これまで、5月中旬以来、4カ月間に渡って”素朴な疑問”として、クドクドと述べて参りましたが、私と専門家の論点の差異を改めて述べておく必要があります。
しばらく休んでいたこともあり、再確認の意味で繰り返すことに致します。
これまで、慢性頭痛を論じる場面において、場違いな「脳神経外科医」が極めて少ない手術経験から、二次性頭痛の論点から、慢性頭痛の発生機序を論じてきたことに混乱の根源が存在していたことを、まず厳粛に反省しなくてはなりません。
まず、頭痛を考える場合、脳の中に異常のある”二次性頭痛”と脳の中に異常のない”一次性頭痛”と厳密に区別しなくてはなりません。
病歴からだけでも簡単に一次性頭痛か二次性頭痛かの区別はできますが、現在では、CTもしくはMRIといった画像検査が手軽に行える時代ですので、最初に”頭痛”を経験した際に、まず”二次性頭痛”を否定しておくことを原則としなくてはなりません。
そうした上で、脳の中に異常のない”一次性頭痛”換言すれば”慢性頭痛”をどのように捉えるかが問題となってきます。
私は、これまでの「先達の業績」から、”慢性頭痛”とは「一体なんぞや」ということをまず考えるべきであると思っております。これらの「先達の業績」とは、竹島多賀夫先生の”機能性頭痛一元論”、松井孝嘉先生の”頸性神経筋症候群”、下村登規夫先生の”MBT療法”、古和久典先生の”片頭痛の大半は多因子遺伝” という論説を指しています。
こうした論説を基にして、慢性頭痛をすべて”ひっくるめ一括”して、考えるべきものと思っております。この中には、「群発頭痛」や「その他の一次性頭痛」も確かにありますが、これらは頻度的に少なく、慢性頭痛の中の1割前後と推測されます。
こうしたことから、残りの9割を占める”緊張型頭痛”と”片頭痛”をひっくるめて一括して論ずるべきものと思っております。
(群発頭痛の場合、片頭痛と群発頭痛の間を行ったり来たりするものがあったり、片頭痛でありながら”あたかも群発頭痛”のような方々がおられることから、片頭痛も群発頭痛も一連のものと考えるべきかもしれません。その理由として挙げられることは、従来より、群発頭痛は「体内時計」の乱れから起きてくるものとされます。以前、目覚まし時計頭痛(睡眠時頭痛)でも述べましたが、この「睡眠時頭痛」と群発頭痛の類似性について言及しました。この体内時計は、理化学研究所の研究では、生物の間では、ミトコンドリアおよびセロトニンによって、制御されているといったことが示されています)
緊張型頭痛と片頭痛が連続したものであり、緊張型頭痛→片頭痛→慢性片頭痛(トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛)へと移行してくるものと考えれば、緊張型頭痛は、専門家に言わせると取るに足らない頭痛ということから東洋医学でいう”健康”の段階に位置するものであり、片頭痛は東洋医学でいう”未病”に相当し、”慢性片頭痛(トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛)”に至って、初めて”病気”としての頭痛となるということです。
東洋医学でいう「未病」を病気に進みつつある状態と捉えますと、はやい段階で「未病」のサインを認識し、しかるべき手を打てばその進行を抑え、本格的な病気に移行することを防ぐことができます。
中国最古の医学書「黄帝内経」の中において「未病を治す」という表現がありますが、未病は病気ではないのに、「治す」というのはどういうことなのでしょうか。
これは、健康であろうと病気であろうと、常に自らの生活習慣に気を配り、より本来の姿に近い心身の状況にもっていこうとする、生き方の姿勢を表している表現なのです。
このように片頭痛は”未病”の段階にあり、これにこれから述べるさまざまな生活習慣の問題点が加わり、いろいろな段階の片頭痛に変わってくることになります。(このため、「国際頭痛分類 第3版β版」で、片頭痛は細かく分類されていることになります。)
そして、日本頭痛学会の理事長の坂井文彦先生は、かねがね「生活習慣の見直し」を指導され、神経内科関係の専門家は「片頭痛のセルフケアー自己管理」の重要性を指摘され、さらに、マックス・ゲルソン博士、小橋雄太さん、SHOGOさん、kaolune さん、山崎有為さんら極めて多くの方々が血の滲むような工夫をこらされて片頭痛を克服されてこれらました。こうした方々はネット上でその体験談を明らかにされてきました。
さらに、これまで、規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、姿勢を正しくし、リラックスするようにと(ストレスを溜め込まないように)、姿勢を正しくしましょう、とトリプタン製剤導入前から「生活指導」がなされて参りました。
こうした生活指導により、片頭痛発作は完璧に抑制されてきたことを忘れてはなりません。
