、1回の服用で頭痛を抑制できずに、服用回数が増えざるを得ないという宿命にある薬剤だからで、市販の鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤より以上に ”薬剤乱用頭痛を引き起こしやすい薬剤”とされています。
さらに、多くの片頭痛では、緊張型頭痛に重なった形にあるため、トリプタン製剤では、上層にある片頭痛は改善されても、下層にある緊張型頭痛の軽い頭痛までは完全に無くすことはできません。このため、ひたすら”完全に”痛みをとろうと考えることから、服用回数が増えてくることになります。このため薬剤乱用頭痛を作ることになりました。
一方、トリプタン製剤は患者のわずかに50~60%だけしか効果が見られません。
それは、心疾患のある患者や脳梗塞の既往のある患者、重症の高血圧、末梢血管障害のある患者では使うことができないからです。
しかも、それらは根本的な治療薬ではない(片頭痛を根治させる薬剤ではない)ため多くの場合頭痛は24時間以内に再発する傾向があります。
このような有効率しかないものです。
そして副作用の問題です。服用してしばらくすると、胸の辺りが少しキュッと締め付けられるようになることがあります。飲むと血の気が引いて、ノドのあたりが痛苦しくなり、肩こりがひどくなる、仕事どころではなくなるひともかなりいます。
2.000年以降のトリプタン認可後の片頭痛医療の世界
片頭痛研究の歴史
日本頭痛学会の歴史は、1973 年(昭和48 年)に第1回頭痛懇話会が発足した約40 年前に遡ります。日本の頭痛学の創始者は、加瀬正夫、喜多村孝一、黒岩義五郎の3先生です。
現在の学会を主導される先生方は、1980年代に片頭痛治療薬トリプタン系製剤が開発されて以来、1991年に、英国において全世界で初めて販売されたことに注目されていました。
以後、トリプタン製剤の動向を常に念頭におき、1962年に発表された米国神経学会の頭痛分類特別委員会の分類、さらにその後,1988年に発表された国際頭痛分類、2003年に、「国際頭痛学会による診断基準を伴う分類」の改訂分類が発表され、こうした「国際頭痛分類」を基本として、1996年に、片頭痛の克服をめざす国際的組織ADITUS が設立されたことを契機に、その後、1985年に頭痛研究会に発展しました。そして1996年に濱口勝彦初代理事長のもとに日本頭痛学会が設立され、1997年に学会としての第1回総会が福内靖男会長のもとに行われました。
とくに1988年に発表された「国際頭痛分類」を遵守されることになりました。この国際分類は、1980年代はじめにイギリスで合成されたトリプタンを意識的に評価する目的で作成されたもので、とりもなおさず、欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していたものです。
現在の学会を主導される先生方は、片頭痛研究は日本より、欧米のほうが遙かに進んでいると考えることから、片頭痛の克服をめざす国際的組織ADITUS(トリプタン製薬メーカーのアストラ・ゼネカ社が設立)から、その情報・知識を取り入れました。
このなかで「ADITUS Japan」の活動は見落としてはなりません。トリプタン製剤販売に照準を合わせ、1999年から、トリプタン製剤のひとつである”ゾーミッグ”の製薬会社アストラ・ゼネカ社が率先して、日本全国の脳神経外科・神経内科を中心とした医師への啓蒙活動というよりは宣伝活動を展開し、トリプタン製剤の導入に向けて着々と準備を進めていました。
「慢性頭痛の診療ガイドライン」
2000 年にやっと、日本に待ち焦がれたトリプタン製剤を導入すると間もなく、電光石火のごとく「慢性頭痛の診療ガイドライン」が作成されました。
”立派な肩書きの先生方でないとガイドラインの「重み」がないため、あまり頭痛に詳しいとは思われない「専門医」が登場してガイドラインの作成にあたりました。これが、後々に多大な影響を及ぼすことに・・
先述のような欧米崇拝主義の考えから背後に存在する問題点、日本人の特性などを考慮することなく、海外の文献的”エビデンス”にただ追随しているのが実情です。こうしたことから、鳥取大学神経内科グループの先生方、下村登規夫先生、松井孝嘉先生の偉大な業績がありながら、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、それまでに欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していた「国際頭痛分類第2版」を無条件に踏襲した形で「慢性頭痛の診療ガイドライン」が作成されることになりました。
