明けまして、おめでとうございます。
本年も、よろしく御願い申し上げます。
昨年の一番最後に、「国際頭痛分類」の3大改訂の概略を説明致しました。
ところが、持病のCOPDが悪化の一歩を辿っていたため、途中息切れがして、肝心要の部分が抜けてしまい、論旨が定まらなくなっていました。
このため、今回は単刀直入に申し上げることにしました。
世界的名医とされる専門家の”偉い”先生は、「米国では頭痛を明確に病気と捉えるのに対し、日本では“たかが頭痛”として性格の弱さや怠けているように見なしがち」と指摘されます。
その根拠とされるのが、頭痛の国際基準で、頭痛は国際基準で367種類に分類されていることから分かるように、紛れもなく”病気”です。だから世界の多くの研究者が原因やメカニズムを研究し、治療法も進歩してきたのです。このような馬鹿げたことを申されます。
これが、日本を代表とする世界的名医とされる”頭のなかみ”なのです。このために、片頭痛医療が迷走に、迷走を繰り返してきた根源があります。
片頭痛は原因不明の不思議で・神秘的な”遺伝的疾患”
「臨床頭痛学」とは、二次性頭痛といった人間の生死に係わる頭痛から、慢性頭痛という私達の肉体に起こる”数々の神秘的な”自然現象という「脳のなかに異常のない」”最も不可解な頭痛”に取り組んでいます。
とくに、慢性頭痛のなかの片頭痛では、低気圧に左右され、遙かかなたの遠方に発生した台風の影響すら受けるものがあったり、さらに閃輝暗点とか、物が大きくみえたり、極端に小さく見えたりと奇妙な眼の症状を訴えるため、神憑り的な、まさに神秘的な症状を呈し、神秘的な自然現象とされています。
これらは、生まれつきのものであり、このことから、片頭痛は、原因不明の”不思議な・神秘的・神聖な”遺伝的疾患とされ、不浄な凡人が如きが近寄ってはならず、その本態の解明などは、以ての外・”論外”とされてきました。
このように片頭痛は”不治の病”であり、一生お付き合いすべきもので、治すことなど夢のまた夢とされ、私達は、これに甘んじなければならないとされてきました。
ここで、もう一度、問題の「国際頭痛分類」の概略を提示致します。
1.国際頭痛分類第1版(初版)1988では・・
一次性頭痛
•1. 片頭痛
•2. 緊張型頭痛
•3. 群発頭痛及び慢性発作性片側頭痛
•4. 器質的病変を伴わない各種の頭痛
二次性頭痛
•5. 頭部外傷に伴う頭痛
•6. 血管障害に伴う頭痛
•7. 非血管性頭蓋内疾患に伴う頭痛
•8. 原因物質あるいはその離脱に伴う頭痛
•9. 頭部以外の感染症に伴う頭痛
•10. 代謝障害に伴う頭痛
•11. 頭蓋骨,頸,眼,耳,鼻、副鼻腔,歯,口あるいは他の顔面・頭蓋組織に起因する頭痛あるいは顔面痛
•12. 頭部神経痛,神経幹痛,求心路遮断性疼痛
•13. 分類できない頭痛
2.「国際頭痛分類 第2版」では・・
第1部: 一次性頭痛
•1. 片頭痛
•2. 緊張型頭痛
•3. 群発頭痛及びその他の三叉神経・自律神経性頭痛
•4. その他の一次性頭痛
第2部: 二次性頭痛
5. 頭頸部外傷・傷害による頭痛
6. 頭頸部血管障害による頭痛
7. 非血管性頭蓋内疾患による頭痛
8. 物質またはその離脱による頭痛
9. 感染症による頭痛
10. ホメオスターシスの障害による頭痛
11. 頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頭蓋の構成組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛
12 精神疾患による頭痛
第3部 頭部神経痛、中枢性・一次性顔面痛およびその他の頭痛
13. 頭部神経痛、中枢性・一次性顔面痛およびその他の頭痛
三叉神経痛、帯状疱疹による頭痛など
14. その他の頭痛、頭部神経痛、中枢性あるいは原発性顔面痛
3.国際頭痛分類第3版(β版)では、
第1部: 一次性頭痛
1 片頭痛
2 緊張型頭痛(TTH)
3 三叉神経・自律神経性頭痛
4 その他の一次性頭痛
4.1 一次性咳嗽性頭痛
4.2 一次性運動時頭痛
4.3 性行為に伴う一次性頭痛
4.4 一次性雷鳴頭痛
4.5 寒冷刺激による頭痛
