お腹が冷えてしまうと、腸も硬くなり、便秘や腰痛などの原因になるばかりか、体全体のバランスも壊れてしまう、と前に言いました。
東洋医学では食品を、体を温めるもの、熱をとって冷やすもの、そのどちらでもないもの、と3つの性質に分けています。とするならば、なるべく温めるものを摂って、冷えるものは避けたらいいのではないか、と考えがちですが、そうではありません。
冷やし過ぎるのもよくありませんが、温めるものばかり摂って体を火照らすのも、けっしてよくはないのです。
また栄養の面でも、偏食にならず、いろいろな食材を摂取するほうがいいのです。健康とは、偏らず、「体がバランスのいい」状態にあることです。
腸にとっても温めるもの、冷やすもの、中間のものをうまく組み合わせての食事が、腸内フローラを生かす、もっともいい食事法です。
では、いったいどんなものが温めるもので、どんなものが冷やすものか、例をあげてご説明しましょう。これはあくまでも私自身の判定で、異論をお持ちの方もいるかもしれませんが、とりあえずお読みください。
まず海産物です。仮にマグロであれば、お腹を冷やす食べ物なので、ガリ(ショウガ)やワサビなど、温める食べ物を一緒に摂ってバランスを取るといいでしょう。
要するに、体(特にお腹)を冷やす食べ物を食べたら、温める食べ物をうまく組み合わせよう、というわけです。これが腸にももちろんいいのですね。
海産物でいうとイワシ、アナゴ、サケ、カツオは体を温めて、マグロ、ウナギ、カニ、ウニあたりは冷やします。
野菜で言えばピーマン、ニラ、ニンジン、ネギ、ショウガは温めますが、キューリ、トマト、ナス、大根は冷やします。
だからキューリは、ショーガと一緒に食べるといいでしょう。
肉になると、温めるのはトリ肉、牛肉、羊肉、鹿肉あたり。豚肉、馬肉は冷やします。だから豚肉は温めるショウガと合わせて、ショウガ焼きで食べるといいわけですね。
栄養があっておいしい豚肉を、冷やすからといって避けるのはバカバカしいですよね。 ショウガとコラボすれば、さらにおいしくなる上に温冷のバランスまで取れるのです。
ややマニアックなところまで進んでみましょうか。
寿司を食べるのでも、「お腹を温かくする寿司ネタ」と「冷たくするネタ」「どちらでもないネタ」をできるだけ交互に食べるようにするのが、腸にはいいのです。
では、分類はどうかといえば温めるネタがアジ、コハダ、アナゴ、サーモン、エビなど。 どちらでもないネタはヒラメ、タイ、タコ、イカ、ホタテといったところで、冷やすネタがマグロ、ウニ、カニ、ウナギ、海苔あたりです。
それで、たとえばこんなふうに食べるわけです。
1スズキ(平) 2アジ(温) 3赤身(冷) 4ヒラメ(平) 5エビ(温)6ウニ(冷) 7鉄火巻き(冷)
8中トロ(冷) 9赤貝(温) 10大トロ(冷) 11アナゴ(温)
途中、(冷)が続く6から8の間は、ガリ(ショウガ)を食べてバランスを取ればいいんですね。
食後のお茶でも、「温」と「冷」はあります。
杜ちゅう茶、ほうじ茶、紅茶は温めますし、緑茶、麦茶はどちらかというと冷やします。
だから、夏、汗をかいた後は緑茶や麦茶がいいし、寝る前はお腹を温めるためにほうじ茶を飲むといいのです。
食べ物にしても飲み物にしても、それ自体の温度とは関係ありません。豚肉は冷やすからといって、火を入れて煮たり焼いたりしたから「温」に変わるとか、熱い緑茶なら「温」になるとか、そういうものではありません。もともとそれ自身が持っているものなのです。
冷やす食材で、最も極端なものといったら、「干し柿」ですね。私が知っている中でも、お腹を冷やす点でこれほどのものはあまりありません。ですから、干し柿はなるべく食べ過ぎず、出来れば温めてくれる食材や飲み物と一緒に摂るように、くれぐれも工夫してほしいですね。