片頭痛の大半は”多因子遺伝”なの??? | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 片頭痛の大半は”多因子遺伝”です。この論点を明確にしなくては、「臨床頭痛学」の基本は成り立たないことになります。この点がいつまでも明確にされることがありません。 このため、これまでの論点を改めて整理しておくことが重要になります。
 これまでの、繰り返しに過ぎませんが、読者の皆さんは飽きたかも知れませんが・・。


専門家は、・・


 片頭痛を生じる単一遺伝子性疾患としては、家族性片麻痺性片頭痛1型、家族性片麻痺性片頭痛2型、CADASIL、MELAS、Osler-Rendu-Weber症候群がこれまで確認されております。このようなタイプは極めて頻度的に少ないものです。例外的です。
 しかし、専門家はこのように、片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべての片頭痛が、あたかも、単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考えており、こうした関連遺伝子の探索に日夜、腐心される現状が存在しています。


「頭痛は遺伝するのか」という関しては専門家は以下のように説明されます。


 ある程度は遺伝します。頭痛に限らず家族内で同じ病気にかかられることがあります。一部は遺伝で、一部は同じような生活環境や食習慣によると考えられています。
 オランタでの調査ですが、前兆を伴わない片頭痛患者の第一度近親者(両親、兄弟・姉妹,子)が前兆を伴わない片頭痛になる危険性は無縁の人と比較して1.9倍になります。また、配偶者(妻、夫)が前兆を伴わない片頭痛になる危険性は約1.5倍です。第一度近親者は遺伝と環境の両方が共通しており、配偶者は遺伝的には他人で、食事を含め生活環境が共通しているということより、前兆を伴わない片頭痛では遺伝と環境の両方が関与していると考えられています。一方前兆を伴う片頭痛では、配偶者の危険度は0.8倍(約1倍で全くの他人と同じ)、第一度近親者はなんと3.8倍になることが報告されています。 前兆を伴う片頭痛では遺伝の関与がかなり強いと理解されています。
 しかし、現実の患者さんでは、前兆を伴う片頭痛の患者さんが、頭痛発作時に毎回、前兆を伴うとは限らず、時に、前兆を伴うことなく頭痛だけのこともあります。

 それではどのような体質の場合に片頭痛になりやすいかということですが、まだ確実な証拠は少ないのが現状です。ドパミン受容体遺伝子、MTHFR遺伝子、ACE遺伝子などのあるタイプ(血液型や背が高い低いといった個人差としての違いと同様に個性の一部と考えてください)が片頭痛になりやすいのではないかということが少しづつわかってきたところです。この遺伝子を持っていると100%片頭痛になるというわけではありません。 また、持っていなければ絶対に片頭痛にならないというわけでもありませんので、現状ではあまり気にされないほうがよいでしょう。将来的には、遺伝子のタイプによって、片頭痛にかかりやすいかどうかや片頭痛になった場合にどのような治療法が合っているかというようなことがわかるようになるかもしれません。こういうことを目指して頭痛の”遺伝子研究”が進められています。


 こういったまさに歯切れの悪い説明に終始され、はっきりと「片頭痛の大半は、”多因子遺伝”である、といった論点で述べられることはありません。それでは、どうして、このような論点で述べることはないのでしょうか?


 専門家は、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、欧米の研究者が”多因子遺伝”の観点から考えないことから無条件に受け入れているようです。結局、”片頭痛の大半は多因子遺伝である”といったことは容認されることはありません。
 「片頭痛の大半は、”多因子遺伝”である、といった考え方は、鳥取大学医学部・神経内科のグループの先生方の考え方であったため、容認されない理由にもなっています。

 この点は昨日も、明確にしたばかりですので、繰り返しません。

 さらに、専門家が遵守されるのが「国際頭痛分類 第3版β版」です。ここには明確には記載されてはいませんが、この「国際頭痛分類第3版 β版」は元を正せば、欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものです。トリプタン製薬メーカーの真の目的とすることは、製薬市場拡大の基盤として片頭痛を存続させ続けることです。片頭痛を存続させるためには、片頭痛は片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく思い込ませることが必要になってきます。こういったことから、片頭痛は”多因子遺伝”では、あってはならないことになっています。こうしたことから、片頭痛が”多因子遺伝”であるとは、一切記載されることなく、あたかも”遺伝的疾患”とされているようです。

