片頭痛予防薬って、そんなに早く効くの??? | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 つい先日、NHKの「ためしてガッテン」で片頭痛の特集があり、このなかで頭痛専門医の方が「片頭痛の予防薬」を勧めておられました。

 それも、あたかも”魔法のごとく”たちどころに発作回数が減少でもするかのごとき、説明をされていました。
 これをご覧になられた、片頭痛患者さんが、このような”魔法のごとき”予防薬を求めて多数来院されました。私も、このような”魔法のごとき”予防薬が開発されたのかと興味深く番組をみせて頂きましたが、このような新薬(神薬)の紹介はまったくありませんでした。抗てんかん薬のデパケンでも提唱されるかとも思っていました。
 この番組をご覧になられて来院された方々は軒並み、40歳を過ぎた方々で、これまたテレビで「片頭痛発作時にはトリプタン製剤を毎回、服用するように」という”ご託宣”をひたすら信じて(「脳過敏症候群」を恐れるようで)、1軒の医院では月10錠しか処方してもらえないことから、2・3軒の医院をかけもちで受診して、10錠ずつ処方してもらい、月に20錠から25錠前後服用されておられる、トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛の方々ばかりでした。こうした場合は、現在の予防薬では、まず効かないと説明しても、一介の開業医風情の説明は到底受け入れられることはなく、取りあえず「予防薬は処方しておきましょう」といって、こういった場合は、頭痛専門医を受診すべきとお帰り願っています。
 当地区には、頭痛専門医がいないため、片頭痛患者さんは、今回のようなテレビを通じた情報がすべてのようです。いつもどうにかならないかとボヤクというか”つぶやいて”います。
 
 これまでも、以前にも述べましたが、予防薬とは、このように即効性があるのでしょうか??? 私には、まさに疑問とするところです。
 名古屋の寺本純先生は、こうした「トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛」は従来の予防薬ではまったく効果がなく、現段階では「ボトックス療法」しか 「トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛」からの離脱は不可能とされています。
 そして、このような「トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛」でなく、一般の「発作回数が増加」しただけの場合の予防薬の効果も以下のように説明されます。


 これらの薬剤が、すべての患者さんに効くというわけではありません。
 予防治療の有効率は決して高いものではありません。
 ほとんどの薬剤が、有効率は30~40%、すなわち10人中3~4人しか効きません。しかし、個人差が激しいので、薬によって有効率は異なります。効かなかった場合には、他の薬に変えてまた、2~3カ月様子をみる、という気長な対応が必要です。
 また、効果を確認できるまでの期間も短くないのです。
 予防治療に使われるどの薬剤も、効果を発揮するまでには4週間くらいはかかります。
 はじめの2週間くらいはまったく効かないのが普通です。3~4週めになっていくらか頭痛の回数が減っていると感じたら、効果があったと考えてよいでしょう。なかには、2カ月めになってやっと効果がはっきりしてくることもあります。


 このように、予防薬の効果そのものは、極めて緩やかな効果しかないとされます。


 このような効き目しかないため、鹿児島の田村正年先生は予防薬の多剤併用療法を提唱され、最初から3,4種類の予防薬を併用すべきとされます。


 このように、片頭痛の予防薬として最初から開発されたものは塩酸ロメリジンだけで、他の予防薬は、片頭痛以外の病気で使用されていた薬剤で、こうした薬剤を使っていた人がたまたま片頭痛を持っていて、服用中に偶然、発作回数が減ったことから、その予防効果が確認された薬剤ばかりです。このため薬効の確かなものは何一つないのが実情です。
 このような不確かなものが予防薬であり、これを勧めているわけです。


 それでは、最初から「片頭痛の予防薬」として開発された塩酸ロメリジンとは、どんな薬剤でしょうか?


塩酸ロメリジン(ミグシス、テラナス)