「規則正しい生活」とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活という意味で、最も自然で健康的な生活と言えます。
現代の生活環境は、健康的な生活を崩す要因が多く、24時間営業の飲食店や夜通しの娯楽、コンビニやテレビ・パソコンなどの普及により急激に変化しています。このような変化により、体の生体リズムにも悪影響が及んでいます。
生体リズムを無視した不規則な生活を送りますと、さまざまな不調を感じるようになります。このさまざまな不調の代表的な症状が”頭痛”です。
「恒常性(ホメオスターシス)」の維持には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深く関わっており、それはストレスなどに大きく影響されます。例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角形」と呼ばれます。
「生体リズム」は、脳の視交叉上核にある「体内時計」によって刻まれ、睡眠と覚醒のリズム、体温のリズム、行動のリズム、ホルモン分泌のリズムなどです。
そして、体内時計は、「ミトコンドリア」と「セロトニン」によって制御されています。
「食事をバランスよく摂る」は、ミトコンドリアがエネルギー産生を行う上、さらに「脳内セロトニンを増やす」ために必要不可欠です。
「睡眠を十分にとる」ことは、過剰な活性酸素によって傷ついたミトコンドリアの修復のため、さらにセロトニン神経の活性化に重要な役割を果たしています。このためには、”早寝・早起き”が原則とされ、起床時に朝日を浴びることが必須となってきます。
「ストレスを貯めない」は、ストレスはマグネシウム不足を引き起こすことから、ミトコンドリアの働きを悪くさせ、脳内セロトニンの低下をもたらし、活性酸素を過剰に産生させます。このことによって、頭痛を増悪させることになります。
「姿勢を正しくする」は、「背筋を伸ばす」ことによって、ミトコンドリアを活性化するために重要な意味があります。
「体の歪み(ストレートネック)」は、慢性頭痛の起点とされる緊張型頭痛の発症要因となり、片頭痛の骨格・屋台骨ともなるもので、「脳過敏・頭痛の慢性化」に関与します。
このような単純極まりない指導によって、トリプタン製剤が導入される以前の段階において、片頭痛は完璧に抑制されていたことを忘れてはなりません。
私達が、健康で・健全な生活を送るためには、「生体のリズム」に沿った生活を送り、「ミトコンドリアの働き」がよく、同時に「セロトニン神経系」が活性化され、これに伴う「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こさせない「前屈みの姿勢」を持続させない日常の注意が必要とされます。
「生体リズム」と「ミトコンドリアの機能」の2つは、私達が健康な生活を送るためには、必要不可欠のものです。
ということは、慢性頭痛発症には、「生体リズムの乱れ」と「ミトコンドリアの機能」が関与し、これから、諸々の問題を引き起こすことになります。すなわち「ミトコンドリアの機能」と連動して、当然「セロトニン神経系」が関与します。さらに、この両者は「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こすことになります。
「セロトニン神経系」は、私達の”生命活動”に直結する重要な神経系です。
「ホメオスターシスの三角」「ミトコンドリアの機能」「セロトニン神経系の機能」「体の歪み(ストレートネック)」の4つは、生活習慣の問題により、影響されます。
このように「生活の環境」という”環境因子”によって大きく影響を受けていることを総括・総合すれば、片頭痛の大半は”多因子遺伝”と考えなくてはなりません。
片頭痛が、ミトコンドリアの機能障害による頭痛であるといったことは、皆さんもよくご存じの「頭痛大学」のホームページにも示され、下村登規夫先生が”MBT療法”を提唱されていた時代にしきりに指摘されてこられたことです。
最近、平成25年2月に、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生によって、医師の立場を離れて工学博士の眼で、分子化学の立場から、片頭痛の大半は、遺伝素因である「ミトコンドリア活性の低さ」に、”環境因子”として、食生活が原因で「さらに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患であり、生活習慣病の一種とされます。
松井孝嘉先生は、頸性神経筋症候群なる概念を提唱され、緊張型頭痛におけるストレートネックの重要性を指摘され、この中で、緊張型頭痛と片頭痛は連続したものが存在するとまで示唆されています。