 このように、決して、エビデンスに基づいたものではありません。
 このように極めて曖昧なオブラートに包まれたようにされたままになっています。
(”多因子遺伝”とすれば、片頭痛は生活習慣病そのものとなり、予防可能となってしまいます。ということは、この世から、片頭痛が消滅する可能性があるということです)


実際には、どうなのでしょうか


 片頭痛は、あたかも「遺伝」しているような「印象」はあります。しかし、その遺伝の様式は、メンデル型”の”単一遺伝子異常”の優性遺伝でなく(あったとしても極めて少数です)、大半の片頭痛では、”多因子遺伝”の様式で、親や祖父母から受け継がれます。 この”多因子遺伝”とは、複数(3つ以上)の関連遺伝子をもとに、これに環境因子が加わって病気が発症してくるものを言います。ということは、”遺伝的素因”が存在しても、これに”環境因子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということです。これにはミトコンドリアDNAが関与しています。


 こうしたことを裏付ける臨床的事実として挙げられる点は、以下のようなものです。


 富永病院・頭痛センターの竹島多賀夫先生によれば、反復性の片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪するとされます。
 Lyngbergらの報告では、成人片頭痛患者さんを12年間追跡し、完全・部分寛解:42 %、不変:38 %でした。一方、20 %は変容性片頭痛つまり片頭痛が慢性化しました。


 このような事実をどのように考えるかが、ポイントになります。3割の方々が治っているということです。そして、4割の方々が、発作を繰り返しているということです。
 ここに、片頭痛が”多因子遺伝”であるかどうかの鍵があると考えるべきです。
 仮に片頭痛が”遺伝性疾患”であるとすれば、治癒してしまうものがあるといったことは論理的に説明ができないことになります。


  トリプタン製剤が導入される以前から、生活指導として、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、リラックスするように」とされ、これで完璧に片頭痛発作が抑制されていたことを思い出すべきです。
 さらに、神経内科関係の専門医は、「片頭痛のセルフケアー自己管理」を完璧に行う限り、”9割”の方々はうまくコントロールされると豪語されていることも忘れてはなりません。

 こうした2つの事実は、取りも直さず、片頭痛の大半は”多因子遺伝”であることを如実に示しているはずです。”環境因子”を取り除けば、改善されることを意味します。

 現実に、専門家による指導でなく、患者さん自ら自分で工夫され片頭痛を克服されているという事実がこれを証明しているはずです。このような自分の体験をもとにして、多くの方々が「片頭痛改善マニュアル」を作成され、これらを実践された方々の喜びの声がネット上では多数掲載されています。
 そして、「ゲルソンの食事療法」が存在します。以前、詳述しました。
 現実に、日本頭痛学会の理事長は、常々、「生活習慣の見直し」を強調されかつ指導して来られました。これで改善されるとされます。


片頭痛が"多因子遺伝"であるとの根拠として・・


 ”遺伝素因”が同一であるはずの一卵性双生児の場合、必ずしも2人とも片頭痛を発症することはありません。
 すなわち、一卵性双生児で、”遺伝的素因が全く同一である”はずのものが、必ずしも2人とも片頭痛を発症するわけではないという事実があります。
 これは、何を意味しているのでしょうか? その後の後天的な要素、環境因子等々が関係している証拠ではないでしょうか?
 一卵双生児の「片頭痛を発症」していない方に、もう片方の片頭痛を発症している人の「片頭痛の環境因子」を多数負荷すれば、恐らく、頭痛は誘発されるでしょう。
 ただ、このような「実験」は人道上、許されることではないため、されていないだけの話です。
 単純に言えば、一卵性双生児の子供の2人の学業成績が全く同じ成績かどうかをみれば理路整然としているはずです。二人とも優秀な成績ではありません。