4.5.1 外的寒冷刺激による頭痛
4.5.2 冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛
※ (アイスクリーム頭痛)
4.6 頭蓋外からの圧力による頭痛
4.6.1 頭蓋外からの圧迫による頭痛
4.6.2 頭蓋外からの牽引による頭痛
4.7 一次性穿刺様頭痛
4.8 貨幣状頭痛
4.9 睡眠時頭痛
4.10 新規発症持続性連日性頭痛(NDPH)
第2部: 二次性頭痛
5. 頭頸部外傷・傷害による頭痛
6. 頭頸部血管障害による頭痛
7. 非血管性頭蓋内疾患による頭痛
8. 物質またはその離脱による頭痛
9. 感染症による頭痛
10. ホメオスターシスの障害による頭痛
11. 頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頭蓋の構成組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛
12 精神疾患による頭痛
そして、「片頭痛の分類」として、この「分類」では、以下のように示されます。
1. 片頭痛
1.1 前兆のない片頭痛
1.2 前兆のある片頭痛
1.2.1 典型的前兆を伴う片頭痛
1.2.1.1 典型的前兆に頭痛を伴うもの
1.2.1.2 典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの
1.2.2 脳幹性前兆を伴う片頭痛
1.2.3 片麻痺性片頭痛
1.2.3.1 家族性片麻痺性片頭痛(FHM)
1.2.3.1.1 家族性片麻痺性片頭痛 I 型 (FHM1)
1.2.3.1.2 家族性片麻痺性片頭痛 II 型 (FHM2)
1.2.3.1.3 家族性片麻痺性片頭痛 III 型 (FHM3)
1.2.3.1.4 家族性片麻痺性片頭痛,他の遺伝子座位
1.2.3.2 孤発性片麻痺性片頭痛
1.2.4 網膜片頭痛
1.3 慢性片頭痛
1.4 片頭痛の合併症
1.4.1片頭痛発作重積
1.4.2 遷延性前兆で脳梗塞を伴わないもの
1.4.3 片頭痛性脳梗塞
1.4.4 片頭痛前兆により誘発される痙攣発作
1.5 片頭痛の疑い
1.5.1 前兆のない片頭痛の疑い
1.5.2 前兆のある片頭痛の疑い
1.6 片頭痛に関連する周期性症候群
1.6.1 再発性消化管障害
1.6.1.1 周期性嘔吐症候群
1.6.1.2 腹部片頭痛
1.6.2 良性発作性めまい
1.6.3 良性発作性斜頸
片頭痛の「国際頭痛分類 第3版β版」による診断基準
片頭痛は「国際頭痛分類 第3版β版」によって、その症状の上から厳密に、片頭痛と診断するための基準が定められています。
片頭痛の診断基準も細かく分ければ多岐にわたりますが、ここでは代表的な
1.前兆のない片頭痛
2.前兆のある片頭痛
の分類での診断基準をみてみましょう。
1.前兆のない片頭痛の診断基準
1.頭痛発作が5回以上ある
2.頭痛の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
3.頭痛の性状が①から④の2項目を満たす
①片側性
②拍動性
③中等度~重度の頭痛
④日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
4.頭痛発作中に少なくとも以下の1 項目を満たす
①悪心または嘔吐(あるいはその両方)
②光過敏および音過敏
2.前兆のある片頭痛の診断基準
1.頭痛発作が2回以上ある
2.少なくとも以下の 前兆が1つ以上ある
①きらきらした線や点が見える、または陰性徴候(視覚消失)を含む完全可逆性の視覚症状(閃輝暗点)
②手足や唇、舌のチクチク感および・または手足の感覚低下
①元に戻る失語性言語障害
3.少なくとも以下の前兆が一つ以上ある
①同名性の視覚症状 または片側性の感覚症状(あるいはその両方)
②少なくとも 1 つの前兆は 5 分以上かけて徐々に進展するかおよび・または異なが引き続き 5 分以上かけて進展する
③それぞれの前兆の持続時間は 5 分以上 60 分以内
現在の国際頭痛分類第3版(ICHD Ⅲβ)2)による緊張型頭痛の診断基準(一部省略)を示します。
