片頭痛は、頭のどちらか片側が痛む病気と思われがちですが、それは違います。あくまで「片頭痛」という固有名詞であり、症状を表している病名ではないということを理解しておいて下さい。
ですから、決して多くはないのですが、頭の両側が痛む片頭痛の患者さんもいます。外国の医学統計をみると、片側性は50 % とする医学文献もありますから、そう片側とばかり決めつけるものでもないのです。
また、頭の片側といっても、さまざまな状況があります。右側だけにしか痛みが出ない、あるいは左側だけ、といった患者さんはかなり少数派です。
ときによって痛みが右側に出たり、左側に出たりする、といった変動を示す患者さんが最も多いのです。
さらに、頭の両側とも痛くなるが、その痛みの程度には左右差がある、といった患者さんも少なくありません。頭痛が起こっている間は両側とも痛いが、その最中に右側と左側の痛みの程度が違っているのを感じることがある、という患者さんも時々います。
それでは、頭の左右でなく、前後についてはどうでしょうか?
片頭痛は、血液によって血管が押し広げられるときに痛みが起こる血管性頭痛です。
一般に、片頭痛は側頭部の痛みであるとさまざまな医学書に書かれていますが、これは側頭動脈の領域で痛みがおこった場合です。しかし実際には、前頭動脈や後頭動脈の領域で痛みが起こることも少なくありません。
側頭動脈の領域で痛みが起こりやすいのは、日本人でも欧米人でも同じなのですが、次に起こりやすいのは、欧米人では前頭動脈であるのに対して、日本人では後頭動脈のことが多いのです。
ちなみに、痛みの最中の自己診断法として、痛みの出ている血管を指で強く頭蓋骨に押しつけてみるとよいでしょう。押しつけている間は拡がった血管が収縮しますので、痛みが軽くなるのが分かるはずです。
もっともこのことを知らなくても、頭痛が起こっているときには、本能的にこういう動作をする人は多いようです。
このように寺本純先生は述べておられます。
現代社会は、日常生活を送る上で、私達の生活環境および生活習慣にはミトコンドリアの機能を悪化させる要因に満ち溢れています。ミトコンドリアの働きが悪くなれば、同時にセロトニン神経系の機能が低下してきます。この両者によって「姿勢の悪さ」を引き起こしやすい状況に置かれています。
私達は、日常生活を送る上で、前屈みの姿勢を強制される生活環境に置かれています。
特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。現代社会はスマホ全盛の時代で、歩きスマホをされるご時世です。
こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。
ここにさらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時は大抵どちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バックなどはいつも同じ方の肩にかける、重たい物を持つ仕事をしている、赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎(背骨)の歪みが生じてきます。仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びこれが頸椎にまで及んで、”脊柱の捻れ”を最終的に引き起こしてきます。
人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下方の背骨に掛かることにより、すぐに下部の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないように脊柱はS状の湾曲を呈しています。S状の湾曲を示すことによって体重の掛かり方を分散させています。ということは頸椎は前に湾曲を示していることになります。ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
これが、日常的に感じる極く軽度の頭痛です。
日常的に感じる極く軽度の頭痛は、姿勢の悪さに前屈みを強制される生活環境によって引き起こされ、「体の歪み(ストレートネック)」が形成される以前の段階において出現してきています。
このようにして、日常的に感じる極く軽度の頭痛が引き起こされてきます。
このような前屈みや俯き姿勢が長期間継続すれば、「体の歪み(ストレートネック)」を最終的に引き起こしてきます。このため、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。これが慢性頭痛、とくに片頭痛を引き起こす準備状態を形成します。
「体の歪み(ストレートネック)」が持続すれば、頸部の筋肉が絶えず刺激を受けることになり、この刺激は三叉神経核に絶えず送られることによって、さらに「脳過敏」を増強させます。
「ストレートネック」→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
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↓ 脊髄を介して三叉神経脊髄路核
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↓ 中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
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↓ 脳の過敏性、頭痛の慢性化
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自律神経失調症状 → 交感神経機能低下→頸性神経筋症候群
(慢性頭痛)
尾側亜核で三叉神経と頸神経が収束する
「体の歪み(ストレートネック)」のために、頭半棘筋に凝りが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経と三叉神経は脳の中で、三叉・頸神経複合体を形成していて、繋がっていますので、大後頭神経の刺激は三叉神経核にも伝わります。
このため、「体の歪み(ストレートネック)」が改善されないまま、放置されることにより、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。
これがさらに、「脳の過敏性」、「頭痛の慢性化」へと繋がっていくことになります。さらに「体の歪み(ストレートネック)」は「閃輝暗点」を引き起こす要因にもなっています。
このようにして、片頭痛を発症させることになってきます。
ここで注意すべきことは、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)いることです。傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
このように左右いずれかの側に痛みを訴えることが多くなります。
同時に、外頸動脈の分枝を拡張させることになります。
片頭痛も緊張型頭痛も共通して「頸部筋肉群の首疲労」を基盤として発症してきます。これは、両方の頭痛に共通して「体の歪み(ストレートネック)」が認められるためです。
さらに、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。この場合も、片側から常時送られています。
このように「体の歪み(ストレートネック)」に関連して、左右いずれかに傾いて(捻れて)いるために、痛みを感じる部分が片側になることが多く、両側が痛む場合でも左右差があります。