15. 食事で腸内フローラを強くたくましくする! | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

まずはスムーズに「出す」

 

 ずっと「便微生物移植」などについては、やや否定的な言い方をしてきました。一生懸命、その研究をされている方々には、申し訳ない気もします。


 しかしどうも私は、腸内フローラの状態を改善するということが、そんなに簡単に、他人の便を移し変えるくらいで実現するとは思えないのです。人の体質は一人ひとり違うのですから、中にはそれがとっても大きな効果を表す場合もあるかもしれない。ただ万人に効く特効薬のような扱われ方をするのはどうも馴染まない。


 地道で、時間はかかるかもしれないが、腸内環境の改善は、やはり食事と日常生活から始まる、と私は思います。

 


 そこで、まずは食生活です。

 

 ただ、食生活の話になると、まずどんな食べ物を食べたらいいのか、から普通は話が始まってしまいます。


 やれ発酵食品がいいとか、やれ乳酸菌がたっぷり入った食べ物を食べよう、とか。


 もちろんそれも重要です。この後に触れていきます。


 しかし、「入れる」とともに、とても大事なことがあるのです。「出す」です。不要になったものを、どう外に出す、つまり排泄するか。私が現在やっております東洋医学の分野では、ときに「入れる」以上に「出す」を重視します。食べた物の栄養素を体内でしっかり吸収し、余分なものは排出する、そこにこそ人体の働きの基礎があり、健康の元があるからです。


 スムーズな便通こそが、健康な腸内フローラの秘訣です。


 となると、便秘と下痢は大敵です。体に必要な水分やミネラルまで出ていってしまう下痢は、体力の低下を招くので要注意ですが、それ以上に腸内環境を荒らすのは、やはり便秘です。


 私たちの腸内にはビタミンなどを生産し、健康と若さの維持に貢献している善玉菌と、たんぱく質などを分解してアンモニアなどの有害物質を作る悪玉菌、どちらでもなく、その時の勢力が強いほうに属する日和見菌がある話はすでにしました。


 その善玉菌は乳酸、酢酸なども作って、腸内を酸性に保って、ウィルスや毒素の侵入を防ぎ、腸のぜん動運動を活性化して、便をうまく出やすくする働きも持っています。ところが、便秘で長い間に便を溜め込んでしまうと必要以上に水分が吸収されて、ますます便は通りにくくなってしまいます。


 こうなると、悪玉菌の最高の棲家になっていくわけです。


 悪玉菌が増えていくと、さらに日和見菌まで悪玉菌化していくので始末が悪い。

 悪玉菌優位ですと、腸内ではアンモニアなどが増えるのですから、強烈な臭いのおならが出やすくなったり、ガスが腸内にたまっておなかが張ったり、腹痛が起こりやすくなったりします。


 症状はお腹にとどまりません。倦怠感、頭痛、吐き気、肌荒れなど、体全体に悪影響が出てきます。


 悪玉菌の増殖がさらに進めば、動脈硬化やがんなどの一因にもなってしまいます。


 悪玉菌が生産する毒素は、本来は肝臓で解毒されるのですが、体調が低下して肝臓の働きが鈍っていたりすれば、全部は処理しきれずに全身に運ばれていってしまいます。


 お陰で、血管が硬くなっていったり、細胞が傷つけられたりするかもしれないのです。


 クドいようですが、腸が健康な状態なら、悪玉菌といえど、こんなヒドいことはしません。善玉菌や日和見菌と折り合って、大人しく暮らしているのです。便秘などが悪化して、腸内が荒れた状態の時に、暴れだすのです。


 原因として考えられるのが、脂肪分の多すぎる食事、運動不足、食物繊維の不足、暴飲暴食、不規則な生活、ストレス、女性に多い過度のダイエットなどでしょうか。それぞれについては、改めて検証していきましょう。


いい排便のためには、バランスのよい腸内フローラを


 スムーズに「出す」ためには、とりあえず「腸のクリーニング」が欠かせません。


 もっとも、誤解されると困ります。「クリーニング」といっても浣腸のような腸の洗浄を積極的にやりましょう、という意味ではありません。


 前にも言いました。外からの強い刺激によるこうしたやり方は、何度も繰り返していけば依存症になり、腸の働きはどんどん弱まっていく上に、洗浄効果も薄れていきます。


 腸の粘膜が過敏になって、ひどい下痢になったり、粘膜が傷ついて感染症になってしまう危険もあります。


 無理に外から何かをするのではなく、体内にいい食べ物を入れて、中からの体質改善を図るのです。


 また「クリーニング」という言葉を使うと、まるで腸の中を無菌状態にするかのように誤解される危険性もあります。まったく違います。善玉菌まで殺してしまったら、病原菌はどんどん侵入してくるし、摂取した食べ物の栄養分も吸収できなくなってしまいます。


 以前述べたとおり、私は腸を「ぬか床」と考えています。


 「ぬか床」は微生物の力でおいしい漬け物を作るのですが、その微生物の代表が乳酸菌です。野菜をぬか床の中に漬けると、野菜の表面にいる乳酸菌がぬか床の中で増殖し、保存性と独特の風味を生み出す乳酸を作るのです。
 お酒、味噌、納豆なども、みんな、こうした微生物の「発酵」によって生まれたものです。


 その一方で、物質を微生物によって変えるものとして「腐敗」があります。食べ物が「腐る」という現象です。
 この「発酵」と「腐敗」の境界線がどこにあるかはとても難しいのですが、いわば「益虫」と「害虫」のような違い、といっておきましょうか。
 「発酵」と「腐敗」は腸においても起きますし、そのもとになっているのが腸内細菌なのです。


