これまで、専門家による食事指導は一般の々向けの片頭痛の啓蒙書にわずか記載されていただけで、学会の作成される「慢性頭痛診療のガイドライン」には全く掲載されることはなく、わずかマグネシウムの補充とビタミンB2が”楊子の褄”程度に記載され、片頭痛を誘発させる食品を避けることが主眼になっていました。
食事を抜くのはNG 空腹が頭痛を招く
栄養バランスのとれた食生活は、目指すべきゴールです。栄養素、ビタミン、ミネラルをバランスよく過不足なく摂取することが原則です。そうした上での注意点です。
まずは、食の内容を考える前に、食事の時間帯を見直してみましょう。
一番避けたいのは食事を抜くことです。血糖値の下がった空腹状態は、片頭痛が起きやすい状態です。イスラム教徒やユダヤ教徒が断食をすると片頭痛が起こり、食事をはじめるとよくなることからも明らかです。
最近、朝食抜きの子供が増えて問題になっていますが、勉強の能率ばかりでなく頭痛にも影響します。たとえば、午前中に体育がある日などはとくに、朝食抜きではお昼までおなかがもちません。そこで空腹から頭痛を起こし、保健室に行くというパターンを繰り返すのです。
休日に朝食を抜いてブランチですませる人が増えていますが、これも血糖値を下げますので、朝、頭痛を起こす引き金になっている可能性があります。
極端なダイエットは頭痛を誘発する
最近の若い女性で、ダイエットをしたことがない人を探すのは至難のわざです。きちんと3食とって運動もするというダイエットならいいのですが、なかには、断食したり、食事といっても食べるのは1つの食品ばかりだったり、いっさい炭水化物はとらないなど、極端なダイエットに走る人もいます。とくに、頭痛持ちにとって、炭水化物を抜くのは最もよくない方法です。糖の一種であるグルコースが減って、頭痛を誘発してしまいます。
また、長期間にわたるダイエットで貧血になると頭痛の回数が増えます。
ダイエットの方法を間違えて、脂肪の代わりに頭痛がくっついてきた、なんてことにならないように気をつけて下さい。
積極的に摂取したいビタミンB2
医学調査によって片頭痛の予防効果ありと分かっているビタミンB2
ビタミンB2は 、医学調査によって片頭痛の予防効果があると分かっている栄養素です。 片頭痛はミトコンドリアという細胞内呼吸をつかさどる細胞内器官の機能異常が関与している可能性があり、ビタミンB2はそこに作用して予防効果を発揮するとも考えられています。
玄米や大豆のほか、緑黄色野菜もおすすめ
じつは、片頭痛の予防効果があると言われているのは、1日に 400 mg のビタミンB2を摂った場合です。ところが、食事で摂れるビタミンB2は 1 ~ 2 mg 程度です。そこで、なるべく意識的にビタミンB2がたくさん含まれる食品をとってみて下さい。
多く含まれる食品には、玄米、胚芽米、大豆、納豆、うなぎ、豚肉、レバー、卵、牛乳、チーズ、ごまなどがあります。
とくに、玄米や発芽米は、最近注目の食材です。スーパーなどで簡単に手にはいるので、毎日のご飯に混ぜたりして気軽に取り入れてみてはいかがでしょう。
また、ほうれん草などの緑黄色野菜にもビタミンB2、が含まれています。
緑黄色野菜は貧血の予防にも効果的ですから、積極的に食事に取り入れましょう。というのも、片頭痛持ちに貧血がありますと、頭痛が増えると見られているからです。
なによりこれらの食品は、片頭痛に限らずからだによいものです。
大豆製品や緑黄色野菜などは抗酸化作用も期待できるようです。
マグネシウム不足は頭痛になりやすい
細胞膜を安定させる効果 大豆食品に多く含まれる
マグネシウムには細胞膜を安定化させる働きがあります。そしてビタミンB2同様、医学調査で、片頭痛の予防効果があると発表されています。
マグネシウムを摂取しますと、痛みの刺激に対して強くなります。また、細胞膜が安定することにより、片頭痛が起こりにくくなると考えられています。
