これまで、肉・牛乳(乳製品)・卵は、栄養価の高い食品と考えられてきました。これらの食品はスタミナをつけ、欧米人のような頑強な体をつくると言われ、積極的に摂るように勧められてきました。
肉・牛乳・卵は、まさに「欧米型食事」を形成する中心的な食品です。必須アミノ酸を含む食品は、私たちの健康維持のためには不可欠です。そして肉や牛乳・卵などの動物性食品には、この必須アミノ酸が豊富に含まれ、理想的なタンパク源となっています。従来の栄養学では「完全タンパク質食品」と呼ばれ、重要視されてきました。
しかし科学の最前線にある生化学栄養学・現代栄養学は、これまでの常識を覆し、動物性食品の摂り過ぎによる、さまざまな弊害を明らかにしています。「タンパク質の過剰摂取の害」を、科学的に明確にしています。
動物性タンパク質の過剰摂取
穀類・豆など植物性のタンパク質を含む食品には、食物繊維や炭水化物なども多く含まれています。そのためたくさん摂っても、タンパク質の過剰になるほど食べ過ぎるようなことはありません。一方、肉類などの動物性食品を多食すれば、簡単にタンパク質の過剰摂取を招いてしまいます。
現代栄養学では、タンパク質の必要量の目安を、大人では体重1kgにつき、1日に0.8~1gとしています。つまり体重60kgの人では、48~60gが適量ということになります。 現在アメリカ人のタンパク質の平均摂取量は約90gですから、およそ体重90~110kgの人の必要量に相当する量を摂っていることになります。これでは、いくら体の大きいアメリカ人であっても過剰摂取と言えます。
ところが1988年度の厚生省(当時)の調査では、日本人の大人のタンパク質の摂取量は、およそ80gにものぼっています。アメリカ人の体格に比べ圧倒的に小さな日本人が、ほぼアメリカ人並にタンパク質を摂っているのです。必要量の2倍近く摂っていることになります。アメリカ人でさえも摂り過ぎなのに、最近の日本人は、それ以上に過剰摂取に陥っているということです。(※タンパク質の摂取源から見たとき、アメリカ人に比べ日本人は植物性食品からの摂取が多いのですが、現在では半分以上を動物性食品から摂っています。)
大腸ガンの原因となる
肉の過剰摂取に、食物繊維の不足が加わって「大腸ガン」が引き起こされると言われています。動物性タンパク質を大量に摂ると、食べたものが十分に消化・吸収されないまま大腸に至り、腐敗を起こすようになります。そして腸内環境が悪化し、硫化水素・インドール・メタンガス・アンモニア・ヒスタミンなどの多くの毒素・発ガン物質がつくり出されるようになります。こうした強烈な組織毒が、人体の老化を早め、ガンをはじめとする多くの成人病を引き起こすことになるのです。
さらに肉に含まれる大量の脂肪によって、いっそう腸内環境が悪化し、発ガン物質が多量につくられるようになります。加えて食物繊維の不足が、発ガンを促進することになります。間違った食事により腐敗し、毒素をため込んだ“便”が長時間にわたって腸内にとどまることで、発ガン物質の吸収が高まってしまうのです。肉食の増加にともない、大腸ガンは確実に増え続けています。
アレルギー反応を引き起こす
タンパク質過剰摂取の弊害の1つがアレルギーです。アミノ酸に分解されていない大きな分子のタンパク質(未消化タンパク質)が、腸壁から吸収され、血液中に運ばれることがあります。そうした未消化タンパク質が免疫系によって「異物(アレルゲン)」として認識されると、アレルギー反応が引き起こされます。そして、かゆみや湿疹・腫れ・くしゃみなどの症状が現れるようになるのです。アトピーや喘息には、こうした「食物アレルギー」が大きくかかわっています。
現代人が好む肉や牛乳・卵は、アレルゲンになりやすい食品です。日本人はもともと穀菜食民族で、穀類や豆類・魚からタンパク質を摂ってきました。それが短期間のうちに、大量の肉や牛乳を摂るようになったのですから、体はそれをうまく処理することができません。
高タンパク食品は、それ自体がアレルゲンになるとともに、腸管(腸壁)の透過性を高め、さらに未消化タンパク質を引き込んでしまうことになります。多くの現代人は動物性のタンパク質を多食することによって、腸壁のバリアー機能を弱らせています。特に子供の場合は腸が十分に発達していないために、深刻なダメージを受けることになります。こうしたことが繰り返され、腸の炎症やむくみ・下痢などが起こり、いっそうアレルギーがひどくなるのです。
最近、大腸炎やクローン病といわれ、腸の炎症や潰瘍・下痢などに苦しむ人々が増えていますが、動物性タンパク質の過剰摂取が、その大きな原因となっています。
カルシウムの喪失と、骨と歯の弱体化