この「慢性頭痛の診療ガイドライン」は、欧米のトリプタン製薬メーカーとトリプタン御用学者が作成した「国際頭痛分類」という基準を遵守・踏襲した形で作成されたことから、片頭痛治療の世界はトリプタン製剤がすべて(一色)になってしまいました。片頭痛治療薬の第一選択薬として、トリプタン製剤が据えられ、マスコミでは片頭痛の”特効薬”と誇大宣伝が繰り返されました。
そして、この「慢性頭痛の診療ガイドライン」はトリプタン製薬会社を介して、日本全国津々浦々の医療機関に広く配布されたほど徹底したものでした。
このようにして製薬メーカーが中心となって徹底した売り込み戦略が開始されました。 このため、学会をも巻き込んだ形でガイドラインが作成された点を忘れてはならない点です。いわばこの「慢性頭痛診療のガイドライン」はトリプタン製薬会社が作成したかのような印象がありました。
これが、今後の片頭痛治療・研究の方向性を決定的に左右した時点でした。
「慢性頭痛の診療ガイドライン」作成のもうひとつの目的は・・
昭和50 年代から、日本ではCTの画像検査が可能となり、脳神経疾患を診療する診療科では必須の検査機器となり、このため脳神経外科領域には必ずCTが設置されるようになりました。このため頭蓋内病変の検査が脳血管撮影を行わなくても手軽に行えるようになり、この当時からベンケーシーの影響も後押しして、頭痛患者さんは、まず脳神経外科を受診される風潮が生まれました。(これは、現在のような「頭痛外来」ができる前です)。
このようにして患者さんは「頭痛を訴えて」まず、脳神経外科を受診されます。しかし、問題の脳神経外科では、型どおり「問診・神経学的検査・CT検査」をされ、異常がなければ、「心配ありません」とただ言われ、鎮痛薬を処方され、追い返されることになります。 ここでいう「心配ありません」という意味合いは、「脳神経外科的に診て”心配ありません。手術の必要はありません”」ということであり、ここでは「慢性頭痛」が”病気として”取り扱われないことになっていました。このため、たとえ片頭痛であっても一律に”鎮痛薬の処方”でお茶を濁されることになっていました。こうした受難の時代が、「頭痛外来」が設置されるまでの約30 年近く続くことになりました。
こういった風潮というか名残はいまだに継続しているのが実情です。
こういった風潮を是正するために日本頭痛学会が主導して、トリプタン製剤が発売になった時点から「片頭痛にはトリプタン製剤という”特効薬”があります」という宣伝が大々的に展開されるようになったわけです。こういったことから、学会で作成された「ガイドライン」は、このような脳神経外科医に対して作成されたものとも言えます。こういったことがガイドライン作成の別の目的になっていました。大半の脳神経外科医は、このガイドラインに従って、片頭痛治療を行われます。
さらに、脳神経外科の先生方には、メスを捨てたロートル??の脳外科医が、現役バリバリの脳外科医を指導・啓蒙するといった茶番劇まで臆面もなく行ってきました。
このため、大半の脳神経外科医は「片頭痛治療は、もっぱら”トリプタン製剤”の処方がすべて」といった感覚しか持ち合わせていないのが実情です。
しかし、神経内科医は、トリプタン製剤出現以前から、エルゴタミン製剤を中心とした薬物療法と同時に「生活習慣の指導(セルフケア)」を謂わば「車の両輪」として行っていました。こういったことから、慢性頭痛の診療には、脳神経外科よりは神経内科医の方が長けていたはずにも関わらず、一般の方は、「頭痛は脳外科」といった流れは現在でも変わらないように思われます。これだけ、同じ「頭痛外来」と銘打っても相違があります。
こういったことから、片頭痛の場合、大半の脳神経外科関係の「頭痛外来」では、薬物療法がすべてであり、詳細な「生活指導(セルフケア)」がなされることはありません。
こうしたことから、当時の神経内科の先生方は、脳神経外科で「異常なし、心配なし」と診断されようとも、落ち着いた段階で、改めて「神経内科」を受診し、慢性頭痛(とくに片頭痛)として治療していくことが必要であると、しきりに啓蒙活動を行っておられました。
実際には、専門家は、「片頭痛は病気です。病気ですから、医療機関を受診して、片頭痛を治療して、治しましょう」と言って片頭痛患者さんに医療機関への受診を勧め、しきりにマスコミを通じて、片頭痛患者さんを病院に誘導してきました。
そして、「頭痛ダイアリー」を記載させることによって、片頭痛患者さんを拾い上げ、片頭痛発作時に、寝込むことなく「生活の質QOL」を高めて、健康寿命を長くさせましょうと、啓蒙活動を展開してきました。
頭痛専門医制度が制定
そして、2005年には、頭痛専門医制度が制定され、頭痛専門医は、日本内科学会,日本小児科学会,日本産科婦人科学会,日本眼科学会,日本耳鼻咽喉科学会,日本脳神経外科学会,日本麻酔科学会,日本救急医学会,日本リハビリテーション医学会および日本精神神経学会.日本神経学会といった各科が入り乱れた集合体で構成されてきました。
