5つの食事改革で糖尿病を克服!
元気な人はみんな肉食! 50歳からは肉を食べよう!
2010年、長年の悪い生活習慣がたたってか私は糖尿病を患いました。腸内環境の改善で健康を歌っている私が、病気になるわけにはいきません。そこですぐに糖尿病の専門医に相談してカロリー制限ダイエットを実践することにしました。しかし残念ながら、糖尿病は改善せず、それどころか、薬に頼らざるをえないほどに悪化してしまいました。そんな時、ある疑問が湧きました。
「肉はカロリーもコレステロール値も高いので、極力控えたほうがいい」は本当なのか? 聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生は大の肉好きで有名ですが、104歳になった今もとてもお元気(先日、亡くなられましたが)。3カ月に1度はお会いしますが、いつもパワフルです。
そこで私は健康長寿のための食事についていろいろ調べた結果、50歳を過ぎたら「肉食」がいいことに気づいたのです。
私が食事面で改善したのはこの5つです。
1.カロリー計算をしない
2.コレステロールの値を気にしない
3.週に2回、肉と野菜をバランスよく食べる
4.糖質は極力食べない
5.発酵食を毎日食べる
おかげで体重も10kg減り、血糖値もコレステロールも中性脂肪も正常の値に安定しました。今では、糖尿病の薬も抗コレステロール剤も飲んでいません。
腸を元気にする食生活のおかげで、以前より肌ツヤもよく、体も軽やかです。今年77歳を迎えますが、見た目年齢は50代に戻りました。今日も日本全国へ講演に飛び回れるのは、食事の支えがあってこそなのです。
カロリー制限には意味がない!?
食事はエネルギー量の問題ではなく、腸内細菌が喜ぶかどうかを大事にしよう
先に記したとおり糖尿病になった時、私は糖尿病学会のガイドライン通り、はじめにカロリー制限を行いました。それとインスリン投与を併用して一度は治ったと思いましたが、再び、糖尿病になりました。その時はさすがにショックでした。
そこでいろいろ調べ、私自身の判断で糖質制限を試してみることにしました。できる限り糖質を抜き、肉を食べ、野菜もたっぷりの生活です。するとみるみる10kg痩せ、ついには糖尿病も脂質異常症も克服しました。
これらの体験から、カロリー制限による食事療法はほとんど意味がないと思っています。 そもそもカロリーとは熱量の単位で、その食品を摂ると体内にどれぐらいエネルギーを得られるかを数値化したもの。摂取エネルギーが、一日に消費するエネルギーを下回れば、理論上は体重が減ることになります。
しかし、実際にはなかなか痩せていきません。それはなぜでしょう。
エネルギーの消費のされ方は人によってそれぞれです。同じエネルギーを摂取しても、体が違えば消費のされ方はまるで違ってきます。しかし、ダイエットしたい人は食事をする前に、必ず「数値」を気にします。
結局、カロリーの低いものばかりを食べたり、同じメニューばかりに偏ったり。また、食事量を減らすなどして、腸内環境を乱してしまいます。
さらには、食事のたびにカロリー計算ばかりしていると、「楽しみ」から「ストレス」に変わり、腸にはよくありません。糖質を減らし、肉と野菜をバランス良く食べることが大事です。腸が喜ぶ食べ方を行えば、ダイエットは思ったよりも楽にできるはずです。
50歳からの正しい肉の食べ方
週に2回のステーキを色とりどりの野菜と一緒に