大量に摂取され血液中にあふれたタンパク質(アミノ酸)は、最終的には尿として体外に排泄されることになりますが、その過程で消化器系全体や、肝臓・腎臓に負担をかけることになります。過剰なアミノ酸が分解されると、毒性の強い窒素残留物(アンモニア)が生成されます。それは肝臓で処理され、無毒な尿素に転換されます。そして腎臓の働きを通じて、尿として排泄されることになります。このようにタンパク質を多量に摂ると、解毒の働きをする肝臓と、排泄を担う腎臓に、大きな負担をかけることになるのです。
尿素が増えてくると、それを尿として流し出すために、体は多くの水分を必要とします。 そして尿と一緒に、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類も排泄されてしまうことになります。尿素の排泄がスムーズに行われないと有害な尿酸が生成され、関節にたまって痛風を起こすことになります。(※こうした要因以外に、痛風の発症にはストレスが大きくかかわっていると言われています。)
また大量のアミノ酸が分解されると、血液は急激に酸性に傾き、それを中和するためにカルシウムやマグネシウムが必要とされます。それらが血液中に不足していれば、骨や歯から溶かし出して補うことになります。
さらに肉類は典型的な酸性食品で、カルシウムに対するリンの比率はおよそ50倍にもなっています。血液中のカルシウムとリンの比率は1:1に保たれていなければなりませんが、肉を多く摂ることで、そのバランスが大きく崩れてしまいます。その結果、血液中の酸・アルカリ濃度を調節するために、いっそう骨や歯からカルシウムが溶け出すことになります。
このようにタンパク質を大量に摂ることによって、カルシウムなどのミネラルが失われ、骨の弱体化が急速に進行することになります。肉を多食する先進諸国では、骨粗しょう症が多発しています。日本においても、動物性タンパク質の摂取が増えた昭和30年代以降、骨粗鬆症や骨折など、骨の異常が急増しています。
※肉の大量生産と汚染の問題
今、私たちが食べている牛肉は、牧場でのんびりと草をはんで育った牛の肉ではありません。その大半が工業製品と同じように、大量生産システムによって飼育された牛の肉なのです。それは豚肉・とり肉も同様です。
家畜たちは、終日、身動きもままならない環境に置かれ、ただエサだけを与えられ飼育されています。それでは病気になるのは当たり前です。そこで病気を防いだり肉質をよくするために、大量の抗生物質・ホルモン剤がエサと一緒に投与されることになります。現在では、そうした化学薬剤や耐性菌が肉の中から検出されることは、日常茶飯事となっています。
平成14年度の横浜衛生局の食肉検査統計では、牛と豚の検査頭数の約73%に異常が見られ、肉の一部が廃棄処分になっています。つまり家畜の大半が病気だということです。そして、その病気の家畜の肉を、国民が食べているということです。
数年前から、ヨーロッパやアジアを中心に狂牛病や口蹄疫が大流行してきました。また2002年秋には、日本でもついに狂牛病が発生し大騒動になりましたが、それは、家畜という生命体を異常に扱った結果なのです。
肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、片頭痛にどう影響するのか
肉・牛乳・乳製品、これらにホルモン剤(エストロゲン様環境ホルモン)が含まれている可能性があり、本来月経期間中はエストロゲン濃度が低いはずですが、肉・乳製品・環境ホルモンの摂取でエストロゲンが高濃度になると、マグネシウムの体内濃度は低下します。
またタンパク質を多量に摂ると、解毒の働きをする肝臓と、排泄を担う腎臓に、大きな負担をかけることになります。尿素が増えてくると、それを尿として流し出すために、体は多くの水分を必要とします。そして尿と一緒に、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類も排泄されてしまうことになります。こういったことから、マグネシウム不足を引き起こすことになり、マグネシウム不足は片頭痛悪化の元凶となってきます。
また、高脂肪・高タンパク質食品に偏った食生活を続けると、カロリーのとり過ぎとあいまって、「SOD」(スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシダーゼ」、「カタラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性に必要不可欠なマンガン、鉄、銅、亜鉛、セレンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。結果、活性酸素の発生が抗酸化作用より常に優位な状態、いわゆる「酸化ストレス」になり、酸化ストレス・炎症体質を形成してくることになります。