この目的とするところは、慢性頭痛では、片頭痛が最も大切なものであり、これにはトリプタン製剤という特効薬があることから、この存在を認識させるためのものです。
この頭痛専門医制度が制定された際には、医療ジャーナリストの梅田美津子さんには以下のような批判がブログ上でなされた程です。
―安易なガイドラインこそが危ない―
平成17 年5 月2 日付日経新聞に「頭痛の悩み専門医が診断」のタイトルで、「慢性頭痛」を正確に診断・治療する専門医を日本頭痛学会が認定するという内容が発表された。
「慢性頭痛」とは、脳梗塞とか脳血栓のように、深刻な病気ではないのに頭が痛い症状のことで、3 種類に大別されるらしい。ずきずきした激しい痛みを生じる「片頭痛」、肩や首筋のコリを伴う「緊張型頭痛」、決まった時期に起こる「群発型頭痛」で、最も多いのが「片頭痛」と「緊張型頭痛」の混合型だといわれる。実際、日本人の4 割が慢性頭痛で悩んでいるそうだが、緊張型頭痛などはパソコン世代にとっては日常の悩みの種だろう。
1998 年には「全国慢性頭痛友の会」が発足し、現在700 名の全国会員で構成されている。サイトには、慢性頭痛に悩む方の日記や経験があちこちにあり、その苦悩や、ときにはユーモラスな闘いぶりを知ることができる。
頭痛に限らず、万人に効く薬はないことから、結局は色々な鎮痛剤を試すことになり、医学は進歩しているといっても慢性頭痛の原因はおろか治療法さえ確立されていないのが現状である。古来から存在するのに治療法がないという点では風邪と同じということだ。
さて、記事の内容は「頭痛の専門医を頭痛医として認定する」、「慢性頭痛の診療ガイドラインを作成する」ことにより、患者の悩み解消につながるといったもの。科別ではなく、症状別のガイドラインは珍しいことから、多少は「患者中心」のように見えるが、根本的な考え方は間違っているように思える。
慢性頭痛の解消法は、「自分にあった適切な鎮痛剤を見つけ」、「ストレスや疲労などを避け」、「リラクゼーションを試み」、「頭痛と上手に付き合う」ことに尽きるようだ。さらにそれ以前に、重篤な脳血管疾患(クモ膜下出血)との鑑別を早期に行うことが絶対不可欠である。とすれば、慢性頭痛の対処に必要なのは、専門医ではなくむしろ一般医の役割であるはず、診断してもこれといった治療法がないなら(恐らくは確固とした治療法は生まれない)、ガイドラインを作っても慢性頭痛の解消にはつながらない。慢性頭痛に悩む人は、「診断」後の慢性頭痛からの開放こそを切に期待しつつ、鎮痛剤に依存する精神的ストレスから逃れたいのである。
厚労省は何かというと「学会」を持ち上げ、「ガイドライン」を作ることで安全なところに身を置くことと引き換えに、疾患の多様性と他の治療の可能性をつぶしてしまう。
ここからも、今の医療に必要なのは、専門医ではなくむしろ一般医(かかりつけ医やホームドクター)であるはずなのに、医学教育改革をせずにガイドラインばかり作ってお茶を濁しているのだ。
医学が進歩したというより、診断学のみが進歩し患者の苦しみや訴えは置き去りにされている。仮に、リラクゼーション効果を期待できる「東洋医学」「インド医学」など西洋医学以外の医療とのダイナミックな融合を図ることで、慢性頭痛に代表されるストレスが深く関与した現代病はかなり解決できるように思う。
しかし現実は、いずれの取り組みからも逃げ、重い腰をあげようとはしない。これではせっかくの症状別ガイドラインも、結局は自己満足の産物で終わってしまうに違いない。
2000年にトリプタンが日本に導入され、専門医が中心となって頭痛医療を効率化させ、患者さんの満足度を高めるために、日本頭痛学会が認定する最初の認定医が2005 年に認定されました。現在認定医数は767名を数え、全国の医師会の数(約920)に満たず、この数に匹敵するだけを増加させる予定のようです。
Headache Master School Japan(HMSJ)
2013 年3 月には、国際頭痛学会主催でHeadache Master School 2013 in Asia が東京で行われ、世界のトップエキスパート14 名(Burstein, harles,Diener, Dodick, Ferrari, Goadsby, Gobel, Guidetti, MacGregor, Purdy, Schoenen、Schoonman, Rapoport, Zagami) が来日し、頭痛医学の最新の進歩を参加者一人一人に伝授されました。
このような学会を主導される方々が、この世界のトップエキスパートとされる先生方は、いずれもトリプタン御用学者と称される先生方です。
学会を主導される方々は、これが日本の頭痛診療・教育のあるべき姿を示すものと盲信され、一昨年、学会独自のHeadache Master School Japan(HMSJ)が「日本の頭痛教育プログラム」の中心として継承されることになりました。