私たちの体は、若い時期の「子作りのための体」(解糖エンジンがメイン)からだいたい50歳ぐらいの更年期に「長寿のための体」(ミトコンドリアエンジンがメイン)へと移行させなければなりません。この2つのエンジンはエネルギーの産生機序が異なる分、当然、必要となる栄養素も異なります。
50歳になったら、主食などの炭水化物や甘いものなどの糖質は、体にとって邪魔な栄養分となります。
逆に必要になってくるのが「肉」に含まれるタンパク質と脂質です。
50歳前後の更年期を迎える頃、性ホルモンの分泌が激減していきます。性ホルモンが減少していくと、自律神経の乱れや更年期障害などが起こってきます。これは女性に限りません。そこで食事で性ホルモンの材料を補ってあげる必要があります。
その材料となるのが、肉に含まれるコレステロールです。つまり、50歳を過ぎたら、肉は私たちにとって必要な栄養素なのです。
肉は「おいしい」と感じられるよういただくのがいちばんですが、読者のみなさんから具体的な食べ方を聞かれることが多いので、ここで詳しく紹介しましょう。
[50歳からの肉の食べ方]
1.週2~3回、定期的に「肉の日」に肉を定期的に食べてもらいたいので、「肉の日」を決めましょう。
ただし、週4回以上は食べすぎです。いくらタンパク質と脂質が必要だといってもそれらを摂りすぎてしまうと腸内バランスがくずれやすくなり免疫力を落としてしまうため、腸のことを考えても、多くとも週3回までにしましょう。
2.肉は色とりどりの野菜と一緒に
牛肉や豚肉は飽和脂肪酸が多く、食べすぎると血液中の悪玉コレステロールを増やします。さらに、これが悪者になるのは活性酸素と結びついた時。活性酸素の害を減らすには、お肉と一緒にフィトケミカル(次項参照)の含まれる野菜をたっぷり摂ることです。
また、野菜に多く含まれる食物繊維は、腸内細菌の大好物。腸内細菌が増えると、免疫力も上がるので、肉1に対し、野菜3という割合で食べましょう。
3.野菜→肉→米または、パンの順番で食べる
米やパンなど主食である糖質は避けたほうがいい食材ですが、どうしても主食を食べたい時は、食べる順番を工夫しましょう。
まずは野菜を食べておくと、先に食物繊維が腸に届けられ、肉など高脂肪食品が入ってきても、脂質を過剰に吸収せずにすみます。主食など糖質は最後に。腸に食物繊維がたっぷりと届いていると、血糖値の上昇を穏やかにしてくれます。
4.ステーキはオリーブオイルで焼く
ステーキを焼く時に使う油はエクストラバージンオリーブオイルがおすすめです。オリーブオイルには抗酸化成分であるポリフェノールやビタミンEがたっぷり含まれています。日常的に摂取しておくと、抗酸化作用が高まるため動脈硬化や脳梗塞を予防でき、体内環境を整えるホルモン分泌促進作用が向上するとされています。また、ビタミンEは、細胞膜の酸化を防ぎ、老化防止に働く栄養素です。
5.フィレでもサーロインでも構わない
私の場合、脂肪分の少ないフィレを100g程度、いただくことが多いのですが、ジューシーな霜降りのサーロインでも構いません。特段と脂質や種類はこだわらず、食べたいものを、食べるのがいちばんです。
少々、脂質を摂りすぎたと思っても、一緒に野菜を多く摂っておけば問題はありません。
また、そのような時は、色や香りの強い野菜をすすんで摂りましょう。ニンニクやネギ、ニンジンなど色や香りの強い野菜には強力な抗酸化作用があり、おすすめです。
色、香り、苦み、辛みの強い野菜が老化を食い止める
7色の野菜や果物=「フィトケミカル」を意識して食べよう!
