先日、匿名で、寺本純:現在の頭痛診療の問題点と今後.ペインクリニック 38:363-369,2017 という総説 Review がファックスされて参りました。
恐らく、最近の私のブログの記事をご覧になられて、頭痛専門医のどなたか、もしくは寺本先生自身から送付されたものと推測されます。
その要旨は、現在の日本での頭痛診療のなかで、薬物乱用頭痛が増加しています。この最大の原因は、若干の工夫で導入可能な治療がなされていないことにあります。片頭痛は生涯の疾患であり、治療の良否は患者さんに生涯の苦痛を与える結果になります。医療制度の問題は別として、これらの問題点をお洗い出すとともに、片頭痛以外のいくつかの頭痛に対しても有用なボツリヌス治療を中心的に取り上げて述べます。これを契機に頭痛診療が大きく向上することを期待します。
このなかで、薬物乱用頭痛を治療する場合、ボツリヌス治療の重要性を中心として述べられ、これが現在では”保険適応になっていない”ことが、問題とされます。
しかし、私は現在の頭痛診療の問題点はこのようなところにあるのではないと考えております。このことは、これまで「従来の臨床頭痛学」とは・・で述べてきた通りで、ここでは繰り返さないことにします。長くなりますので、以下でもう一度確認してください。
従来の「臨床頭痛学」とは
http://taku1902.jp/sub534.pdf
ここに、現在の頭痛診療の問題点のすべてが存在することを、明らかにしてきました。
そして、これを基にして、今後、どのように考え、行っていくべきかを明らかにしました。
専門家は、「国際頭痛分類第3版」を頭痛診療および頭痛研究の絶対的な”教義・教典”とされることに最大の問題点が存在することを認識しなくては、何も解決しないということです。
そして、脳のなかに異常のない慢性頭痛とは、一体、何なのかという基本的な概念なくしては、何も進展することはないと考えなくてはなりません。
専門家は、このような脳のなかに異常のない慢性頭痛が、雲を掴むように、まさにつかみ所のないことから、単純に、「国際頭痛分類第3版」という基準で、定義することによって考えているだけのことで、これらをすべて独立した別個のものと考えることに問題があります。
その結果、頭痛の国際診断基準のみでの”はめ込み診断”に陥らざるを得ないということです。
「国際頭痛分類第3版」とは、ここで片頭痛を明確に定義して、これを基にして、間違いなく片頭痛を診断するだけの価値しかないはずのものです。
ということは、頭痛医療そのものが、片頭痛中心にしか行われてこず、片頭痛と日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛がどのような位置関係にあるのかを一切考えようとはされず、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛を鼻くそのように考えてきたことが問題視されなくてはなりません。
このように専門家は、国際頭痛分類第3版がすべてであり、これを見直すことなく何も解決されることはないと考えるべきです。