そして平成25年はHeadache Master School Japan(HMSJ)2015 です。これは平成25年7月26 日東京で開催されました。
このような欧米崇拝主義の考えから背後に存在する問題点、日本人の特性などを考慮することなく、海外の文献的”エビデンス”にただ追随しているのが実情です。こうしたことから、鳥取大学神経内科グループの先生方、下村登規夫先生、松井孝嘉先生の偉大な業績がありながら、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、それまでに欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していた「国際頭痛分類 第2版」を無条件に踏襲した形で「慢性頭痛診療ガイドライン」が作成されることになりました。
このようなことから、「慢性頭痛診療ガイドライン」ではトリプタン製剤が”第一選択薬”となり、これに付随した予防薬を中心とした「薬物療法」が全てとなりました。そして、これ以外のものは、すべて”エビデンスなし”とされてしまいました。
このように現在の学会を主導される先生方は、すべて外国文献をすべて鵜呑みにして、何ら検証もすることなく”エビデンスあり”とされます。そして 「国際頭痛分類 第2版」を遵守されることから、頭痛と体の歪み(ストレートネック)はエビデンスなしとされます。これもまったく検証することもなく問答無用で、断じておられます。
「国際頭痛分類 第3版β版」を”絶対的な基準”とする弊害
現在では、学会を主導される方々は、この国際頭痛分類である「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および研究の”絶対的基準”とされ、世界共通の言語とされます。
先程も述べましたように、この「国際頭痛分類」は欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していたものです。「国際頭痛分類 第3版β版」を”絶対的な基準”とすることから、トリプタン御用学者は当然のこととして、片頭痛の病態はトリプタン製剤の作用機序からだけでしか説明されないことになりました。こうしたことから、トリプタン製剤が片頭痛の”特効薬”とされ、これ以外の考え方は、一切、問答無用で排除されることになっています。
このため、「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛」という考え方は徹底して排除されることになってしまいました。
さらに、「国際頭痛分類 第2版」での改訂以来、頭痛と頸椎病変の定義が極めて曖昧になったことから、頭痛と「体の歪み(ストレートネック)」はエビデンスなしとされ、カイロプラクター・整体師・鍼灸師による施術をエビデンスなし、とされ全く評価されることはありません。これはガイドラインでもはっきり明記されています。
このように、専門家は「国際頭痛分類 第3版β版」を”絶対的基準”とすることから、緊張型頭痛と片頭痛は全く別の範疇の頭痛であり、緊張型頭痛と片頭痛が連続したものであるとの機能性頭痛一元論を否定され、「体の歪み(ストレートネック)」を否定することにより、慢性頭痛とくに片頭痛の骨組み・屋台骨を取り去り、おまけに「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である」との基本まで否定することになりました。
このようにして、片頭痛そのものは屋台骨を抜かれたことで骨抜きにされ、宙ぶらりんの亡骸だけの”理解不能な頭痛”になってしまいました。まさに、不思議で・神秘的な頭痛にされてしまい、まさしく俗人がタッチすべきではない頭痛とさえなってしまい、どなたも病態解明といった大それた考えに挑む方は輩出されることはありませんでした。
学会を主導される方々は、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤を導入したことによって、「片頭痛の治療体系は確立された」と自画自賛されます。
このため、「慢性頭痛診療ガイドライン」ではトリプタン製剤が片頭痛治療の”第一選択薬”として地位を確立し、これに付随した予防薬を中心とした「薬物療法」が全てとなりました。
診療面では、頭痛診療を担当する医師に対して、「国際頭痛分類第3版 β版」で症候論から、片頭痛を明確に定義することによって”片頭痛と間違いなく診断”して、この片頭痛に対して”トリプタン製剤を確実に処方”させるというように、「国際頭痛分類 第3版β版」をまさに頭痛診療の”絶対的基準”としました。
専門家は、こうした「国際頭痛分類 第3版β版」を巧妙に組み込んだ形の問診方法を叩き込まれ、独特な診察スタイルを構築されます。このため、その根底に何が存在しようとも一切、我関せずです。