 もう一つ興味ある事実があります。それは、東京女子医科大学の清水俊彦先生が「頭痛女子のトリセツ」(マガジンハウス)の中で、以下のような興味深い記述をされています。


 もともと母親が頭痛持ちだったのですが、本人は今まで全く頭痛というものを経験したことがなかったある女性がおられました。
 嫁いだ先では、旦那さんを含めて、おじいちゃん、おばあちゃん・・家族みんなひどい頭痛持ちの家系でした。ところが頭痛の経験のなかった彼女が、嫁いだ途端にひどい頭痛に悩まされるようになり、私のところへ来たのです。
 話を聞いてみると、嫁姑の争いもなく生活環境的にはストレスも全くなく、特に問題はありませんでした。もしかして「片頭痛は伝染する病気なの?」といった疑問も湧いてきます。
 が、じつはそうではありません。さらに話を聞いてみると、この嫁いだ先の食生活に問題があることがわかりました。ほぼ毎日、洋食の連続。彼女は、もともと母親と同じ片頭痛を起こすかもしれない体質を持っていました。そこへ、血管拡張物質を多く含んだ毎日の食事が刺激となり、ついに脳の血管が耐えきれず、片頭痛を発症してしまったというわけです。


 あなたの兄弟姉妹がすべて片頭痛を発症しているのでしょうか。もし、そうであれば極めて特殊なケースと考えるべきです。あなたの家族全体の食生活・食習慣・住環境に問題があるものと推測されます。兄弟姉妹すべてが片頭痛を発症していません。


このように、これまでの研究から


 家系解析や双生児研究などの結果,一般の片頭痛は多遺伝子的疾患,すなわち高血圧や糖尿病などの疾患と同様に,複数の遺伝因子と複数の環境因子が関与している病態であることが示されています。.
 頭痛発作のトリガーになる要因としては、遺伝的因子(素因)と環境因子(誘因)があります。頭痛は複数の環境因子と遺伝因子が重なって発症します。遺伝子は、環境的トリガー、すなわち外的因子(天候の変化、運動、飲酒、光・音・臭い刺激など)や内的因子(ホルモン・睡眠習慣・心理的な変化など)に対する感受性に関与しています。分離解析の結果から、頭痛は複数の遺伝子の構成が関与して発症することが示唆されています。
 この点は Cady の機能性頭痛一元論のなかに明確に示されています。
 ちなみに高血圧や糖尿病などの生活習慣病も多因子疾患と考えられています。患者対照関連解析によって患者集団内で正常対照集団内より頻度の高いアリル(対立遺伝子)を見つけることができます。このアリルが存在する遺伝子が疾患感受性遺伝子であり、その同定により、疾患発症の機序や他の発症因子との関係の解明が期待されます。


”多因子遺伝”をする生活習慣病

 このような”多因子遺伝”をする病気としては、身近なものとして、生活習慣病であるⅡ型糖尿病があります。Ⅱ型糖尿病は、糖尿病になりやすい素質(遺伝素因)をもっている人に、”環境因子”として、食べ過ぎや運動不足による肥満、アルコール、精神的ストレス、年をとること、その他多種多様の要因が加わって発症します。
 こうしたことから、糖尿病の治療方針として、この環境因子の是正に努めるべく「食事療法」と「運動療法」がまず行われ、これに「薬物療法」が追加されます。
 本態性高血圧の場合は、遺伝的体質的素因に加え、食塩摂取量、肥満、寒冷、ストレスなどの環境因子が加わり発症すると考えられています。
 このように生活習慣病すべては、”多因子遺伝”と考えられています。