肉類や乳・乳製品といっだ動物性タンパク質”たっぷりの食事は、腸内環境を悪くします。腸内の悪玉菌の大好物は、肉などたんぱく質や脂肪を多く含む食品です。
悪玉菌はたんぱく質やアミノ酸を分解し、悪臭のする有害物質を作り出します。
肉類は悪玉菌の格好のエサです。この点を忘れてはなりません。このようにして、酸化ストレス・炎症体質を増悪させることになります。
肉食の多い欧米人の片頭痛は日本人に比べ、強度なことは、ここに原因があります。
「セロトニンを増やすためには、トリプトファンをたくさん含んでる食べものをとればOK」と思われている人も多いと思われます。
セロトニンは「トリプトファン」というアミノ酸を原料としてカラダのなかでつくられます。腸や血液に含まれる大部分のセロトニンは、脳に入っていきません。つまり、単純にトリプトファンが多い食べもの、たとえば「牛レバーやバナナをせっせと食べよう」なんて本や雑誌を見かけることがありますが、実際にそうしたからといって脳内セロトニンが単純に増えるわけではありません
腸内や血液中のセロトニンは脳に入っていきませんが、トリプトファンはちゃんと脳に入っていくことができます。ですから、トリプトファンをたくさん取り込むことができれば、脳内セロトニンも充分につくることが可能になります。
しかし、トリプトファンが通る場所に問題があってここは、ほかの必須アミノ酸も通っていく場所でもあるのです。この必須アミノ酸というのは、「フェニルアラニン」とか「口イシン」というものですが、食品によってはトリプトファンよりもこれらの必須アミノ酸のほうが多く含まれるものがあるのです。これらの必須アミノ酸がトリプトファンの邪魔をするため、トリプトファンが通過しづらくなってしまうのです。その代表的な食べものが、肉類や乳・乳製品なのです。……。
つまり、牛レバーにはトリプトファンよりもほかの必須アミノ酸が多いため、実際には思ったほどトリプトファンがとれないのです。
私たちのカラダの筋肉や骨などはタンパク質で出来ていて、このタンパク質を構成しているのは20種類のアミノ酸です。そのうち、9種類は必須アミノ酸と呼ばれる体内では合成できないアミノ酸。その必須アミノ酸の中でもバリン、ロイシン、イソロシンは総称してBCAAと呼ばれる持久系のアミノ酸で、大切な栄養素です。
この持久系アミノ酸BCAAは、まぐろの赤身、肉や卵などの食品に含まれているほか、最高の栄養といわれる母乳にも含まれています。
このようにBCAAが多い環境では脳への取り込みが阻害され、脳内セロトニンがあまり増えないことがありますので注意が必要です。
BACCは動物性蛋白質に含まれており、食品では牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉などが挙げられます。食べ物はバランスが大事なので、極端に摂取を制限すると逆に体調不良の原因になるので注意です。牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉の摂りすぎは逆に「脳内セロトニン」不足を招くことに繋がりますので、注意が必要です。
セロトニンを増やすためは、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、およびマグネシウム、亜鉛の不足を起こさないことが大切です
トリプトファンはセロトニンの原料であると同時に、ナイアシンの原料でもあり、ナイアシンの合成が優先されます
そのため、ナイアシンが不足していますと、折角、脳内に取り込まれたトリプトファンもナイアシンの合成に使われてしまい、セロトニンの合成へはまわってきません
ナイアシンは魚介類や肉類などの食品に含まれており、腸内細菌により産生もされますので、適量の魚介類・肉類を摂食し、腸内細菌を健全に保っている限りにおいて、ナイアシンの摂取不足を起こすことはありません。
この条件が整った状態で、セロトニンはトリプトファンを原料として、ビタミンB6、亜鉛、マグネシウムなどを補酵素として合成されます。
こういったことから、肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、腸内環境の悪化をきたし、ビタミンB3(ナイアシン)が産生されなくなり、結果的に「脳内セロトニン」がうまく作られなくなってきます。
以上のことから、肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、片頭痛治療上好ましくないことばかりです。