頭痛研究の場面でも、「国際頭痛分類 第3版β版」が「絶対的な基準」とされています。頭痛研究も片頭痛が中心となり、それも各種のトリプタン製剤の作用機序の面から行われてきました。
トリプタン製剤の作用機序
トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用しているためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きく関わっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。”ストレスなど何らかの理由”でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
このように、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用していることから、トリプタン製剤が片頭痛の”特効薬”とされてきました。
基本的に、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップしています。
ところが、肝心要の「(脳内)セロトニン」が片頭痛の場合どうして低下してくるのかが現在では、専門家の間では、全く不明とされてきました。
しかし、片頭痛はミトコンドリアの機能が低下するために起きる頭痛です。
ミトコンドリアの機能が低下すれば、同時にセロトニン神経系の機能は低下し、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることによって発作が起きます。
片頭痛はミトコンドリアの機能が低下するために、片頭痛発症の根幹には「酸化ストレス・炎症体質」というものが存在し、このために、活性酸素や遊離脂肪酸が過剰に産生されやすく、このため血小板凝集が引き起こされ、これが引き金となって血小板から”生理活性物質”であるセロトニンが放出されることによって、片頭痛発作に繋がっていきます。
「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」
苦しい頭痛という痛みだけをトリプタン製剤で取り除いても、ミトコンドリアの働きの悪さは厳然として存在しており、その根底にある病態(「酸化ストレス・炎症体質」)は次第に増悪してくることになります。このことはこれまで述べたことです。
このため、自然と服用回数が増えてくることは避けることができません。このため、必然的に服用回数が増加して最終的には「トリプタン製剤による”薬剤乱用頭痛”」に至ります。このように片頭痛は悪化してきます。
現在のトリプタン製剤ですが、片頭痛の場合、効くひとには麻薬なみの絶大な効果を発揮するため、つい飲み過ぎに繋がってきます。トリプタン製剤は、大半は有効時間が短いため、片頭痛発作の持続時間が長いと、1回の服用で頭痛を抑制できずに、服用回数が増えざるを得ないという宿命にある薬剤で、市販の鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤より以上に ”薬剤乱用頭痛を引き起こしやすい薬剤”とされていますので注意が必要です。
さらに、多くの片頭痛では、緊張型頭痛に重なった形にあるため、トリプタン製剤では、上層にある片頭痛は改善されても、下層にある緊張型頭痛の軽い頭痛までは完全に無くすことはできません。このため、ひたすら”完全に”痛みをとろうと考えることから、服用回数が増えてくることになります。このため薬剤乱用頭痛を作ることになります。
このため、片頭痛診療の重鎮とされる名古屋の寺本純先生は、このような薬剤乱用頭痛の治療の難しさをこれまで訴えてこられ、特に”トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛”を改善させる難しさを強調され、”従来の予防薬”(後で述べます)では全く効かないとされ、最近ではボトックス治療による方法を提唱されます。そして、先生は、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛からの脱却にはボトックス療法しか現状ではないとされます。
しかし、その有効率は、1年以内で80%であり、残りの20%は脱却できないとされています。このように、一旦、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛に陥れば、運が悪ければ、一生、頭痛で苦しむことを余儀なくされてしまうことを意味します。
まさに、頭痛地獄の絵図そのものということです。
参考までに、寺本先生の提唱される「ボトックス治療」は現在、保険適応はなく、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛から脱却する唯一の方法でありながら、簡単に・身近な医療機関では受けることは出来ないのが現在の日本の状況です。
