「慢性頭痛の基礎」3.セロトニン神経系 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 「健康的な生活を送る」ためには、”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
 すなわち、ミトコンドリアは、私達の体を構成する細胞の中にあり、食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出しています。エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。
 そして、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。


 「セロトニン神経系」は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。
 セロトニン神経系は、”大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する、自律神経を調節する、筋肉へ働きかける、痛みの感覚を抑制する、心のバランスを保つ”などの重要な働きをし、「健康的な生活」を送るためには欠かせない働きをしています。


 ここで注意しておかなくてはいけないことは、セロトニンという語句を用いる場合の解釈です。セロトニンには2つの働きがあり、生理活性物質としての作用と神経伝達物質としての作用で、神経伝達物質としての働きは脳内セロトニンの作用です。

 
  「神経伝達物質」は、実は100種類以上あります。そのなかでも主要なものは10種類ほどに絞られますが、脳内のいろいろなところに影響を与えるという点では、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどがよく知られています。


 ドーパミンは、体の動きを調整する神経の機能と、心の領域として「舞い上がるような心地よさ」を感じる「快の情動回路」といわれる神経の機能とがあります。セロトニンと深く関わりがあるのは、後者の機能です。このドーパミン神経を活性化させるのは「報酬」です。人間社会において、私たちが「試験で良い点数を取る」「試合で勝つ」「高い給料を取る」などの目標を持つと、ドーパミン神経は興奮し、私たちに一種の「渇望したストレス状態」を作り出します。この状態ではドーパミン神経が活性化しているので、私たちはちょっとしたストレスでも努力するようになるのです。そして目標が達成されると「舞い上がるような心地よさ」を感じることができます。ですからドーパミン神経は、意欲の神経なのです。
 達成されないことで一番問題になるのは、ドーパミン神経が暴走し始めることです。実際に、世の中は上手くいかないことが多いわけですが、上手くいかないことが続くと「何が何でも達成するぞ!」と異常行動を起こし始めるのです。いわゆる依存症で、周囲に迷惑をかけてしまう。これはドーパミン神経の悪い面です。
 ドーパミン神経には興奮した際、良い面と悪い面があるわけですが、このドーパミン神経にコントロールをかけることができる神経回路がセロトニン神経である、ということです。


 ノルアドレナリンはストレスに関係する神経になります。不快なストレッサーが、外部から人間の内部に加わった場合、最初に反応するのがノルアドレナリン神経です。わかりやすく言えば、脳内の危機管理センターです。危機を察知すると、体の面では即座に血圧を上げたり、心の面では不安を感じさせたりするわけです。
 ノルアドレナリン神経も重要な神経ですが、暴走するとどうなるかといいますと、大したことではないにもかかわらず、「大変だよ!」と興奮してしまうのです。いわゆる「パニック障害」です。
 ドーパミン神経をコントロールするのと同じく、セロトニン神経がコントロールすることができます。ですから、ドーパミン神経の「快」で舞い上がることと、ノルアドレナリン神経の「不快」で落ち込むこととの両方を抑えるという点で、セロトニン神経を活性化させることは重要だと言えます。


 要約しますと、セロトニンは心の面では、クールな覚醒、つまり平常心を保つはたらきをします。セロトニン以外にも心の状態を演出する神経には、快感や陶酔感を増幅する「ドーパミン神経」と、様々なストレスによって覚醒反応を引き起こす「ノルアドレナリン神経」があります。セロトニン神経は、この2つの神経に対して抑制作用を及ぼし、興奮と不安のバランスを図り、心の状態を中庸に保つはたらきをするということです。

 このように、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの3つはお互いバランスをとりながら、神経伝達物質としての働きをしていますが、脳内セロトニンが低下してバランスがとれなくなりますと、「抑うつ・パニック症状」、「不眠」を訴える方もみられることになります。


 片頭痛はミトコンドリアの機能低下によって起きる頭痛です。


 このために同時にセロトニン神経系の機能低下が必ずおきてきます。

 ”セロトニン神経系”の機能低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
 とくに、生活習慣の不規則・ストレスが脳内セロトニンの低下を引き起こす最大の要因になっています。
 不規則な生活をすれば、体内時計が乱れ、「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」の機能にも影響を及ぼすことになります。
  睡眠は日中活動している間に傷ついたミトコンドリアを修復させています。ところが不眠が持続すれば、修復されないため、ミトコンドリアの機能は悪化し、これに伴ってセロトニン神経系の機能を低下させ、ここに諸々の生活習慣の問題点が加わることによって、脳内セロトニンは低下することになり、このため脳内セロトニンの低下により睡眠障害に拍車をかけてくることになります。このような悪循環を繰り返すことになります。
  このようにして、ミトコンドリアの機能を悪化させ、このためにセロトニン神経系もこれに伴って機能低下させることになります。ここに生活習慣の問題点が追加されることによって脳内セロトニンが低下することになります。