このように、緊張型頭痛も片頭痛も一連の連続したものであり、その基本病態として、「体の歪み(ストレートネック)」が存在することが示されています。
そして、竹島多賀夫先生の”一次性頭痛一元論”が存在します。
こういったことから、慢性頭痛とは、緊張型頭痛も片頭痛も一連のものとして捉えるべきものです。まったく切り離して論ずるべきものではありません。
このように、脳のなかに異常のない「慢性頭痛」は「健康的な生活」を送ることができないことに根本的な原因があり、”慢性頭痛”とは、「不健康な生活を送っている」という生体の警告の信号”サイン”と考えなくてはなりません。
端的に表現すれば、ややこしい問題が山積されると、この解決策が見つからない場合「頭が痛い」と表現する程です。単純に、これが、「頭痛の本質」と考えなくてはなりません。
経験的に、ストレスは慢性頭痛を増悪させる原因と知られています。
健康的な生活とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。この生活のリズムは「ホメオスターシス」によって維持されます。
そして、ストレスが、「ホメオスターシス」を乱す根源になります。
「生体リズム」とは、脳の視交叉上核にある「体内時計」によって刻まれ、睡眠と覚醒のリズム、体温のリズム、行動のリズム、ホルモン分泌のリズムなどです。
そして、「体内時計」は、ミトコンドリアとセロトニンによって制御されています。
この「ミトコンドリア」は、私達の体を構成する細胞の中のすべてにあり、エネルギーを産生しています。ということは私達の”生命の根源”ともなるものです。ミトコンドリアの機能がまともに働かなければ「健康的な・健全な生活」は送れないことになります。
ミトコンドリアは食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出していて、エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。
そして、私達が日中活動している際に常時活動している神経系がセロトニン神経系です。 このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時に「セロトニン神経系」の働きまで悪くなってきます。
「セロトニン神経系」は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。
「脳内セロトニンの働き」としては、1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する 2.自律神経を調節する 3.筋肉へ働きかける 4.痛みの感覚を抑制する 5.心のバランスを保つ、といった主な5つの働きがありますが、このように「セロトニン神経系」は、私達が”日常生活を送る際の生命活動”に直結する重要な神経系です。
先程の「恒常性(ホメオスターシス)」の維持には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深く関わっており、それはストレスなどに大きく影響されます。例えば、ストレスは自律神経を失調させ、内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。
「ホメオスターシス三角」を形成する3つのなかの、自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めています。
”セロトニン神経系”の機能低下に、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
このようにセロトニン神経は「ホメオスターシス三角」で重要な位置を占めています。
”生理活性物質”は、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスがよくないと、 局所ホルモン(エイコサノイド)(プロスタグランジン)のバランスを乱すことになります。 結果的に、細胞機能のバランスを欠くことになります。
このため、ミトコンドリアの機能、セロトニン神経系の機能に影響を及ぼします。
”腸内環境”は、欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。
また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。 家畜に投与された抗生物質が食肉を摂ることで体内に取り入れられ、有益菌を弱らせるようなこともあります。このようにして腸内環境は悪化してきます。
”腸内環境”の悪化は「頭痛を引き起こしやすい状態」を形成してくることになります。
こうした諸々の要因は「ホメオスターシス三角」そのものの釣り合いを乱す原因ともなり、頭痛を引き起こしやすい状態(頭痛体質)を形成してくることになります。