ですから、一旦、トリプタンによる薬剤乱用頭痛に至れば、治すことは至難の業です。 こういったことから、生活習慣の問題点を改善・是正することなくトリプタン製剤を漫然と服用してはなりません。このことを肝に銘じておく必要があります。
基本的に、片頭痛発作時にはセロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップすることによって、その効力を発揮するとされています。
しかし、肝心要の”中枢神経系でセロトニンが減少する”理由についてはまだ謎とされます。
片頭痛の患者さんは,そうでない方と違って特別に興奮しやすい状態があるのではないかとされ、このような「脳過敏」を起こす原因もこれまた、不明とされます。
そして、前兆に関連して、「大脳皮質拡延性抑制」が提唱されていますが、この「大脳皮質拡延性抑制」を起こす原因が分かっていないとされます。
その前兆のかなり前に予兆と呼ばれる症状があります。あくびが出るとか,異常にお腹がすくとか,イライラするとか,眠くなるなどの症状があってから前兆が起こり,さらに激しい発作が起こること,発作が鎮まった後も気分の変調があったり,尿量が増加したりするなど全身の症状を伴うことが分かりました。そうなると,片頭痛は脳の血管,あるいは脳だけの局所的な疾患ではないのではないかという疑問が持たれています。
このような観点から病態を説明する最大の問題点は、片頭痛が慢性化する理由が、一切、見当がつかないとされていることです。
このように片頭痛の病態をトリプタン製剤の作用機序の面から説明してきたことによって、諸々の疑問点が生まれてきているところから、最近では、脳のなかに異常のない頭痛と”定義”される片頭痛、”片頭痛発生器”というものを脳幹部付近に想定することによって、”中枢性疾患”という脳のなかに異常のある頭痛とまで、”基本的な定義”さえ覆されています。
本来なら、片頭痛は、西洋医学では「健康」「病気」のどちらの領域にもなく、東洋医学の立場からは”未病”の範疇・領域にあるもののはずです。
このように、まさに支離滅裂な状況にあると考えなくてはなりません。
片頭痛の予防の考え方も中枢神経の興奮性(脳過敏)の抑制に変化しつつあり,片頭痛の予防薬の開発目標は、皮質拡延性抑制をいかに抑える薬を見つけるかが鍵になっています。
そして、今後の新薬の開発に躍起になっている現状が存在します。
「脳過敏」の問題
「脳過敏」は、専門家によれば、生まれつきの”体質”とされていますが・・・
このなかで問題とされている「脳過敏」の原因は以下にあります。
”脳過敏・慢性化”を引き起こす要因
1.ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足
2.脳内セロトニンの低下
3.体の歪み(ストレートネック)の長期間の持続
本来、「脳過敏」の要因は上記3つにあり、これらは全て「片頭痛の慢性化」の要因になっています。このように考えるべきものを決してこのようには考えません。
すなわち、「片頭痛はミトコンドリアの機能低下による頭痛であり、このために引き起こされたセロトニン神経系の機能低下です。そして、この両者によって引き起こされるのが「体の歪み(ストレートネック)」です。これらは、専門家が「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛研究の”絶対的な基準”とした結果、全てを否定された訳です。その結果として、原因不明となっているだけのことです。まさに自分で自分の首をしめたようなもので、自業自得としか言えないはずです。
このように「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および研究の”絶対的な基準”とされることから、片頭痛診療は専ら「国際頭痛分類第3版 β版」の診断基準に従って、ただ症候論から(症状だけから)診断され、その根底に何があろうとも、片頭痛の病態をトリプタン製剤の作用機序の面からしか説明されなくなり、その結果として「脳過敏」「片頭痛の慢性化」が説明出来なくなったことから、片頭痛が「中枢神経疾患」とまでされるに至っております。さらに片頭痛は”進行性疾患”とまで”おまけ”まで付けられている始末です。この”進行性疾患”としたのは、先程の3つの要因を否定した結果にすぎません。
この中枢疾患とされる根拠は「片頭痛発生器」の存在で、この推定される部位が脳幹部ということです。脳幹部に病変があり進行性であれば、当然、”致命的”のはずです。
片頭痛が”進行性疾患”であり「中枢神経疾患」であるとするなら、単純に考えても、片頭痛は”致死的な頭痛”ということになってしまうことになります。
果たして、これまで片頭痛が直接原因で亡くなられた方がおられたのでしょうか?
