その16 「子供の慢性頭痛」の役割 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 なぜ、ここでこのような「子供の慢性頭痛」を取り上げるのか疑問に思われるかもしれませんが、子供の慢性頭痛は、大人の片頭痛を理解するために最適と思われるからです。


まず、子供の片頭痛の特徴


 子供の片頭痛は、大人の片頭痛とは少し異なります。その特徴としては、


  (1)頭痛の持続時間が1時間程度と短い、
  (2)頭痛の部位が両側性(前頭側頭部)である場合が多い、
  (3)腹部症状が多い


   などが挙げられます。


 年少児の片頭痛は両側性(前頭側頭部)である場合が多く、成人にみられる片側性の頭痛パターンは思春期の終わりか成人期の初めに現れるのが通例です。このように、子供さんの片頭痛は、大人の片頭痛と異なり、緊張型頭痛のようなパターンを示すことが多く、そして痛む時間も4時間以下であることがほとんどです。
 大人の片頭痛発症の当初は片頭痛発症の当初は日常的に感じる極く軽度の頭痛・”緊張型頭痛”のような状態から、ある一定期間を経過して片頭痛を発症してきます。
 このことは、今回のシリーズの最初に「片頭痛とは、どんな頭痛でしょうか?」で明らかにしました。


 こうした点は、子供の慢性頭痛の発症様式は、大人の片頭痛の発症様式を典型的に示しているといえます。子供の片頭痛は、大人の場合の緊張型頭痛と片頭痛の中間に位置するような「頭痛のタイプ」と考えるべきです。
 「子供の慢性頭痛では複数の頭痛が同時に存在することがある」と専門家の間でされているのは,このことを意味していると考えるべきです。
 そして、表現能力に乏しい子供たちから、いくら問診を繰り返したからといって、的確に自分の頭痛を表現することは到底不可能です。このため「国際頭痛分類 第3版β版」に準拠して診断すること自体、限界があると心得るべきです。結局、子供の場合、緊張型頭痛か片頭痛なのか、といった区別(鑑別)すること自体”意味のない”ことであり、一括して”脳のなかに異常のない慢性頭痛”として考えるべきものです。


片頭痛はミトコンドリアの機能が低下することによる頭痛です


 子供の片頭痛の場合、片頭痛の発作を起こした際に、一眠りした後に頭痛が軽快することはよく経験されます。これは、寝ている間に、活性酸素等で傷ついたミトコンドリアが修復されることによって、頭痛が軽快したものと思われます。

 
 「小児周期性症候群」と呼ばれる以下の3つの症状は片頭痛に移行することが多いようです。それは、周期性嘔吐症、腹部片頭痛、小児良性発作性めまいです。
 片頭痛の発症には、神経伝達物質のセロトニンが関与しており、セロトニンに限らず神経伝達物質は、受容体という鍵穴にはまることで細胞に作用します。 子供の場合は、脳のセロトニン受容体が未発達で、セロトニンと受容体の結びつきが希薄なために、頭の痛みが生じにくいと考えられています。
 セロトニンは小腸などの消化管の粘膜に多く存在するため、おなかの症状が強くでることが少なくありません。
 人体のセロトニンの90 % 以上が腸内にあり、腸内セロトニンの働きは、脳内セロトニンとは全く異なります。腸内セロトニンは、人間がストレスを感じれば感じるほど大量にでます。その結果、腸に不規則な蠕動運動が起こり、腹痛や下痢の原因になります。
 片頭痛の子供には車酔いする子供が多いという報告があり、これは自律神経系の問題ともいわれていますが、はっきりした原因は不明とされます。
 しかし、これは、「小児良性発作性めまい」とともに、「体の歪み(ストレートネック)」に関連したものと思われます。このことは、専門家がこれまで「体の歪み(ストレートネック)」を無視したために原因不明としているに過ぎないはずです。
 「起立性調節障害」は、ミトコンドリアの機能障害から生じた”セロトニン神経系の機能低下”と生活習慣の問題が追加されたことによって引き起こされた「脳内セロトニンの低下」によるものであり、本家本元は「ミトコンドリアによる機能障害」によるものです。
 その結果、子供の頭痛を慢性化させ、これが「不登校」に繋がっていくとは考えないようです。このことが、最も問題視されなくてはなりません。
 また、小児の片頭痛に抗てんかん薬のデパケンの服用を勧める方も、片頭痛がミトコンドリアによる機能障害による頭痛である、と考えないことから、「脳過敏」がどこから生じてくるのかについて見解の相違があるようです。


 今回のシリーズの最初に「片頭痛とは、どんな頭痛でしょうか?」で明らかにしましたように、片頭痛発症の当初は片頭痛発症の当初は日常的に感じる極く軽度の頭痛・”緊張型頭痛”のような状態から、ある一定期間を経過して片頭痛を発症してきます。ということは、緊張型頭痛と片頭痛は一連の連続したものです。


 緊張型頭痛と片頭痛は、一連の連続したものです
 

典型的な片頭痛の症状とは?