【緊張型頭痛の診断基準(一部省略)】
A.頭痛の頻度は、
2.1:稀発反復性緊張型頭痛:1ヵ月に 1日未満 ( 年間 12日未満 )
2.2:頻発反復性緊張型頭痛:1ヵ月に1日以上14日まで(年間 12日以上 180日未満
2.3:慢性緊張型頭痛: 1ヵ月に 15日以上 ( 年間 180日以上 )
B.頭痛は 30 分~ 7 日間持続する (稀発反復性、頻発反復性)
(慢性緊張型頭痛の場合は、頭痛は数時間-数日間、または絶え間なく持続する)
C.以下の4つの特徴のうち少なくとも 2 項目を満たす
1.両側性
2.性状は圧迫感または締めつけ感 ( 非拍動性 )
3.強さは軽度~中等度
1.歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D.以下の両方を満たす
1.悪心や嘔吐はない
2.光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
E.ほかに最適なICHD-3の診断がない
このように、稀発反復性緊張型頭痛→頻発反復性緊張型頭痛→慢性緊張型頭痛へと移行していくと考えられます。
このように3世代にわたって「国際頭痛分類」は改訂を重ねてきました。
先程の、頭痛は病気だという論点に話を戻すことにします。
西洋医学をもとにするアメリカ医学では、健康か病気かの2つしかありません。
二次性頭痛を「病気」とすることは当然ですが、ここでは脳のなかに異常のない一次性頭痛(慢性頭痛)までも、「病気」としていることが問題にされなくてはなりません。
頭痛は国際基準で367種類に分類されていることから分かるように、紛れもなく病気です。だから世界の多くの研究者が原因やメカニズムを研究し、治療法も進歩してきたのです。このように一足飛びに論理の飛躍がありますと、理解できなくなります。
結局、国際頭痛分類第1版(初版)1988は、トリプタン製剤が開発された時に、治験対象者を決めるために作成された片頭痛の診断基準です。
そして、現在の「国際頭痛分類第3版 β版」の真の目的とすることは、片頭痛を明確に定義することによって”片頭痛と間違いなく診断”して、この片頭痛に対して”トリプタン製剤を処方する”ためのものです。これが一番の目的でありここが大切な点です。
このように、原因がまったく不明でありながら、寝込むほどの激しく辛い頭痛が、トリプタン製剤で、抑制することが可能になったことから、治療可能”疾患”として、”病気”とまでに昇格しただけのことでしかありません。
本来であれば、「国際頭痛分類 第3版β版」という「国際頭痛分類」診断基準の上での”病気”であって、現実の”病気”ではありません。
さらに、この世界的名医とされる先生は東洋人でありながら、東洋医学の知識に欠けるため、本来、片頭痛は東洋医学でいう”未病”の段階に位置するものを、敢えて「病気」と考えているだけのことであって、“たかが頭痛”として性格の弱さや怠けているように見なしがちであることを諫めておられます。このようにして、自分の無知をひた隠しに隠されます。決して、未病とは考えることはありません。それは、慢性頭痛とは何たるかが理解されておらず、自然治癒力といった概念そのものが欠如しているだけのことでしかありません。このように無知そのものをあからさまにされているだけのことです。
要するところ、単純に、二次性頭痛も、一次性頭痛も一緒くたにしているだけのことで、何のための「国際頭痛分類 」なのかの意義を弁えていないことを意味しており、少なくとも科学者としての専門家のするべきことではないということです。これが、世界的名医の考え方であり、お粗末なものでしかありません。
トリプタン製剤導入後・・
2000年に日本にトリプタン製剤が導入されて以来、多くの専門家から片頭痛を中心とした一般の啓蒙書が多数出版されてきました。
その一部を挙げてみれば・・
立岡良久:頭痛退治読本。悠飛社 2005
清水俊彦:頭痛外来へようこそ、(保健同人社)、2005
北見公一:ようこそ頭痛外来へ。 青海社 2005,
山王直子.頭痛治癒マニュアル、ルネッサンス・アイ発行、2008年
寺本純:群発頭痛を治す.講談社 2009