マグネシウムが多く含まれる食品群はいろいろありますが、なかでもオススメなのは、含有量の多い大豆製品です。豆腐や納豆など、近年のダイエット特集でもおなじみの食品です。また、大豆イソフラボンはコレステロール低下作用があり、女性にはうれしいことばかりです。
1,2カ月では効果は現れないかも知れませんが、健康のためにも日々積極的に摂るように心がけて下さい。そのうち片頭痛も起こりにくくなってくるでしょう。
●マグネシウム含有食品の決定版 ”ひじき”と”黒豆”が決定版です。
3食バランスよく食べれば十分補える栄養素
最近はサプリメントも様々な種類があり、服用されている方も多いと思います。
アメリカでは、マグネシウム、ビタミンB2、フィーバーフュー(頭痛に効果があるハーブ)の3種類を同時に摂取できるサプリメントが発売されていて、取り寄せて飲む人もいます。
けれども、いくら効果があるからと言って、あまりサプリメントだけに頼ることも問題です。とくにマグネシウムは、3食しっかり食べていれば、食事だけで十分に補える栄養素なのです。大事なことは、バランスよく、さまざまな食品を摂取することです。
そして、あの食品はいい、これは食べちゃダメと決めつけるのではなく、食事すること自体をもっと楽しむことが大切です。
貧血は頭痛の回数を多くする
片頭痛持ちは貧血になると頭痛が増える
片頭痛には、マグネシウム、ビタミンB2といわれていますが、じつは鉄分もとても重要な栄養素です。片頭痛持ちの人は、貧血になると頭痛が増えるからです。
一般的に成人女性は 15 ~ 20 mg の鉄分が必要と言われています。女性が気を付けたいのは鉄欠乏性貧血です。月経、妊娠、授乳により鉄分が失われますので、男性よりも摂取所要量が多くなっているのです。
たんぱく質、ビタミンC、葉酸、ビタミンB12を
貧血の人は、たんぱく質、ビタミンC、葉酸、ビタミンB12を含む食品を積極的に摂取してください。これらの食品からは、鉄分そのものだけでなく、鉄分の吸収を促す成分や、ヘモグロビンを作るのに必要な栄養素を補うことができるのです。
めまいや立ちくらみだけが貧血の症状ではありません。
頭痛の回数が増えた人は一度、貧血の検査を受けてみるのもいいでしょう。
神奈川歯科大学の五十嵐久佳先生が「アスピリンカフェのレシピ」という本を出されています。
また、ネットで、「片頭痛 レシピ」をキイワードで検索されれば、多くのレシピが出てきますので、参考にして下さい。
食事から考える頭痛治療法「MBT」
攻撃物質・分子 含有する食品群
ビタミンC いちご、じゃがいも、緑茶、みかん、緑黄色野菜
ビタミンE 大豆、うなぎ、落花生
ビタミンA にんじん、ほうれん草、バター、チーズ、牛乳、卵黄
ビタミンB群 豚肉、大豆、うなぎ、ゴマ、卵、緑黄色野菜
マグネシウム ほうれん草、柿、大豆製品、魚介類
トリプトファン 大豆製品、卵黄、牛乳、ゴマ
以上のような食材を考慮すれば、和食を中心とした食生活がお勧めです。
魚介類、大豆や大豆製品、野菜など、伝統的な和食に多用される食材には、血管拡張作用がありません。一方、片頭痛の頻度を減らす成分は無理なくとれますので、安心して食べられます。
海のものは頭痛予防成分がたっぷりで、魚介類は一般にビタミンB2 を豊富に含んでいます。大豆や大豆製品、ひじきなどの海藻類はマグネシウムが豊富です。いずれも片頭痛の頻度を減らす作用が期待できます。
ビタミンB2 の多い食品は、レバー類、うなぎ、魚卵、いわし、牛乳、ヨーグルトで、マグネシウムが多い食品では、大豆、大豆製品、魚介類、海藻などがあります。
野菜やイモ類、豆類などには食物繊維が豊富です。食物繊維は血糖値やコレステロール値を低下させる作用が期待できます。血管拡張作用とは別のメカニズムで、血管のすこやかさを保つ働きが期待できます。
東京女子医科大学の清水俊彦先生が「頭痛女子のトリセツ」(マガジンハウス)の中で、以下のような興味深い記述をされています。
もともと母親が頭痛持ちだったのですが、本人は今まで全く頭痛というものを経験したことがなかったある女性がおられました。