典型的な片頭痛の症状として、寺本純先生は以下のようなものを挙げておられます。


1.突然、発作性に頭痛がおこる
2.頭痛が起こる前になんらかの前ぶれがある
3.頭の片側が痛むことが多く、両側が痛む場合でも左右差がある
4.頭痛がピークに達するまでには拍動感のある痛みを感じる
5.頭痛の最中に食欲低下、吐き気、嘔吐をおこすことがある
6.頭痛の最中には、音、光、匂い、振動が嫌になる
7.血管が拡張しやすい状況になると頭痛がおこりやすい
8.遅くとも25 歳までには発症する
9.祖父母、両親、兄弟姉妹にも同じような頭痛がある
10.妊娠中や授乳期には頭痛が軽くなる
11.中年になると頭痛は軽くなるが、頭痛の回数が増えたり時間が延びる
12.60 歳を過ぎると頭痛は軽くなり、70 歳以上ではほぼ消えてしまう


 しかし、皆さんは、頭痛発作が起きたときに果たして、この頭痛が片頭痛なのか、肩こりによる緊張型頭痛なのかを的確に判断できる自信はおありでしょうか?


 まず、以下のようなご経験はないでしょうか?


緊張型頭痛がひどくなると片頭痛になる?


 「日常的に肩こりを自覚していて,疲れたり睡眠不足になると肩から後頭部に重い感じの痛みが上がってきます。後頭部の鈍痛で終わるときもありますが,我慢していると頭全体がガンガン痛んで吐き気も出現し,ひどいと嘔吐する。 ガンガン痛いときには,家族の話し声もうるさく感じて,静かな部屋で暗くして横になると少し楽になる」といったことはなかったでしょうか。
 ひどい頭痛はおそらく片頭痛と診断して問題はないでしょう。後頭部の鈍痛に関しては、緊張型頭痛と診断される場合が多いと思われます。
 このように緊張型頭痛で始まり、程度が強くなると拍動性の頭痛を伴うものを、オーストリアのランス Lance は緊張・血管性頭痛 tension-vascular headache と命名しました。


片頭痛が緊張型頭痛に化ける?
 

 「20 歳ころから時々片頭痛発作を起こし、結婚後片頭痛発作が頻繁になりましたが、40 歳ころから緊張型頭痛が加わってきて、50 歳を過ぎると寝込むようなひどい頭痛発作は起こらない代わりに、だらだらと重く締め付ける感じの頭痛が続くようになった。」このような経験はありませんか。
 国際頭痛学会分類では、以前のものは片頭痛で、中年以降の頭痛は緊張型頭痛と診断されるでしょう。このようなパターンを片頭痛が加齢とともに変化したということで、米国の Mathewは変容性片頭痛という概念を提唱しています。 ただ国祭頭痛学会分類の範疇としては現在のところ認められていません。 一方、片頭痛の治療に市販の鎮痛薬・トリプタン製剤などを乱用していますと頭痛が発作性の型から、連日性になっていくことがあります。いわゆる薬物乱用による「慢性連日性頭痛」ですが、これも 変容した片頭痛の一種と考えられています。


片頭痛と緊張型頭痛の多くは症状は重複 


 このように、片頭痛と緊張型頭痛の症状の多くは重複していて、個々の症状のみで診断することは困難です。たとえば、軽度~重度の頭痛、両側性および片側性の頭痛は両者に認められます。
 また、片頭痛、緊張型頭痛ともに拍動性でないことが多く、さらに、緊張型頭痛の特徴と認識されることの多い「肩こり」も多くの片頭痛で随伴しています。


  片頭痛因子(血管症状)

    拍動痛
    片側性
    高度頭痛
    悪心・嘔吐


  緊張型頭痛因子(筋症状)