 その他、”多因子”神経疾患として、特発性てんかん、孤発性パーキンソン病、多系統萎縮症、片頭痛、多発性硬化症が挙げられています。



 分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、片頭痛の大半は、その遺伝素因である「ミトコンドリア活性の低さ」に、”環境因子”として、食生活が原因で「さらに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)を形成することにより引き起こされる生活習慣病とされると述べておられます。
 さらに片頭痛の”環境因子”として「ミトコンドリアを弱らせる”環境因子”」「脳内セロトニンを低下させる”環境因子”」「体の歪み(ストレートネック)を引き起こす”環境因子”」の3つがあります。これらの”環境因子”の関わり方は人それぞれです。
 片頭痛という頭痛は、皆さんのこれまでの生活習慣とくに食生活・姿勢等の問題が原因となり、謂わば、あなたの”生き方(ざま)”すべてが関与して起きてくるものです。これらは、いずれも日常生活を送る上で、”何気なく無意識に”行ってきた「食事・姿勢・体の使い方」が原因となっていることを意味しています。このために、あたかも”遺伝的疾患”であると誤解された理由でもあります。とくに食習慣の関与が大きいのが特徴です。


 さらに、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、”多因子遺伝”というよりは「代謝異常」と考えることの方が妥当ではないかと、述べられるほどです。


  片頭痛は「多因子遺伝」か「代謝異常」なのか?

    http://taku1902.jp/sub029.pdf


母から娘へと片頭痛が遺伝する理由はミトコンドリアにあった!?

 母と娘の間で片頭痛が遺伝しやすいのは、ミトコンドリアに関係があります。遺伝にDNAが関係することは誰もが知っていることですが、細胞内のDNAとは別に、ミトコンドリアは独自のDNAを持っており、この”ミトコンドリアDNA”が片頭痛の遺伝に関係しています。
 ヒトの精子には16個程度のミトコンドリアが存在します。一方の卵子は10万個といわれています。そして、精子に含まれるミトコンドリアは受精後にすべて死滅してしまいます。父性よりも母性のほうが強いということです。
 ということは、ミトコンドリアのDNAに関していえば、卵子に含まれるものだけが子どもへと受け継がれます。つまり100%の母性遺伝です。もし母親のミトコンドリアの代謝活性(元気さ)が低ければその影響を当然受けやすくなります。さらに、男性に比べて女性のほうが脳内セロトニンの合成量がもともと少ないわけですから、片頭痛の症状が発生しやすいのです。母から娘へと片頭痛が遺伝してしまうのには、こういう理由があったのです。
 このように、私達の体を構成する細胞のDNAは両親の遺伝子を受け継ぐのですが、その細胞内に存在するミトコンドリアのDNAは母親の遺伝子だけが引き継がれていくことになります(100%の母性遺伝)。
 そのため、母親のミトコンドリアの数が少なく活性が低くければ、その子にはその性質が引き継がれ易くなります。また、男性に比べ女性の脳内セロトニン合成能力はもともと少ないことなどの理由から、母娘や姉妹に片頭痛持ちであることが多くなります。男性のミトコンドリア活性がその子に引き継がれていくことはありません。
 ミトコンドリアの活性が低くなると、細胞が活動するために必要なエネルギー発生量も少なくなります。その結果、器官や組織を構成する個々の細胞のエネルギーの不足が直接的に器官の機能低下を引き起こすことになります。


「細胞内共生説」
 
 私たちにとって大切な役割を持ったミトコンドリアですが、実はもともとは細胞内には無かったものだと言われています。現在最も支持されている説は、地球上に初めて現れた生物、原核生物から真核生物、つまり細胞核をもつ生物に進化する過程で、ミトコンドリアの祖先を体内に取り込んだと言うものです。
 ミトコンドリアは細胞内で細菌のように見え、実際、昔真核細胞生物に入り込んだある種の細菌がその先祖であると考えられています。

 ミトコンドリアの祖先であるその細菌は、現在のその機能と同じく、酸素を使ってエネルギーを作り出していました。この方法は、酸素を使わない場合に比べ、20倍近い効率でエネルギーを作り出すことが出来ます。その細菌(αプロテオ細菌とよばれている)を酸素をつかうことの出来ない真核細胞生物が細胞質の中に取り込み、共生をはじめたのです。
 その細菌を取り込んだ真核細胞生物、つまり宿主細胞はその共生を始めた初期にそのミトコンドリアの先祖から、DNAの大部分を奪い、自らの核内DNAへと情報をうつしかえたようです。そしてミトコンドリアがふたたび外へと出て、生きてゆくことの出来ないようにしました。
 今ではミトコンドリアは細菌だった時代の1割程度のDNAしかもっていないようです。