このような支離滅裂な・馬鹿げた、まさに”迷走ぶり”が示されています。
片頭痛は”多因子遺伝”???
専門家は、片頭痛が単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考え、関連遺伝子の同定を行う研究が行われています。
しかし、このような関連遺伝子の同定は可能なのでしょうか?
ところが、最近になって、このように”すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく”考えていたのを、何の根拠も示すこともなく「多因子遺伝」とされ、世界的名医とされる専門家は自らの著書で、以下のように示されます。
片頭痛は遺伝的な病気の1つですが、多因子遺伝、すなわち体質の遺伝です。
受け継いだ遺伝子だけでは発症しない、生活習慣、環境の変化などが引き金となって片頭痛が引き起こされています・・
同じ多因子遺伝である高血圧症や糖尿病と同様に、生活習慣の管理が重要になるのです。 片頭痛も発症を予防し、痛みが起こらなければ治ったことになります。
片頭痛予防の第一歩は、何が自分の片頭痛の引き金になっているかを知ることです。
生活習慣で言えば、睡眠不足、あるいは不規則な睡眠時間、食事、ストレスなどが誘因です。さらに、ホルモンバランス、環境因子である天候(気圧、温度、湿度)、光、音などが密接に関係するのです。
こういったことから、自分の片頭痛を引き起こす誘因を知り、こういった誘因を極力避けることが原則とされ、このことが片頭痛の予防に繋がり、このことで「片頭痛が治った・・片頭痛から卒業できた」とされています。
しかし、このような糖尿病、高血圧といった生活習慣病は、発症前の生活習慣の問題点が永年積み重なって発症してくるものです。ですからこうした生活習慣の問題点を改善・是正することによって糖尿病、高血圧といった疾患そのものの発症を予防していくのが原則です。
そうでなければ、多因子遺伝と考える意味が無くなってしまうことになります。
このように、重大な意味合いがありながら、馬鹿げた見解を示しています。
なぜ、このような馬鹿な見解を示すのか、私達はよく考える必要があります。
片頭痛はミトコンドリアの機能障害によって引き起こされる頭痛です。
この遺伝要因にはミトコンドリアDNAが関与しています。
この遺伝要因とされる”ミトコンドリアDNA”は「ミトコンドリア活性の低さ」を意味しており、これは患者さんそれぞれ程度は異なっているはずです。
生まれつき存在する「ミトコンドリアの働きの悪さ」が存在するところに、いろいろな状況が加わってくることによって「活性酸素」が過剰に産生されます。このため、さらにミトコンドリアを傷つけることによって、ミトコンドリアの状態は変化してきます。
こうしたことは時々刻々と変化しています。さらに母親から受け継がれた”生まれつき存在する「ミトコンドリア(”ミトコンドリアDNA”)の働きの悪さ」”は各人各様であり、さまざまなはずです。
こうしたものを「遺伝子異常」として、捉えようとしていることを意味しています。
単純に考えても、このように各人各様であり、さらに状況によって、ミトコンドリアの状態は時々刻々変化しています。これまで確認されたものは、マグネシウムが異常に低下した状態が持続したために死滅したミトコンドリアの残骸を偶然発見したものと思われます。さらに、単一の遺伝子による極めて頻度の少ないものを発見したものと考えるべきです。このように考える限り、こうしたものを遺伝子異常として捉えることには無理があります。このため、関連遺伝子をすべて確認できるまでに、今後何年かかるのでしょうか?
こうした無駄な研究に、私達の税金から捻出された貴重な国家予算の一部から研究費が出ていることを考えるなら、こうした無駄な研究をすべきではなく、片頭痛を”多因子遺伝”と考え、その”環境因子”の探索を優先すべきであり、ここに指導者としての資質が問われているはずです。
これまでは、現実にこのような無駄な研究をさせていました。
さらに、学会を主導される方々は、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、結局、このような”多因子遺伝”は容認されることはありません。
こうした理由はどこからくるのでしょうか?