 Ca 拮抗薬は主に降圧薬として広く使用されている薬剤群です.片頭痛予防薬としても以前から使用されてきました.フルナリジンは約 25年の使用経験の蓄積があり海外では片頭痛予防薬として使用されてきましたが、副作用のために日本では発売中止になっており,現在は使用できません。日本では類似のジフェニルピペラジン系 カルシウム 拮抗薬として,塩酸ロメリジンが開発され,片頭痛予防の保険適用が承認された薬剤として 1999年より使用されています。カルシウム拮抗薬には一般に鎮痛作用があります。 .
 このカルシウム拮抗薬は高血圧症で最も多く使われる降圧薬です。
 高血圧とは、単に言うと、血管の壁が収縮して(縮んで)血圧が高くなる病気です。もちろん根本原因はいろいろありますが、この血管の壁が収縮する直接の原因は、細胞内にカルシウム(Ca)イオンが流れ込むことが引き金になっています。
 という事は、このカルシウムイオンが細胞内に流れこまないようにしてあげればいいわけです。このカルシウムイオンが血管壁の細胞内に流れこまないようにしてくれるのが、この「カルシウム拮抗薬」の働きというわけです。
 そして、この作用を片頭痛に応用したのが、塩酸ロメリジンなのです。
 こういったことから、Ca2+チャネル遮断作用を主作用とする片頭痛基礎治療剤とされます。この塩酸ロメリジンの特徴としては、その他の高血圧の薬と違って”脳の血管に選択的に作用する”という点です。
 つまり、他の全身の血管にはほとんど作用しないということなので、高血圧の薬としてではなく、あくまでも片頭痛の予防薬として使われています。
 このように、塩酸ロメリジンの作用はいくつか挙げられますが、主なものは血管収縮を抑える、つまり拡張させることによって、脳血管に対してのみ血流量の低下を抑えることにより、片頭痛を発生しにくくさせます。
 そのため、全身的な血圧を下げることにならないので、片頭痛の方に処方されることが多いのです。
 片頭痛がなぜ起こるのかは完全には解明されていませんが、脳血管の収縮が起こり、その反動によって拡張する、という発生機序といわれていますので、その第一段階の収縮をこの塩酸ロメリジンで抑えようという理由です。
 ですので、一端”拡張してしまった場合”には無効、ということになります。
 最大の矛盾点としては、頭痛の予防作用があるにも関わらず、副作用に頭痛があるということです。これは血管拡張作用によるものです。
 塩酸ロメリジンの副作用は比較的少ないほうですが、まれに眠気、めまい、ふらつき、吐き気、ほてり感などのような症状が現れる場合があります。
 塩酸ロメリジンの作用として、血管拡張作用のほか、血管の炎症抑制、拡延性抑制の改善、セロトニン放出のきっかけとなる血小板凝集抑制効果など多面的に片頭痛を抑制します。
 以上、塩酸ロメリジンという血管拡張薬が片頭痛予防に有効なのは、片頭痛の第一段階である「脳血管収縮」を抑制するからです。
 片頭痛は血管収縮に対する反動として、血管が拡張することによって起る頭痛なのです。
 塩酸ロメリジンは血管を広げる作用があるために「頭痛がひどくなる場合も無きにしもあらず」ということです。
 効きめが現れるには、先程述べた通りで、誰でも効くものでもありません。


 先日のテレビで紹介されるような即効性は期待できません。


 私は、予防薬がこのような効果しか得られない理由として、片頭痛の発症要因として何が考えられるのかを、まず想定すべきであり、この要因を中心として是正すべきと思っております。こういったことから、治療当初から「生活習慣の是正」が必要と考えています。
 これまで、予防薬の効果が思わしくなかった理由として、治療当初からの「生活習慣の是正」が徹底して行われてこなかったことにあると思っております。
 治療当初から「生活習慣の是正」が行われる限り、もっと予防薬の有効性を引き出すことが可能と考えております。


 片頭痛の大半の遺伝の様式は、メンデル型”の”単一遺伝子異常”の優性遺伝でなく、”多因子遺伝”の様式で、親や祖父母から受け継がれます。”遺伝的素因”が存在しても、これに”環境因子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということです。
 そして、”環境因子”として、どのようなものがあり、これらが日常生活を送る上で、どのように関与しているのかを知ることです。
 さらに、これまで述べてきましたように、慢性頭痛、このなかで”片頭痛がどのように発症してくるのか”を知ることによって、それに従って治療方針が決定されなくてはなりません。これをもとに、どのように「生活習慣」を改善すべきかを考えることが重要となってきます。

 
 片頭痛の治療の中心は、トリプタン製剤が出現する以前から、基本的な考え方として、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、リラックスするように」と、生活指導がなされて参りました。これはエルゴタミン製剤の時代からずっとです。(このように至極、当然のような生活様式でありながら、片頭痛の方は、このような一般常識である「生活様式」からかなりかけ離れている方が多いように見受けられます。)
 しかし、当時は、このような生活様式のあり方が「ミトコンドリア」「セロトニン不足」「体の歪み(ストレートネック)」と関連づけた考えではなく、あくまでも、経験的に考えられていました。
 これまで、神経内科関係の専門医が示されていた「片頭痛のセルフケアー自己管理」の具体的な内容を「片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である」という観点から理論的に再構築しさえすれば、「生活習慣の改善方法」は明確になるはずです。
 「片頭痛のセルフケアー自己管理」の具体的な内容のなかに”環境因子”が示されています。片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛であるという観点から「生活習慣の改善方法」を具体的に熟知して、”環境因子”をなくすことによって、片頭痛を根こそぎなくしてしまおうとする考え方で対処しなくてはなりません。
 結局のところ、トリプタン製剤や予防薬を併用するにしても(これらは、対症療法にすぎません)、同時に「生活習慣の改善」が同時に、平行して行われなくてはならないということです。
 片頭痛は、これまでの生活習慣の問題点によって起きてきた頭痛です。このため、自分の頭痛が、どのような問題点から起きてきたものかを自分で点検する必要があります。


 これ以上に大切な点は、「片頭痛そのものを予防する」ことが大切です。
 すなわち、緊張型頭痛の段階から対策を立て、片頭痛まで移行させないことです。


 本来、このような論点で、片頭痛治療の啓蒙活動は展開されなくてはならないはずです。


 先日のNHKの「ためしてガッテン」での片頭痛の特集は、結局、何を訴えたかったのでしょうか??? また、背筋の寒くなる思いをさせられました。