ミトコンドリアDNAについて

 そしてミトコンドリアは細胞核にあるDNAとは違う、独自のDNAを持っていることが分かりました。ミトコンドリアがDNAを持っていることは、1963 年スウェーデンのストックホルム大学の生物学者マーギット・ナス教授が発見しました。ミトコンドリアのDNAは本来のDNAと混乱しないよう、「ミトコンドリアDNA」といいます。ミトコンドリアには核のようなものはなく、数千ものミトコンドリアDNAがミトコンドリア内に存在することが分かっています。
 ちなみに、ミトコンドリアを持つ宿主細胞はミトコンドリアが自分に刃向かうことのないよう、対策もしているようです。
 まず、宿主細胞は、ミトコンドリアの分裂をコントロールできるようにしています。
 核内の遺伝子から作られるタンパク質で、ミトコンドリアを強制的に分裂させているようです。
 また、有性生殖を行う生物のほとんどでは、母親由来のミトコンドリアだけが子供へ伝えるようになっています。これをミトコンドリアの母性遺伝といいます。
 このことで、違う種類のミトコンドリアDNAが混ざり合い、多様性を持って、進化をとげることを妨げているのではないでしょうか。
 このようにミトコンドリアは細胞核に大きく支配されているようです。
 つまり、ミトコンドリアは細胞内で、奴隷のように扱われている、と考えられます。
 ミトコンドリアDNAは母親のものだけが子供に伝わることが分かっています。父親のミトコンドリアDNAは卵と精子が受精した後、排除されることが確認されています。みなさんの体の中のミトコンドリアDNAはすべておかあさんと同じミトコンドリアDNAなのです。なぜおとうさんのミトコンドリアDNAが伝わらないのかは、色々と説がありますが、いまだによく理解されていません。

 さて、この特性は生物の進化を調べるのにある利点があります。それは、ある特定の祖先にたどり着くと言うことです。例えば、皆さんのDNAはどの祖先のDNAですか?と聞かれた場合、まずおとうさんとおかあさんがいて、またそれぞれにおとうさんとおかあさんがいます。そして、それぞれにまたおとうさんとおかあさんがいて・・・と途中であまりにも多い人が出てきてわけが分からなくなってしまいます。ところが、ミトコンドリアDNAの場合は母親のみを辿ればいいのですから、一人の女性にたどり着くわけです。 この特徴は、種がどのように進化してきたかを調べるのに非常にわかりやすくて助かります。
 このように言いますと、すべてが母親から遺伝素因を受け継ぐように思われますが、しかし、臨床的には、父親からの遺伝素因を受け継ぐ場合も当然あります。
 この理由は、ミトコンドリアの機能に関する遺伝子はミトコンドリアのDNA に乗っているものと核内の染色体に乗っているものがあります。核内にあればメンデルの遺伝法則に従って、父親から遺伝し、ミトコンドリア内であれば母親から遺伝します。
 今後は「母系遺伝」という言い方をやめて「細胞質遺伝」という言葉に統一することが望ましいように思っています。

 片頭痛の場合、母親から引き継がれる遺伝素因として生まれつき存在する「ミトコンドリア働きの悪さ」の程度は”さまざま”です。この程度によって片頭痛の発症時期が左右されることになります。極端に悪ければ、発症年齢も低くなるということです。小児期に発症することになります。
 細胞は増える時に、自らの遺伝子をコピーします。このコピーですが、時々間違ってコピーされることがあります。この間違いを「塩基置換」といいます。また、コピー時だけでなく、何らかの刺激などで、DNAの配列が変わってしまう塩基置換もあります。塩基置換は致命的なときもありますが、なにも影響がなかったり、少し影響したりする場合があります。塩基置換は生物が環境に適応するのに、とても大切なことです。もし遺伝子が完璧にコピーばかりされていたら、環境が変化した時、その生物はそれに適応できずに絶滅してしまいます。
 このように、ミトコンドリアDNAは、環境の変化に対応して、変化する特徴があります。このことは、片頭痛の場合の遺伝的素因であるミトコンドリアDNAを考える際に重要になってきます。


 このことは、片頭痛関連遺伝子が、単純には同定できないことを意味しています。


ミトコンドリアDNAとは一体??