このように、「健康で・健全な生活」は、「恒常性(ホメオスターシス)」、ミトコンドリア、セロトニン神経系によって維持されています。謂わば、生命の根源ともなります。
慢性頭痛とは、このような「健康で・健全な生活」が送れないためのサインなのです。
先程も述べましたが、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛と考えられてきました。この点に関しては、文献的にも根拠のあるところで言うまでもないことです。
ミトコンドリアの働きが悪ければ、当然のこととして同時に「セロトニン神経系の機能低下」が引き起こされ、これに生活習慣の問題点が加わることによって「脳内セロトニンの低下」がもたらされることになります。
そして、この「ミトコンドリアの機能障害」と「脳内セロトニンの低下」の2つが重なることによって「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こされやすくなります。
私達は、日常生活を送る場面では、日常的に「前屈みの姿勢」を強いられており、このため、当然のこととして、「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてきます。
この日常的な「前屈みの姿勢」は緊張型頭痛の原因となり「体の歪み(ストレートネック)」が形成されることによって緊張型頭痛が増強してくることになります。そして、これに「脳過敏」の要因が追加され、片頭痛へと移行する際の骨組みともなってきます。
そして、この「ミトコンドリアの機能障害」と「脳内セロトニンの低下」と「体の歪み(ストレートネック)」3つの要因が「脳過敏」を引き起こす原因ともなってきます。
これら、「ミトコンドリアの機能」と「脳内セロトニンの量」と「体の歪み(ストレートネック)」の3つは、生活習慣の問題点によって影響を受けています。
このようにさまざまな要因が加わることによって、「脳過敏」が増強されることから、片頭痛が発症してくることになります。
このようにさまざまな生活習慣の問題によって片頭痛が発症してきていることから、片頭痛は”多因子遺伝”と考えるべきものです。逆に、片頭痛の大半は”多因子遺伝”と考えれば、先程述べたような生活習慣の問題が”環境因子”として関与すると考えられることになります。
緊張型頭痛と片頭痛の関係は・・片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine
片頭痛
big(true)migraine
連続体
緊張型頭痛 緊張型頭痛
small migraine (脳内セロトニンの関与)
そして、緊張型頭痛は、上のように分けて考えるべきです。
脳内セロトニンは、”痛みの調節”を行い、緊張型頭痛に関与します。
緊張型頭痛と片頭痛の差異は、片頭痛素因(「ミトコンドリアの働きの悪さ」)の有無で決まります。これには、ミトコンドリアDNAが関与しています。
こうした推論を基にして、これまで自分で片頭痛を改善・克服された方々の考え方をひとつずつ検証し、個々の方々がどうして改善されたかを検討することが大切になってきます。とくに検討させて頂いたのは、極めて多く枚挙に暇のないほどでした。
自分で片頭痛を克服された体験談には最も教えられることが多いはずです。このような体験談で示されることは、片頭痛の大半は”多因子遺伝”であるということを証明するものです。この点が最も大切なことであり、ここにすべての鍵が隠されていると考えなくてはなりません。このように工夫次第では改善されてしまうということであり、決して、遺伝的疾患でも不治の病ではないことを明確に示しています。
慢性頭痛という「脳のなかに異常のない頭痛」の場合、とくに片頭痛のような機能性頭痛という多面的・流動的な頭痛を考える場合、これまでの先達の研究業績を総括し、これらを統合するといった”思索”が最も必要とされると考えております。
とにかく、考えて、考え抜くといった作業が最も必要とされており、思索することなく、闇雲に実験を重ねようとも無駄であり、エビデンスは二の次とすべきであり、これらの思索に基づいた”推論”をもとにエビデンスは確立すべきです。
これまでの先達の研究業績としては、下村登規夫先生の片頭痛とミトコンドリア、セロトニンの関連性、竹島多賀夫先生の機能性頭痛一元論、古和久典先生の片頭痛の大半は”多因子遺伝”、松井孝嘉先生の頸性神経筋症候群の概念、さらに分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の”片頭痛の大半は、「ミトコンドリア活性の低さ」を遺伝素因として、これに”環境因子”として、食生活が原因で「さらに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患であり、生活習慣病の一種である”という論説が存在します。。