大和田潔:新版頭痛:新水社2009
寺本純:群発頭痛は頭痛診療能力の試金石.頭痛クリニック3 診断と治療社 2009
寺本純:こうして治す片頭痛 薬物乱用頭痛といわれたら 講談社 2010
長島正:頭痛を治す80のワザ、保健同人社 2010
大和田潔:「慢性頭痛の治し方」「保健同人社・暮らしと健康」2011年3月号
永関慶重:頭痛クリニック開院, 悠飛社 2011
竹島多賀夫:頭痛解消 パーフェクトガイド.東京書店 2011
これらは、「国際頭痛分類 第2版」を基にして、すべて作成されています。
ここでは、「臨床頭痛学」とは、二次性頭痛といった人間の生死に係わる頭痛から、慢性頭痛という私達の肉体に起こる”数々の神秘的な”自然現象という「脳のなかに異常のない」”最も不可解な頭痛”に取り組んでいます。
とくに、慢性頭痛のなかの片頭痛では、低気圧に左右され、遙かかなたの遠方に発生した台風の影響すら受けるものがあったり、さらに閃輝暗点とか、物が大きくみえたり、極端に小さく見えたりと奇妙な眼の症状を訴えるため、神憑り的な、まさに神秘的な症状を呈し、神秘的な自然現象とされています。
これらは、生まれつきのものであり、このことから、片頭痛は、原因不明の”不思議な・神秘的・神聖な”遺伝的疾患とされ、不浄な凡人が如きが近寄ってはならず、その本態の解明などは、以ての外・”論外”とされてきました。
このように片頭痛は”不治の病”であり、一生お付き合いすべきもので、治すことなど夢のまた夢とされ、私達は、これに甘んじなければならないとされてきました。
これらのことが全て、この当時に出版された片頭痛の一般啓蒙書の共通した基本的な考え方になっています。
そして、片頭痛は東洋医学でいう”未病”の段階にあるはずのものが、「国際頭痛分類 第2版」に従って、”病気”として扱われています。本来、健康か病気かの2つしかない、西洋医学では、”未病”といった領域はこの世には存在せず、あくまでも「国際頭痛分類 第2版」という”頭痛分類”の世界での”名称”でしかない、ということです。殆どの著者は、この点を誤解され、片頭痛が、あたかも実在するかのごとく錯覚して書かれたものです。
このような単純な”過ち”を専門家自身の手で拡散させた責任は極めて重大と思われます。
書かれる先生の専門分野が異なれば、自ずと書き方も異なってくることになります。このため、実在しない片頭痛を架空の世界として描かれるため、一般読者には余り訴えかけてくるものはありません。チンプンカンプンの世界でしかありません。特に、心療内科の先生の論説は難解でした。
不幸なことに、どなたからも、東洋医学流に”未病”という論点で、片頭痛を含め慢性頭痛を論ずる専門家はどなたもおられません。このため、在りもしない片頭痛をあたかも実在するかのごとく記述されるために、どなたからもコンセンサスが得られることはありませんでした。
このため、次第に、啓蒙書の書き方もエスカレートし、「〇〇トリセツ」、「新型頭痛 〇〇症候群」なるものも出てくることになり、まさに末世をみる思いでした。
そして、片頭痛は、原因不明の”不思議な・神秘的・神聖な”遺伝的疾患とされながらも、最後の落としどころは必ず、トリプタン製剤が救世主のごとく出現してくることです。
要するところ、こうした啓蒙書の出版の目的は、片頭痛の原因は分からないものの、トリプタン製剤で、辛い3日間も寝込むほどの激痛が緩和・抑制できるようになったと、自画自賛をすることに、その真意があったようです。極めて多くの専門家が当時は出版されましたが、すべての専門家に共通した考え方であり、行き着くところはトリプタン製薬メーカーの宣伝を目的とした、私達を愚弄するような出版物でしかなかったということです。痛みさえ抑制すれば、万事が解決したと考える風潮を植え付ける役割しかなかったということで、お粗末なものでしかなかったということです。
このように概観してみますと、日本の頭痛の専門家とは一体何なのでしょうか?
このような専門家が、頭痛医療に君臨し、頭痛学の進展を阻害した張本人であることを私達は、決して忘れては成らないことです。
こうしたことが新春のトップを飾る記事になること自体、この世の末と表現せずに、何と言い表せばよいのでしょうか???