 この遺伝素因とされる「ミトコンドリア活性の低さ」は、患者さんそれぞれ程度は異なっているはずです。この遺伝因子とされる”ミトコンドリアDNA”とはどんなものでしょうか。この本質を考えることが重要と思われます。

 生まれつき存在する「ミトコンドリアの働きの悪さ」が存在するところに、いろいろな状況が加わってくることによって「活性酸素」が過剰に産生されます。このため、さらにミトコンドリアを傷つけることによって、ミトコンドリアの状態は変化してきます。こうしたことは時々刻々と変化しています。さらに母親から受け継がれた”生まれつき存在する「ミトコンドリア(”ミトコンドリアDNA”)の働きの悪さ」”は各人各様であり、さまざまなはずです。
 こうしたものを「遺伝子異常」として、捉えようとしていることを意味しています。
 単純に考えても、このように各人各様であり、さらに状況によって、ミトコンドリアの状態は時々刻々変化しています。これまで確認されたものは、マグネシウムが異常に低下した状態が持続したために死滅したミトコンドリアの残骸を偶然発見したものと思われます。さらに、単一の遺伝子による極めて頻度の少ないものを発見したものと考えるべきです。このように考える限り、こうしたものを遺伝子異常として捉えることには無理があります。このため、関連遺伝子をすべて確認できるまでに、今後何年かかるのでしょうか?
 恐らく、1,000年かけても無理のようにしか思われません。


 こうした無駄な研究に、私達の税金から捻出された貴重な国家予算の一部から研究費が出ていることを考えるなら、こうした無駄な研究をすべきではなく、片頭痛を”多因子遺伝”と考え、その”環境因子”の探索を優先すべきであり、ここに指導者としての資質が問われているはずです。


 このように、片頭痛の大半は”多因子遺伝”と考えるべきです。
 こうしたことが未解決のまま、いつまでも放置されるべきではありません。

 片頭痛を”多因子遺伝”と考え、慢性頭痛に関する「臨床頭痛学」は構築すべきです。


  まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
 さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
 片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
 そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
 その”環境因子”として、以下の6項目があります。

  1.ホメオスターシス・・ストレスの関与
  2.免疫(腸内環境)の関与
  3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
  4.体の歪み(ストレートネック)の関与
  5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
  6.ミトコンドリアの関与


 現段階では、神経内科関係の専門医が提唱される、「片頭痛のセルフケアー自己管理」の具体的内容に、この”環境因子”が存在すると考え、6つの要因を挙げたにすぎません。
 
 こういったことから、現在のように「関連遺伝子」の探索という無駄な労力と研究費をつぎ込むことなく、”環境因子”の同定に全精力を注ぎ込むことが最優先されるべきです。 このためには、片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛であるというのが基本になることは言うまでもないことです。
 「片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛である」とすれば、この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。片頭痛も同じように、この活性酸素が関係しています。
 糖尿病学会は、糖尿病を”多因子遺伝”と捉え、すでにその”環境因子”を同定されました。さらに、最近では、糖尿病研究は、活性酸素およびミトコンドリアの観点から病態の解明が進められています。
 片頭痛の大半が”多因子遺伝”と考える限りは、糖尿病学会と遙かに遅れをとっていると言わざるを得ません。まさに、雲泥の差というべきです。

 どうしてこのような考え方をされないかは、学会を主導される方々が、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、日本の業績を全く無視し、「国際頭痛分類第3版 β版」を絶対的なものとする、すなわち欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者に従うことにより、片頭痛が改善されてはならないと考えていることにあり、このために日本糖尿病学会のように、同じ片頭痛の大半が”多因子遺伝”と考えられながら、絶対に、片頭痛が”生活習慣病”であるとの立場をとらない理由があります。