タバコの煙、大気汚染、紫外線、抗菌剤などの化学物質、そして電磁波など、気がつけば、私たちの生活は便利になった反面、活性酸素が発生しやすい環境に生きています。活性酸素が過剰に発生すると、まるで鉄がサビるように体の細胞を酸化させ、老化が進行するほか、細胞分裂の際に起こるミスコピーが増え、がん細胞へと変異してしまいます。実はこのミスコピーにも活性酸素が大いに関与しています。
その中でも、腸にダイレクトに悪影響を与えるのが人工の「食品添加物」です。人工の食品添加物が腸に入ることで腸内細菌の発育が抑制されたり、大量に死んでしまうという腸内環境の衰弱が起こってしまいます。結果として免疫力や抗酸化力が低下して、病気にかかりやすくなってしまうのです。
腸を守るには、まずは抗酸化力の高い食物を摂取することが大事です。
そこで老化やがんの予防に貢献してくれるのが「フィトケミカル」の植物たちです。
みなさんは「フィトケミカル」とはどういうものかご存知でしょうか。
そもそも、野菜や果物は光合成によって発生させる活性酸素や太陽の紫外線による酸化、虫などの外敵から自らを守るために、色、香り、苦みを持った化学物質(植物栄養素)を作り出してきました。これがフィトケミカルの成分です。
フィトケミカルは現在、発見されているだけでも約1500種類(分子構造をもとに推測される種類は1万以上あるといわれています)。代表格はぶどうのポリフェノールやニンジンのカロテン、大豆のイソフラボンなどです。
植物の持つ色、香り、辛み、苦みはフィトケミカル成分そのものです。味わいや色が強いほど、強力なフィトケミカルを有します。
ただし、特定の「フィトケミカル」ばかりを摂取するのではなく、さまざまな種類の「フィトケミカル」を摂取することが重要です。
そのためには〈赤・橙・黄・緑・紫・黒・白〉の7色の野菜や果物を、一日3食の中でバランスよく摂ることが大切です。
私の場合、ランチは決まって研究室の近所にある食堂に行きます。その理由はサラダバーがあるからです。つまり、フィトケミカル豊富な野菜や果物をまんべんなく、そして、懐を気にせずに食べられるのです。こんなにお得で腸に優しいお店がほかにあるでしょうか。みなさんも、外食するならば、このように野菜や果物が豊富に食べられるお店を選んではいかがでしょう。
また、フィトケミカルは皮や茎の部分に豊富に含まれているため、自宅で調理する場合は、できるだけ丸ごと料理に使いましょう。さらに、フィトケミカルは硬い細胞壁の内側に入っているため、軟らかく煮た野菜をよく噛んで食べれば、細胞壁が壊れやすくなり、効率よくフィトケミカルを摂取できます。そういう点でも、「鍋もの」はナンバーワンの〝腸寿食〟といえます
食前のひと皿で腸は変わる!
「食前キャベツ」で一日6gの食物繊維をプラス
私自身は糖尿病を薬ではなく「食事の工夫」で克服しました。その時から続けているのが「食前キャベツ」です。キャベツを小皿に1杯分(約100g)を、食事の前に食べるだけのことです。
キャベツは淡色野菜ですが、スルフォラファンというフィトケミカルを含む野菜です。 さらに水溶性・不溶性の食物繊維を持ち、100gのキャベツには約2gの食物繊維が含まれています。日本人の食物繊維摂取量の目標値は男性で19g、女性で17gとされています(2010年厚生労働省による)。
ところが食物繊維の摂取量は年々減る傾向にあり、戦前と比べると約半分の平均14gです。しかし、食事前にキャベツを朝・昼・夜と摂れば、計6gの食物繊維が摂取できるわけです。
食物繊維は腸内細菌の大好物であり、腸内バランスを整えるために欠かせません。さらに、キャベツはがん予防作用のある食品にもあげられるほか、がん細胞を殺す作用を持つ腫瘍壊死因子(TNF)を誘導する効果は野菜の中でもナンバーワン。私たちの体の中には毎日3000~5000個ものがん細胞が発生しているといわれています。毎日キャベツを食べておくことで、がん細胞の排除にも役立つわけです。
今までの食事をがらりと急激に変えることは困難です。でも、食前キャベツならば1品、加えるだけです。
味噌をつけても、オリーブオイルをかけてもおいしく、飽きません。また、どの料理店にもキャベツは用意してありますので、メニューにない場合でもお店の人に「せん切りキャベツ」をお願いすれば、たいてい用意してくれます。おかげで私は2カ月で10kg痩せ、今もその体重は維持しています。
もし目の前にメタボや糖質制限で悩む人がいたら、私は迷わず「食前キャベツ」をすすめるでしょう。