 片頭痛患者さんの根底には、「脳内セロトニンの低下状態」が必ず存在し、このため、「抑うつ・パニック症状」、「不眠」を訴える方もみられることになります。


 このため、片頭痛でみられる症状を理解するためには、脳内セロトニンに関する知識は不可欠なものとなっています。
 

 例えば、片頭痛発作時には、前兆のかなり前に予兆と呼ばれる症状があります。
  例えば、あくびが出るとか,異常にお腹がすくとか,イライラするとか,眠くなるなどの症状です。
  このような症状があってから前兆が起こり,さらに激しい発作が起こります。そして、発作が鎮まった後も気分の変調があったり,尿量が増加したりするなど全身の症状を伴うことがあります。


 セロトニンは、脳内の様々な神経伝達物質に作用して「精神を安定させる」役割を持っており、さらに「満腹感」を感じさせ、食欲を抑制する作用も持っています。このため、強いストレスを感じたりイライラする時に甘いものや肉類などを食べたくなります。
  脳内セロトニンは、精神安定作用と食欲コントロール作用を合わせ持っていますので、不足すると「精神的不安定」と「食べたい!」という欲求がよく連動して現れます。特に甘いものや肉類を食べると一時的にセロトニン分泌が増え、一時的でも気持ちが落ち着くのでこうしたものへの欲求が強くなると言われています。
 女性は男性に比べて元々セロトニンの脳内合成が少ないので、ストレスを感じるような状況におかれると、脳内セロトニンが枯渇状態になって、情緒不安定になったり甘いものを中心とした過食へと走る行動が男性よりも強く出る傾向があります(ですから女性はケーキが大好きなんです!)。


 セロトニンを分泌する縫線核は、呼吸中枢にセロトニンを送って呼吸量を調整しています。縫線核は毛細血管中にセンサーを持っていて、血液中の酸素量などをチェックしているのです。体内の酸素量が不足したときにはセロトニンの分泌量を増やし、呼吸中枢を刺激します。
 したがって、セロトニンが不足すると中枢神経を充分に刺激できなくなります。そうなると酸素不足のままか、より不足した状態におかれることになりますので、それならば酸素をたくさん入れなければと、反応して生あくびが出るのだと考えられています。

 
 基本的に、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しています。
 ここに先程の述べたようなストレスが加わることによって「脳内セロトニンの低下」がもたらされ、このために予兆が引き起こされることになります。
  この脳内セロトニンの低下は、発作前から既に存在し、発作が治まった後もしばらくの間は持続し、後症状として気分の変調を残すことになります。

 
 これ以外にも、アロデイニアという症状が片頭痛にはみられます。

 日本では片頭痛の患者さんの60~80%ぐらいが、アロディニアを伴うといわれていますが、発症5年以上たたないと、アロディニアは出てこないことが多いようです。
 このアロディニア症(異痛症)は、「脳内セロトニンが減少している」ため”痛みを抑制することが出来ず”に容易に痛みが出現しやすくなるということです。
 逆に考えれば、アロデイニアがあるということは「脳内セロトニン低下」を意味します。


 このように、片頭痛ではその根底には「脳内セロトニンの低下状態」が存在します。
  基本的に、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップしています。
  発作時にだけトリプタン製剤を服用したからといって、機能低下状態に陥っているセロトニンを”一時的に”補填しているに過ぎないものです。例えて言えば、”線香花火”のようなものでしかありません。
 「脳過敏症候群」を提唱される先生方が申されるように、このような「脳内セロトニンの低下状態」トリプタン製剤だけで是正・改善できるはずはありません。このように簡単なものではありません。
 ですから、「抑うつ・パニック症状」、「不眠」をトリプタン製剤だけで是正・改善できるはずはありません。  


 こうしたことから、「脳内セロトニンの低下状態」を改善させるためには、「脳内セロトニン」を増やすしか解決策はありません。このため根気強い「セロトニン生活」や食事によってうまく工夫してトリプトファンを摂取し続けなければ改善は到底不可能であり、これまでの経験では最低3カ月は必要とされます。
 それにも増して、片頭痛発症の根幹には「酸化ストレス・炎症体質」というものが存在し、このために、活性酸素や遊離脂肪酸が過剰に産生されやすく、このため血小板凝集が引き起こされ、これが引き金となって血小板から”生理活性物質”であるセロトニンが放出されることによって、片頭痛発作につながっていきます。
 苦しい頭痛という痛みだけをトリプタン製剤で取り除いていますと、その根底にある病態は次第に増悪してくることになります。このため、自然と服用回数が増えてくることは避けることができません。このため、必然的に服用回数が増加して最終的には「トリプタン製剤による”薬剤乱用頭痛”」に至ります。
 

 以上のように、片頭痛を改善させるためには、脳内セロトニンを如何にして増やしていくかが1つの鍵になっています。


 このように、片頭痛を理解するためには、セロトニン神経系とは、脳内セロトニンとは、セロトニン神経系を弱らせ、脳内セロトニンを低下させる要因にはどのようなものがあるのか、脳内セロトニンはどのような作用をしているのか、さらに「脳内セロトニンをどのようにして増やしてくのか、その際の注意点にはどのようなものがあるのか、といった知識が必要とされます。


 今回のファイルは以下のものです。


  セロトニン神経系
   
http://taku1902.jp/sub450.pdf