 しかし、片頭痛が生活習慣病といった観点から、片頭痛治療のための「食事療法」「運動療法」さらに、「生活習慣の改善の具体策」が提示されなくてはなりません。
 このようになれば、当然のこととして「片頭痛は予防すべき頭痛」となります。
 現在のような「薬物療法」は、あくまでもレスキュー的な「補助手段」となります。
 こうしたことから、現在のようにトリプタン製剤が片頭痛の第一選択薬とは成り得ません。


片頭痛の大半が”多因子遺伝”であるとすれば・・


 片頭痛の発症様式は、これまでも述べていますように、以下のようになります。


     片頭痛はどのようにして発症するのでしょうか????
      
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12032919047.html

 このように考えられるとなれば、片頭痛は予防すべき頭痛ということに他なりません。
 まず、緊張型頭痛の段階から対処すべき頭痛ということになります。

 結局、この段階から、市販の鎮痛薬を絶対に服用せずに、頭痛を改善させ、「ミトコンドリアを弱らせない」「脳内セロトニンを低下させない」食事指導および運動療法、生活習慣の改善を徹底させ、「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こさせない「生活指導」を徹底させだけのことです。これは、遺伝素因の有無に関係なく共通して行うべきです。
 特に、家族・親戚のなかに片頭痛持ちの方がおられれば、これらを厳重に・徹底して行わなくてはならないことは申すまでもありません。
 このように徹底しさえすれば、トリプタン製剤の出る幕はないはずです。
 そうなれば、現在のように、「国際頭痛分類第3版 β版」に基づいて頭痛診断を行う専門医も必要もなく、さらにHeadache Master School Japan(HMSJ)も必要はありません。
 このようにすれば、啓蒙活動を徹底して行うことにより、9割の慢性頭痛の方々が改善に導かれることになるはずです。そして残された1割の慢性頭痛の解明に、現在の専門医が専念すれば、これで全てが完結することになります。


 ただ、片頭痛の場合は、従来のように「生活指導」もなく、安易にトリプタン製剤を処方する限りは、中には(全てとは言いませんが)トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛を併発し、頭痛地獄に陥れることになる可能性が秘められてはいますが、こうした場合でも、これにより死に至ることは、あり得ません。このため、これまでこうした”多因子遺伝”かどうか等はどうでもよく、放任され、トリプタン製薬メーカーが潤いさえすればよかったということでしかなかったのではないでしょうか?

 しかし、糖尿病の場合は、環境因子の是正に努めるべく「食事療法」と「運動療法」がまず行われなければ、最終的には、腎不全・失明・神経障害という3大合併症を併発して死に至る運命にあります。
 ただ、片頭痛の場合は、食事指導および運動療法、生活習慣の改善をされない場合には、一生、片頭痛を繰り返すだけに過ぎません。こうしたことから、死に至らぬため安易に考えられているものと思われます。このことはトリプタン製薬メーカーを潤おわせます。


 しかし、9割にも及ぶ慢性頭痛患者の改善が期待できると仮定すれば、残された1割の慢性頭痛の病態も自ずと明らかになるように思えてならないからです。といいますのは、群発頭痛の患者さんのなかには、片頭痛と群発頭痛の間を行ったり来たりする方が多いように思われ、これらが様相を変えてくるものと予測されるからです。そうなれば、片頭痛の慢性化したものが根絶される時代が到来することになり、現在、まったく病態不明とされる「その他の一次性頭痛」だけが残されるだけとなるはずです。

 こうなれば、「国際頭痛分類第3版 β版」という診断基準も必要なくなり、ただ単に「一次性頭痛」か「二次性頭痛」かの鑑別だけで、手術の必要な疾患のみ診療をおこなう脳神経外科医との役割分担が明確になってくるはずです。そうなれば、頭痛の専門家は脳神経外科医だけであり、従来通り、慢性頭痛の1割が「二次性頭痛」であったことから、脳神経外科医本来の仕事に専念できることになってくるはずです。
 どうしてこのような役割分担を明確にされないのでしょうか?