    締め付け感
    圧迫感・頭重
    後頭部の頭痛
    肩こり


 こうしたことから、これまで以下のように考える頭痛研究者もおられます。


片頭痛の本質は「エスカレーシヨン」


 片頭痛と診断された患者と緊張型頭痛と診断された患者の頭痛は,性状・質の差ではなく,頻度・程度の差であり,その病態は連続した「境界不明瞭な」「連続体」であると考えられています。
 片頭痛患者さんは,頭痛発作が始まったが,それほどひどくならずに済んだという経験をすることがあります。ひどくならない発作は,片頭痛の診断基準を満たさないことが多く,緊張型頭痛と診断せざるを得ませんが,これを上手に説明したものが一次性頭痛(機能性頭痛)一元論です。1回1回の片頭痛発作に注目し,スタートは同しでも、軽く済めば緊張型頭痛,エスカレートしてひどくなれば片頭痛発作になるという考え方です。


 頭痛が起こり始めた時、この頭痛がどこへ行くかはミステリーなのです。緊張型で終わるのか、緊張型頭痛経由片頭痛なのか、片頭痛直行なのか。これは患者さんにも分かりませんし、医者にはもっとわかりません。
 (引き金がどの程度重なるかで左右されます。)
 頭痛体操やストレッチ、階段の上り下りをしてみても見極めがつかない場合は、飲み慣れた使いやすい鎮痛剤を飲んで戴いて、30 分後に頭痛が悪化してくるようならトリプタン系薬剤を飲んで下さい。また、朝から痛い場合は片頭痛と考えられますし、ご自分の経験上片頭痛だとわかる場合には、最初からトリプタン系薬剤を服用して下さい。


 以上のように、緊張型頭痛も片頭痛は明確には、現実に区別できないということがお分かり頂けたかと思います。その理由は、緊張型頭痛も片頭痛も共通して、頸椎レントゲン検査で、ストレートネックを高頻度に認めます。
 このため、このように臨床症状には、重複するものが多いということです。
 片頭痛は緊張型頭痛と連続したものです。緊張型頭痛から、片頭痛へと移行して発症してくるということです。
 ただ、なかには、ミトコンドリアの働きが極端に悪いような場合は、いきなり片頭痛のタイプから発症してくる場合も当然あります。この点も重要な点です。
 このように、片頭痛にしても緊張型頭痛の場合も、どのような”症状”があるかということで「国際頭痛分類 第3版β版」という国際頭痛学会が定めた基準に従って診断されていますが、これまでも述べてきましたように、クリアカットには区別できません。この理由は緊張型頭痛と片頭痛が連続したものであるからに他ならないからです。


 こうしたことから、実際に頭痛が起きた場合、今回はどちらの頭痛なのかを、その都度、自分で判断する必要があります。ここが実際の対処の仕方の難しい点です。


 緊張型頭痛と片頭痛、の境界領域にあるものが存在し、この2つが明確に区別できません。
 そして、現実に、”同一の”一次性頭痛(慢性頭痛)の患者さんを詳しくみてみますと、緊張型頭痛の要素、片頭痛の要素、を混在しています。このように考えれば、緊張型頭痛、片頭痛、も一連の連続したものと考えるのが妥当と思われ、こうしたことから、先程のように「機能性頭痛一元論」という考え方をされる頭痛の専門家もおられることを忘れてはなりません。


 単純に言えば、”生活に支障を来せば”片頭痛であり、”生活に支障がなければ”緊張型頭痛であり、この両者は連続したものであり、そして、緊張型頭痛であれ片頭痛であれ、共通した病態が存在しているということです。


東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、以下のように指摘されます。


 緊張型頭痛では、デスクワーク、特にパソコンを使って仕事をすることにより、うつむき姿勢を長時間とると、首の後ろ側の頭半棘筋が緊張し、その筋肉を貫くように走っている「大後頭神経」が圧迫され頭痛が起こり、緊張型頭痛は明らかに首疲労からもたらされる病気で、”首疲労”を治療することによって、痛みがきれいに消えてしまいます。
 ところが、明らかに片頭痛と考えられる予兆や前兆を持っていて、片頭痛に有効なイミグランなどのトリプタン製剤を飲んだら、頭痛がぴたりと止まることから、典型的な片頭痛と他院で診断された患者さんに対して、”頸筋の異常を治療”したら、片頭痛が起きなくなるものが、片頭痛の一部に存在します。 こうなると、片頭痛と緊張型頭痛という分類自体が怪しくなってきます。
 頭半棘筋にこりが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経は、頭痛をもたらす神経です。大後頭神経と三叉神経は脳のなかで繋がっていますので、大後頭神経の刺激は、三叉神経にも伝わります。
 大後頭神経と三叉神経が同時に痛くなる現象は、よく知られています。