専門家が金科玉条のものとされるのが「国際頭痛分類第3版 β版」です。この「国際頭痛分類第3版 β版」は元を正せば、欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものです。トリプタン製薬メーカーの真の目的とすることは、製薬市場拡大の基盤として片頭痛を存続させ続けることです。片頭痛を存続させるためには、片頭痛は片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく思い込ませることが必要になってきます。こういったことから、片頭痛は”多因子遺伝”では、あってはならないことになっています。(”多因子遺伝”とすれば、片頭痛は生活習慣病そのものとなり、予防可能となってしまいます)
こういったことから、専門家が、自分の片頭痛を引き起こす誘因を知り、こういった誘因を極力避けることが原則とされ、このことが片頭痛の予防に繋がる、と言う理由です。
このようにして、「国際頭痛分類 第3版β版」には記載されてはいませんが、欧米の研究者が”多因子遺伝”の観点から考えないことから無条件に受け入れているようにしか思えません。このような”多因子遺伝”と考えておられるのが鳥取大学の神経内科グループだけで、医局講座制の確執・論理から認めないことも理由なのかもしれません。
さらに、専門家が片頭痛を”遺伝的疾患”とされる理由は「体の歪み(ストレートネック)」「食事」を全く無視されることにあります。
片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。ミトコンドリアの働きが悪くなれば、当然、セロトニン神経系の働きも悪くなります。このため連鎖的に「体の歪み(ストレートネック)」が引き起こされます。
ミトコンドリアがエネルギー産生を行い、脳内セロトニンを増やすためには、栄養素・ビタミン・ミネラルをバランス良く摂取することが必須です。
こうした片頭痛の核心に触れる「体の歪み(ストレートネック)」「食事」を全く無視されるために、片頭痛の発症要因が専門家には見えていないため、これを短絡的に”遺伝”のためとされ、”遺伝的疾患”としているに過ぎません。
これまで、鳥取大学・神経内科のグループは以下のように指摘されてきました。
片頭痛は、あたかも「遺伝」しているような「印象」はあります。しかし、その遺伝の様式は、メンデル型の”単一遺伝子異常”の優性遺伝でなく、”多因子遺伝”の様式で、親や祖父母から受け継がれます。この”多因子遺伝”とは、複数(3つ以上)の関連遺伝子をもとに、これに環境因子が加わって病気が発症してくるものを言います。ということは、”遺伝的素因”が存在しても、これに”環境因子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということです。これには先程のミトコンドリアDNAが関与しています。
このことは、”遺伝素因”が同一であるはずの一卵性双生児の場合、必ずしも2人とも片頭痛を発症することはありません。あなたの兄弟姉妹がすべて片頭痛を発症しているのでしょうか。もし、そうであれば極めて特殊なケースと考えるべきです。あなたの家族全体の食生活・食習慣に問題があるものと推測されます。
そして、これを如実に示すのは東京女子医科大学脳神経外科の清水俊彦先生の著書「頭痛女子のトリセツ」(マガジンハウス)の56頁に示されますように、母親が片頭痛持ちで、女性は結婚するまで全く頭痛を経験しなかったのに、嫁いだ途端に頭痛に悩まされるようになり、その原因が嫁ぎ先の食生活(洋食の連続)にあるとされています。
さらに、トリプタン製剤が導入される以前から、生活指導として、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、リラックスするように」とされ、これで完璧に片頭痛発作が抑制されていたことを思い出すべきです。
さらに、神経内科関係の専門医は、「片頭痛のセルフケアー自己管理」を完璧に行う限り、”9割”の方々はうまくコントロールされると豪語されていることも忘れてはなりません。
こうした2つの事実は、取りも直さず、片頭痛の大半は”多因子遺伝”であることを如実に示しているはずです。
現実に、専門家による指導でなく、患者さん自ら自分で工夫され片頭痛を克服されているという事実がこれを証明しているはずです。このような自分の体験をもとにして、多くの方々が「片頭痛改善マニュアル」を作成され、これらを実践された方々の喜びの声がネット上では多数掲載されています。
こうした事実から、片頭痛は”多因子遺伝”であるかどうかの検討は必須の事項となっているはずです。
しかし、世界的名医とされる専門家は、多因子遺伝とされる根拠を示すことはありません。なぜなのでしょうか。
このように、”謎”は深まるばかりで解明の糸口すら掴むことができません。