 問題は日本糖尿病学会が、このような糖尿病の治療方針として、環境因子の是正に努めるべく「食事療法」と「運動療法」がまず行われ、これに「薬物療法」が追加されますが、現実には、厚生労働省が特定健診というメタボ対策の制度を設けて、糖尿病対策を徹底して行われるにも関わらず、腎不全・失明・神経障害という3大合併症を併発して死に至る方々は後を絶ちません。

 このような現実があるにしても、本来、学会を主導される方々が率先して、片頭痛の大半が”多因子遺伝”という立場から、片頭痛の治療方針の見直しを図るべきです。
 そして、糖尿病学会のように、「糖尿病治療のてびき」「食品交換表」に匹敵する治療指針を作成しなくてはならないはずです。
 そして、片頭痛撲滅というキャンペーンを大々的に行う啓蒙活動を展開すべきです。
 現在の治療の考え方は、全く逆の方向に向いていると言わざるを得ません。
 これが、慢性頭痛患者さんの救済のあるべき姿と私は考えております。
 

 これまで、「全国慢性頭痛友の会」という「慢性頭痛患者さんの救済団体」が存在したようですが、昨年4月から何故だか休会になっているようです。
 現在の学会を主導される方々は、いつまでも”遺伝的疾患”とされていることを鑑みれば、本来であれば、「全国慢性頭痛友の会」が学会とは別に独立して「慢性頭痛患者さんの救済」の立場から立ち上がらなくては、何のための「患者会」なのでしょうか?
 ここにも”素朴な疑問”が投げかけられます。
 それとも、「全国慢性頭痛友の会」もまた、トリプタン製剤の市場拡大だけに啓蒙活動をされて来られたというのでしょうか?


結論として、言えることは・・


 結局、片頭痛が”遺伝的疾患”か”多因子遺伝”と考えるかは、簡単には結論はでないと思われます。それは、片頭痛のなかには、単一遺伝子から生じるものがあり、このため”遺伝的疾患”と考えても問題はなく、また、多くの場合(大半の片頭痛では)あたかも”多因子遺伝”の形式で遺伝するものもあるからです。
 ですから、どちらに比重をおくかだけの問題でしかありません。
 どちらをとるかは、それを支持する立場および利害が関与してくるだけのことでしかありません。
 トリプタン製薬メーカーにとれば、”遺伝的疾患”の立場をとるでしょうし、片頭痛でお悩みの方々にとっては”多因子遺伝”の方が希望を持てることになるだけのことです。


 しかし、慢性頭痛の本態を解明するためには、”多因子遺伝”の方が、近道のように思われます。このように考えれば、理論的に筋道が通ることになるからです。


 現在の学会を主導される方々にとっては、”遺伝的疾患”とすることによって、慢性頭痛は「国際頭痛分類第3版 β版」で示されるように複雑怪奇なものとして残ることになり、専門医はこのような「国際頭痛分類第3版 β版」を駆使して診断を下し、威厳が保たれることになり、さらにHeadache Master School Japan(HMSJ)によって、専門医を量産し、「頭痛診断」の専売特許を得ようとされます。ここには一般の診察医の入り込む余地をなくそうとされ、これがトリプタン製薬メーカーとの利害に合致することになります。 こういったことから、いつまでも”遺伝的疾患”とすることになります。これだけのことでしかないようです。
 こういったことから、「全国慢性頭痛友の会」という「慢性頭痛患者さんの救済組織」の存在意義があったように私は思っております。しかし、これまでの「全国慢性頭痛友の会」は私が思ったような患者団体ではなかったようです。


 今後は、「慢性頭痛患者さんの救済」を目的として、片頭痛の大半は”多因子遺伝”であるとの立場から、第2の「全国慢性頭痛友の会」を組織して、慢性頭痛の本態を解明するための活動を行うしかないようです。


 こうして見る限り、現在の学会とは一体何なのかといった”素朴な疑問”しかありません。