後、なすべきことは、これらを組み合わせて考えに考え抜くことです。
これを基にして、さらに実際の患者さんの現実を直視することです。これがすべてであるはずです。
実際の患者さんを厳粛に見つめ直す必要があります。
このように、「慢性頭痛は全体(トータルで)」から考えるべきで、片頭痛は慢性頭痛のなかで、どのような位置にあるのかといった”俯瞰した観点から”考えなくてはなりません。
慢性頭痛研究は、緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛・その他の一次性頭痛といったように個別に分けて考えるのではなく、あくまでも慢性頭痛全体から俯瞰した観点から研究を進めるべきです。
現在のように片頭痛、緊張型頭痛というように個別に研究するような考え方では、いつまでも慢性頭痛の本態解明には至らないということです。
学会を主導される方々は・・
これまで、学会を主導される方々は、日本にトリプタン製剤が導入される数年前からADITUS Japan から始まり、欧米の片頭痛研究が日本より遙かに進んでいるという考えから、「国際頭痛分類」を初めとして、欧米の文献を最優先され、頭痛研究も片頭痛が中心となり、緊張型頭痛を軽視することから、片頭痛だけを独立したものとして考える考え方がこれまでも一貫して貫かれ、このことは現在では、Headache Master School Japan(HMSJ)に端的に示されます。
片頭痛の病態とはこれまで、以下のように説明されてきました。
”片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。ストレスなど何らかの理由でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、最初の引き金となる「セロトニン」は”生理活性物質”としての作用です。片頭痛発作時には、「脳内セロトニン」が不足した状態にあります。トリプタンという薬は、脳内セロトニンと同じよりに、血管には1Bという鍵穴があり、トリプタンはこの鍵穴に作用して、血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
さらに血管の周囲から「痛み物質」が、シャワーのように血管に降り注いで、血管の拡張と炎症が起こっており、シャワーには1Dという鍵穴があって、トリプタンはこの鍵穴に作用して、「痛み物質」の放出をとめます。ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。”
このように片頭痛の病態をトリプタン製剤の作用機序の面からすべて説明されます。
皆さんも、頭痛外来を受診されますと、必ずといってよい位に、このような説明を受けてこられたことはご記憶にあると思います。
この結果、「脳過敏」「片頭痛の慢性化」の説明ができなくなったことから、最近では、片頭痛が「脳のなかに異常のない頭痛」とされていたのが、「中枢性疾患」(脳のなかに異常のある頭痛)とされることになりました。
基本的に、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップしています。
そして、トリプタン製剤によって、片頭痛という辛い頭痛から解放されたことによって、これで片頭痛の治療体系が確立されたとして、安閑とされる現状を直視すべきです。
しかし、片頭痛発症の根幹には「酸化ストレス・炎症体質」というものが存在し、このために、活性酸素や遊離脂肪酸が過剰に産生されやすく、このため血小板凝集が引き起こされ、これが引き金となって血小板から”生理活性物質”であるセロトニンが放出されることによって、片頭痛発作につながっていきます。
現在では、このように、神経伝達物質である「脳内セロトニン」の低下を補填するためにのみ片頭痛治療の主眼が置かれ、トリプタン製剤が第一選択薬とされていますが・・
本来、片頭痛治療の焦点は、「脳内セロトニン」をいかにして増やすか、さらに、「酸化ストレス・炎症体質」をどのようにして改善させるかに置くべきです。
しかし、専門家は、慢性頭痛とは一体どのような頭痛なのか、といった”根源的な考え方”というか、慢性頭痛全体からみた考え方がありません。脳のなかに異常のない頭痛をどのように考え・捉えるかといった”俯瞰的な”見方(考え方)がありません。
ただ、単に「国際頭痛分類 第3版β版」をもとに細かく分類しているだけです。この分類に従って、現実の患者さんを直視することなく、単純に患者さんの頭痛を分類しているだけであり、場合によっては、ひとりの患者さんが、この分類で判断すれば4つも5つも頭痛をもつことになります。このような移行型は当然のこととしてあり得ることでしかありません。決して連続したものとは考えることはないわけです。