 ごくごく単純化していうと、発酵のもととなっているのが乳酸菌などの善玉菌であり、腐敗のもとになっているのが大腸菌のような悪玉菌、といえましょう。もっとも、発酵と腐敗の両方に関わっているものがあったり、細かく分析するととても大変ですが、だいたいはそういう図式です。
 腸の中で善玉菌が優位なら、ぬか床の発酵は順調に進んで、スッキリしたお通じになります。反対に悪玉菌が優位ですと、ぬか床の中の物質は腐敗が進んで、腸自体の活動も鈍ります。


 便秘で、不要物が中にとどまってしまうのは、たとえていえば、ゴミ置き場に生ゴミがたまってしまうようなものでしょう。臭くもなりますし、一度たまってしまうと、なかなか処分もしにくくなっていきます。
 だからこそ、「腸のクリーニング」とは、腸をスッキリとお掃除して腸内フローラを善玉菌優位のいいバランスにし、いいウンチを出せるようにすることなのです。


 かつて、こうしたものは、肌荒れが治る、とか、ダイエットにいい、とか女性の美容がらみで語られることが多かったようです。
 しかし、最近の研究によって、体だけではなく「心」に与える影響もとても大きいことがわかってきています。


 いい腸内細菌はたくさんのセロトニンやドーパミンを生んでくれます。


 それに腸に古い便やガスがたまっていたら、イライラしやすくなったり、眠れなくなったり、いろいろな弊害が出てきます。


 よく、腸にはずっととどまり続けている「宿便」があって、下剤を使ってでも、それを外に出さないといけない、などという人がいます。私は、そういうものはないと思います。 腸のぜん動運動は、便をしっかりと効率的に次々と押し出していくので、こびりついて残った便というのは、たぶんないはずです。


 必ずしも朝食を食べるのが腸内フローラにいいとは限らない


 腸を一日活発に動かすには、毎朝、キチンと朝食を摂りましょう、とは、よく言われることです。
 朝食を摂れば体温は上昇し、体にエンジンがかかった状態になります。朝食を食べて糖質を得た腸内フローラは酢酸などの有機酸の生成も活発になり、腸のぜん動運動も高まって便意も強くなり、体もポカポカしてきます。


 もう少し、「出す」ことについて詳しく言えば、排便を促す基点となっているのは、胃です。胃の中に食べ物が入ってふくらむと、それが大腸に伝わっていって、大腸は便を直腸に送り出そうとぜん動運動を活発にします。
 朝起きて、カラッポだった胃に食べ物が入ると、より強く、大腸の活動が盛んになります。
 スムーズに「出す」ためにも、朝食は摂った方がいい、というのはいわば常識です。もちろん腸内フローラの元気にもつながります。


 健康本をみても、「朝食はちゃんと食べるのが健康の源」と書いてあるものが多いです。
 ではありますが、それが万人に共通する「常識」なのか、と問い直してみると、どうも私はそこまではいかないのではないか、と思っています。


 人間の体質は一人ひとりみんな違い、スギの花粉を吸ったからといって花粉症になる人もいればならない人もいます。ただ一方で、暴飲暴食は腸の悪玉菌を増殖させる、といったようなことは、人間の体ならば誰しもに共通して起きます。世界中どこを探しても、腸の処理能力を超えたドカ食いをして、かえって腸が健康になる例はありません。テレビによく出てくる「大食いタレント」などは、必ず腸は乱れており、いずれどこかに症状が出てくるでしょう。


 つまり、「健康にいいこと、悪いこと」にも、「誰にでも共通すること」と「人によって違うこと」がある、と私は考えるのです。


 私が思うに、「朝食」はその後者です。


 朝食を抜きにした方がお腹の調子がいい人だって、たくさんいます。そうした人たちに、強引に「朝食は体にいいのだから、食べろ」と押し付けたらかえってストレスになって腸に悪い影響を与えかねません。


 だいたい一日三食にこだわる必要自体がないのです。江戸時代の、特に前期は一日二食が当たり前だったそうですし、モチリンという、腸のぜん動運動を促して便秘予防にいい、とされているホルモンの分泌は、逆に朝食を食べないほうが多くなる、との指摘もあります。


 それで朝食抜きで健康になる「一日二食健康法」を提唱している人たちまでいるのです。


 「朝食は必ず摂れ」と同様で、こちらも、「人によって違う」ものではあるのでしょうが、「朝食崇拝」が薄らいで、多様な考え方が出てきたのはいいことです。


 結局、あとは本人の判断ではないでしょうか。昼間抜いて、朝と晩は食べるのがお腹にいい、と判断したのならそれでもいいし、一日一食の方がお腹がすっきりして活動がしやすいのなら、そうしたらいい。


 「□○×△しなければいけない」との呪縛にとらわれているのが、かえって腸にはよくないでしょう。要は、自分のお腹の体質にはどういう食習慣が合っているのかを見つけ、実行していくのが大事なのです。


 また、「健康のため」と朝食を食べるとしても、パンとコーヒーだけで済ませてしまうのでは意味がありません。栄養分の偏った、栄養不足の食事は、かえって腸内環境を悪化させてしまう危険があります。糖質やたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどがバランスよく含まれている食事をとって、初めて健康にいい朝食なのです。

 バランスが悪い食事なら、無理して摂るべきではないかもしれません。


 もっとも、一定の時間に規則正しく食事をすることは腸にとっては大事なことです。腸はリズミカルに、規則正しい生活を送ると、「よし、これから働くぞ」と毎日、やる気になってくれますが、食事時間が不規則だと、どこで働いたらいいかわからなくなって、動きが鈍ります。