  「体の歪み(ストレートネック)」が長期間、放置されて引き起こされる病態が東京脳神経センターの松井孝嘉先生の提唱される「頸性神経筋症候群」です。


 ”頭痛の専門家”で重鎮とされる神経内科学の岩田誠先生は、さらに以下のように指摘されます。


 ”頸性神経筋症候群”(ストレートネックが長期間持続したために生じる病態です)という病態が片頭痛患者に生じますと、片頭痛発作の頻度の増加や程度の悪化、トリプタンの効果減弱につながると思っております。従って、明らかに片頭痛患者であると思われる方で、”頸性神経筋症候群”がある場合には、片頭痛への治療と同時に”頸性神経筋症候群”に対する積極的な治療を行うようにしています。これにより発作頻度の減少、発作時の症状の軽減、トリプタンの効果の改善が認められる患者が少なくありません。

 

 この説明では、片頭痛に”頸性神経筋症候群”を合併した場合とされていますが、果たして、これをどのように考えるべきでしょうか?
 逆に、”頸性神経筋症候群”の延長線上に片頭痛が存在するとは考えられないでしょうか。


 これまでの当医院の調査では、体の歪み(ストレートネック)の確認率は、男性で52%、女性では68%と圧倒的に多く、緊張型頭痛では84%、片頭痛では95%に、群発頭痛では全例に、ストレートネックが確認されています。
 このように、緊張型頭痛でも片頭痛にも共通して「体の歪み(ストレートネック)」を認め、片頭痛では緊張型頭痛以上の頻度でみられるということは、緊張型頭痛と片頭痛は連続したものと考えるのが妥当のように思われます。すなわち、緊張型頭痛に片頭痛が重なってきていると考えるべきです。このために片頭痛での頻度が高いと考えるべきです。


 さらに、次のような興味あるデータがあります。


片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine


     片頭痛
     big(true)migraine
   連続体
 緊張型頭痛    
        緊張型頭痛
 small migraine       (脳内セロトニンの関与)

 
 ということは、片頭痛での緊張型頭痛はsmall migraine で、本格的な片頭痛はbig(true ) migraine で、これが連続しているということです。
 緊張型頭痛はこれとは別に、独立して、存在するということです。
 この差異は、「片頭痛素因」の有無で決まるとされています。


 片頭痛患者さんは片頭痛、片頭痛様、緊張型頭痛を経験します。各頭痛に対するスマトリプタンの効果を249 患者に対して1,576 回の中~高度頭痛について分析した結果、投与後4時間目に、すべてのタイプの頭痛においてトリプタンはプラセボに勝りました。つまり、片頭痛の前の緊張型頭痛(仮面片頭痛)にもトリプタンが有効ということになります。症候的には緊張型頭痛でも、本態的には片頭痛small migraine ということです。


 このような結果からは、起こり始めの緊張型頭痛の段階でもトリプタン製剤が有効ということです。
 このことは、本来、「緊張型頭痛も片頭痛も一連のものである」ということを明らかにしているものと思われます。


 緊張型頭痛と片頭痛の基本的な相違点は、「ミトコンドリアの働きの悪さ」という”遺伝素因”を持っているかどうかだけの差でしかありません。


 緊張型頭痛も片頭痛も共通して、体の歪み(ストレートネック)を高頻度に認めるわけですので、臨床症状には、重複するものが多いということです。
 そして、体の歪み(ストレートネック)を緊張型頭痛・片頭痛ともに基本骨格としており、緊張型頭痛では84%に、片頭痛では95%の高頻度で、体の歪み(ストレートネック)が認められることになっています。


 これに対して専門家は・・・


 専門家は、「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および頭痛研究の絶対的な基準とされます。
 この「国際頭痛分類 第3版β版」の目的とするところは、片頭痛を明確に定義することによって、間違いなく、片頭痛に対してトリプタン製剤を処方させるためのものです。
 このため、”片頭痛と明確に定義された”「国際頭痛分類 第3版β版」の基準に合致しないものが緊張型頭痛とされ、いわば緊張型頭痛は”ゴミダメ”的な性格の強い頭痛とされ、専門家の間では、極めて”取るに足らない頭痛”とされています。このように全く無視されています。
 このように、片頭痛と緊張型頭痛はまったく別の範疇の頭痛であるといった”教義”が専門家の間で作られることになり、専門家は、片頭痛と緊張型頭痛それぞれの特徴的な症状を対比して挙げ、製薬メーカーはこれを基にしてパンフレットを作成し、広く一般の方々および医師に配布され、啓蒙されてきました。
 現在でも、このような考え方は、ネット上に当然のように広く流布しています。
 このようにして「国際頭痛分類」が作成されてからは、片頭痛と緊張型頭痛は厳格に区別されるとの考え方が徹底して啓蒙されることになりました。それは、医師に対しては、片頭痛にトリプタン製剤を処方させるためであり、一般の方々には、片頭痛にはトリプタン製剤という”特効薬”があることを知ってもらうためです。
 このため、専門家の間ですら、片頭痛と緊張型頭痛はまったく別の頭痛と思い込んでおられる方々が多数見受けられます。