嫁いだ先では、旦那さんを含めて、おじいちゃん、おばあちゃん・・家族みんなひどい頭痛持ちの家系でした。ところが頭痛の経験のなかった彼女が、嫁いだ途端にひどい頭痛に悩まされるようになり、私のところへ来たのです。
話を聞いてみると、嫁姑の争いもなく生活環境的にはストレスも全くなく、特に問題はありませんでした。もしかして「片頭痛は伝染する病気なの?」といった疑問も湧いてきます。
が、実はそうではありません。さらに話を聞いてみると、この嫁いだ先の食生活に問題があることが分かりました。ほぼ毎日、洋食の連続。彼女は、もともと母親と同じ片頭痛を起こすかもしれない”遺伝素因”を持っていました。そこへ、血管拡張物質を多く含んだ毎日の食事が刺激となり、ついに脳の血管が耐えきれず、片頭痛を発症してしまったというわけです。
このようなことを一般の片頭痛の啓蒙書では一部記載されるものの、「慢性頭痛診療のガイドライン」に記載されることはまったくありません。
このため、広くこうした知識が一般的になることはありませんでした。
片頭痛を誘発させる食品
仕事帰りにバーに立ち寄り、チーズやサラミ、オリーブオイルをたっぷり使ったアヒージョをつまみながら、赤ワインをグビグビ……。ありがちな光景ですが、「頭痛」にとっては最悪のパターンです。
頭痛持ちはもちろん、普段はなんでもない人でも、“頭痛によくない食品”を摂取しすぎると痛みを引き起こす要因になり得ます。頭痛を誘発しやすい食品を挙げておきます。
■赤ワイン
赤ワインやロゼワインには、血管拡張作用がある「ポリフェノール」が豊富に含まれていて、頭痛を誘発しやすい食品の代表といわれます。また、オリーブオイルにもポリフェノールが多く含まれています。
■チーズ
同じく血管拡張作用がある「チラミン」という物質が豊富に含まれています。とりわけ、長期間熟成させたチェダーチーズなどの高級チーズにはチラミンが多いのです。チーズや上記のオリーブオイルをたっぷり使ったイタリア料理を食べる時は気をつけましょう。
また、バターやヨーグルトなどの発酵乳製品、赤ワインやビール、チョコレートにもチラミンが多く含まれています。他にも、みかん、オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘(かんきつ)類、タラコ、スジコ、そら豆、鶏レバーなども多いのです。居酒屋やバーで一杯飲む時は、食べ合わせに要注意です。
■ハム、サラミ、ソーセージ
発色剤として使用されている亜硝酸ナトリウムに血管拡張作用があります。
■食品添加物
うま味調味料に使われることが多い「グルタミン酸ナトリウム」も血管を広げます。中華料理、加工食品、スナック菓子が好きな人は気をつけましょう。
■ダイエット食品
アミノ酸の一種である「アスパラギン酸」に血管拡張作用があります。脂肪の燃焼を助けるサプリメントなどに多く使われています。
こうした食品を口にしただけで、必ず頭痛が起こるわけではありません。しかし、食べる量や回数が多かったり、重複して食べすぎたり飲みすぎたりすれば、それだけ頭痛を引き起こしやすくなります。
■季節や体調が絡む最悪パターンも
季節の変わり目や天候不順による気圧や気温の変化、ホルモンバランスや生活リズムの変化も頭痛を引き起こす要因になります。そうした危険因子がいくつも重なっているタイミングで頭痛を誘発する食品を食べれば、さらにリスクが高くなります。
また、休日は日頃のストレスから解放され、ただでさえ血管が緩んでいます。そこに寝すぎが加わると、さらに血管が拡張して頭痛を起こしやすくなります。寝すぎて頭が痛くなるのはそのためです。
週末に居酒屋やバーで頭痛を誘発する食品をたくさん飲食した後、休日は昼まで寝ているというパターンは最悪です。危険因子が2つ以上重なれば、まず間違いなく頭痛を引き起こします」
片頭痛に悩んでいる人はもちろん、そうでない人も日頃から“頭痛によくない食品”を意識しておきましょう。
このように片頭痛を誘発させる食品を避けることに主眼が置かれています。