ここに分類された「一次性頭痛」を全く別個のものとして考え、これらが相互にどのような関係があるのかを考えることはまったくありません。この点が最も問題になるところです。
「国際頭痛分類 第3版β版」では、とくに片頭痛を明確に”定義”し、片頭痛の基準に合致しない「一次性頭痛」を緊張型頭痛とし、いわば緊張型頭痛はゴミ箱的な性格の頭痛とされ、殆ど無視されます。そして、最近では、片頭痛が「脳のなかに異常のない頭痛」とされていたのが、「中枢性疾患」(脳のなかに異常のある頭痛)とされることになりました。ということは、片頭痛と緊張型頭痛はまったく別個の頭痛とされています。
こういったことから、緊張型頭痛と片頭痛が一連の連続したものとは考えません。
また、”多因子遺伝”とも考えません。さらに、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛であるとは、一切考えることはありません。
専門家は何かというと、エビデンス、エビデンスと申されます。しかし、このような”頭痛とは何か”といった根源的な考え方にはエビデンスも何もないはずです。
ここには、これまで頭痛患者さんと永年相対峙してきた経験から培われた”脳の中に異常のない頭痛”に対する洞察力しかないはずです。謂わば、頭痛に関する”禅問答”のようなものです。結局、慢性頭痛をどのように考えるかのセンス・経験が必要となります。
このように永年慢性頭痛と真剣に相対峙し、これによって培われた経験が問われています。これが、慢性頭痛を解き明かす羅針盤となるものです。このような地図にも等しいものなしで、慢性頭痛研究はあり得ないと心得るべきです。
このように考えれば、「慢性頭痛の病態」とは以下のようになります。
まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
その”環境因子”として、以下の6項目があります。
1.ホメオスターシス・・ストレスの関与
2.免疫(腸内環境)の関与
3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
4.体の歪み(ストレートネック)の関与
5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
6.ミトコンドリアの関与
このような観点から、「ミトコンドリアの機能改善」「脳内セロトニンを如何にして増やすか」「体の歪み(ストレートネック)の改善」「ホメオスターシスの維持」を中心とした、「食事療法」「運動療法」「生活習慣の改善」の3点から詳細な治療学が構築されなくてはなりません。
現在のような、頭痛発作時の「トリプタン製剤」、発作間歇期の「予防薬」などの「薬物療法」はあくまでも「補助的手段」として位置づけられるべきです。
ということは、片頭痛が発症した初期の段階で極力早期に”環境因子”の関与の少ない段階で対処すべきであり、さらに言えば、片頭痛に至る前の段階で、「生活のリズム」を乱す要因、すなわち「ホメオスターシス三角」を構成する3つの要因から生活様式の点検を行い、さらに「前屈みの姿勢」を強いる生活環境に置かれていないかどうかを点検し、問題点を抽出し、これを是正することによって、軽い頭痛の段階で芽をつみ取るべきです。
このように先手、先手と攻めて行くようなアクテイブに対処すべきで、あくまでも慢性頭痛そのものを予防する観点から対処すべきです。
現在のように、片頭痛発作が起きれば”トリプタン製剤”を服用しましょう、というのでは、市販の鎮痛薬で対処するのと、ほとんど変わらないことになります。ただ、鎮痛効果が抜群であるだけのことでしかありません。その根底に存在する病態はさらに進行しており、いずれ慢性片頭痛へと移行していく運命にあると考えなくてはなりません。
このように頭痛を根源的に捉え、慢性頭痛の臨床頭痛学は構築されなくてはなりません。
「臨床頭痛学」とは、「健康生活、美容の追求、長寿を願う」学問そのものと言えます。
ということは、人間本来の”正しい生活のあり方”を追求することが究極の目的です。
「医学」そのものも、本来は人間本来の”正しい生活のあり方”を追求することが究極の目的のはずです。
「臨床頭痛学」とは、「頭痛」をさらに細かく分類していくことだけが本来の目的ではなく、”慢性頭痛患者さんを頭痛から解放すること”を目指さなくてはなりません。
専門家の方々は、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤を導入したことによって、「片頭痛の治療体系」は確立したとされ、今後は「中枢神経の興奮性(脳過敏)の抑制に変化し,片頭痛の予防薬の開発目標は、皮質拡延性抑制をいかに抑える薬を見つけるかが鍵になっていると申されるところを考える限りは、もう頼りにはできないと考えるべきです。
以上のような論点から「新たな臨床頭痛学」が構築されるべきと考えております。