 日常的に感じる極く軽度の頭痛から緊張型頭痛へ、さらに片頭痛へと移行していくことは、詳細に綿密に病歴聴取すれば明らかでありながら、専門家は日常診療において「国際頭痛分類第3版」を巧妙に組み込んだ問診方法や「問診表」を使われ、受診時の最も困っている頭痛しか問題にされないことから、慢性頭痛発症の起点ともなるはずの「日常的に感じる極く軽度の頭痛」・緊張型頭痛をまったく無視されることになっています。
 このように、臨床神経学の「問診に始まり、問診に終わる」という基本原則をまったく無視した病歴聴取(問診表による手抜き診断・診療)が現実に罷り通り、病気のオンセット(起始)が全く無視されています。
 このようにして、最も大切とされる”片頭痛を見落とすことなく”診断することしか念頭にありません。このように徹底して指導されてきました。


 脳のなかに異常のない一次性頭痛(慢性頭痛)は、国際頭痛分類第3版では、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(ここに群発頭痛が含まれます)、その他の一次性頭痛に分類されています。
 頭痛研究を行う場面では、これまで専門家は、このように4つに大別された頭痛群をさらに、個々の頭痛を別個に独立させて研究すべきとされてきました。
 このように、片頭痛だけは特別扱い(神格化)され、緊張型頭痛をはじめとした他の慢性頭痛とはまったく切り離して・別個のものと考えてきました。
 ところが、このような脳のなかに異常のない慢性頭痛の4つのものは、本来、一連のものであり、生活習慣の問題点から、それぞれの4つへ進展していくものです。

 

 以上のように、専門家の行う「頭痛外来」では、多忙を極めるため診療効率を上げるため大半の施設では「問診表」が利用されています。

 この問診表では、受診時の”最も困っている頭痛”に関する質問が中心となり、「国際頭痛分類 第3版β版」の診断基準に基づいて片頭痛の診断を下すため、過去の”日常的に感じる些細な極く軽度頭痛”である緊張型頭痛は無視されることになります。
 こういった理由から、多忙を極める頭痛外来を担当される先生方は、緊張型頭痛と片頭痛は別物であるといった錯覚を”日常的に植え付けられる”ことになっています。
 しかし、世間一般で頭痛の”名医”とされる先生方は、問診表を使わずに、時間をかけて腰を据えて、過去の極く些細な緊張型頭痛を含めて聴取され、これが「現在の受診のきっかけとなった頭痛」に至るまでの間の「生活習慣・環境の変化」を詳細に把握されます。
 緊張型頭痛に、生活習慣・環境の変化によって片頭痛へと進展していくものと考えておられ、緊張型頭痛も片頭痛も一連のものと考えておられる先生が多いようです。
 このように、専門家の間でも、考え方が2分されていることを忘れてはなりません。ただ、トリプタン御用学者だけが、まったく別の頭痛と考えているだけです。


 さらに、ネット上では、トリプタン製薬メーカーの影響を受けたHPや患者集めを目的とした施設のHPでは、緊張型頭痛と片頭痛は明確に区別されると記載されています。


 決して、緊張型頭痛と片頭痛が連続した一連のものであるという記載は全く眼にすることが出来ないのが現状です。これは、素人が最も理解しやすくするためにこのような記載をしているにすぎません。こうしたことのため、頭痛の専門家ですら緊張型頭痛と片頭痛がまったく別の範疇の頭痛であると錯覚されるのが実情です。このため、かえって理解しずらくしているとも言えます。単純に両者がお互いが連続していると説明すれば、もっと判りやすいはずです。
こうしたことが、自然と、慢性頭痛の本態解明への道筋を閉ざしているようです。


 以上のように、日常的に感じる極く軽度の頭痛は、緊張型頭痛へ、さらに片頭痛へ、さらに慢性片頭痛へと繋がっており、群発頭痛へと派生していくことになります。このように慢性頭痛全体として考えるべきものです。


 そして、その根底にはミトコンドリアが関与しています。


 こういったことから、脳のなかに異常のない「慢性頭痛」とは、このシリーズで明らかにしてきましたように「健康的な生活」を送ることができていない生活習慣の問題点に根本的な原因があると考えなくてはなりません。